第百九十五話
皆様、大変、大変長らくお待たせいたしました。
ここ数カ月、私生活が忙しく、なかなか執筆の時間が取れず、
ずるずるとこんなに時間が経ってしまいました。
ですが、ここでダラダラ語っても仕方ありませんので、
まずは本編をお楽しみください。
「……………………」
「どうやら感情はないみたいだな」
ミズハの目の前にいる人造人間は人間の姿形をしているものの、そこに感情らしきものは見当たらない。
おそらく不要だと排除したのだろう。
「さっさと終わらせる」
しっかりと目の前の人造人間を見据え、刀を中段に構える。全身の氣を高めていき、いつでも炎を生み出せるようにする。
一見すると冷静な様に見えるミズハだが、心の内では怒りの炎が熱く燃えていた。
『血の紅』の力はカグラ家初代が激しい修行の末に手に入れた力だ。そして、連綿と受け継がれた力を魔族に使われているのだ。
自分だけでなく、一族全てを侮辱された気分だ。
《落ち着くのじゃ、主。怒りはリズムを狂わせる。カグラ一族の力を引き出すには問題ないのじゃがのう……》
「分かっている!! 分かっているが…………」
怒りを露わにするミズハの肩で白夜が主を諌める。白夜の言葉を聞いてミズハは納得しようと試みるが、上手く感情をコントロール出来ない。
カグラの力である炎の力は感情で大きく左右される。その中でも怒りは爆発的な力を生み出すが、必ずしも良いことばかりではない。
生み出す力が強いほど、精神力の消費量は多い。この後に魔王との戦いが待っているのだ。ここで力を使いきってしまっては仕方が無い。
《静かに怒り、必要なだけの力を生み出すのじゃ》
「ふう…………分かった」
軽く息を吐き、無理矢理心を落ち着ける。無意識に噴き出していた炎を抑え込み、必要なだけの炎を刀に纏わせた。
「はあっ!!」
足裏の氣を爆発させ、一気に人造人間へと迫る。炎を纏わせた刀を振り下ろす。
ガキィン!!
振り下ろされた変形され、炎を纏わせた右腕に受け止められた。どうやら腕を刃の様に変化させ、硬化させることで受け止めたようだ。
「ちぃ!!」
受け止められたことを気にすることなく、ミズハは追撃しようとしたところで左腕も変形させた人造人間の攻撃が繰り出される。
刀で防御することは出来ず、後ろへ飛ぶことで攻撃を回避する。
《これでどうじゃ!!》
白夜がミズハの炎を受け取り、弾丸へと変化させる。すぐさま人形へと撃ち出す。
「……………………」
人形は表情を変えること無く、炎の壁で弾丸を受け止め、すぐさまミズハへと攻撃を仕掛ける。
二刀流の様に攻撃を繰り出す人形の攻撃を捌きながら、相手の隙を窺う。
(攻撃は激しいが、戦い方は素人だ。これなら…………問題なく勝てるな)
激しい攻撃を受け続けているが、ミズハは全く問題にしていなかった。
確かに攻撃は強く、普通の人間の様に疲れることを知らない。途切れることのない攻撃を続ける事が出来るが、決して一流の剣術を使うことが出来るわけではない。
造られてから時間が経っていないからこそ、戦闘経験が無いのだ。
そこに勝機がある。
「そこ!!」
一瞬の隙を見逃さず、ミズハは人形の左肩を刀で切り落とす。左腕を切り落とされたことにより攻撃が中断され、ミズハは追撃をかける。
ザン!!
横薙ぎに刀を振るう。刃が人形の首を切り落とし、宙に舞った頭が床に転がっていく。
「……………………」
《気を抜かぬように。まだ終わっておらんぞ》
「…………ああ」
頭部と左腕を切り落としたにも関わらず、ミズハは構えを解くことをしない。しっかりと刀を人形に向け、周囲の炎をゆっくりと旋回させる。
すると、人形の身体が蠢き出し、首と左腕から肉が膨れ上がってきた。肉はすぐさま形を作り、頭と左腕が復活した。
「……………………」
まるで何もダメージは無かったかのように人形は立ち上がる。そして、再び全身の筋肉が蠢きだした。
「どうやら、まだまだ終わりそうにないな」
《ならば、こっちも本気を出すまでじゃ》
人形の筋肉が膨れ上がり、身体の一部を大剣へと変化させる。ミズハの戦いは第2ラウンドへと入っていった。
ゴオゥン!!
炎と炎がぶつかり合い、爆風と共に相殺される。辺りに火の粉が飛び散り、離れた場所にいるブレアにも熱が伝わってくる。
「なかなかやる」
「ガウ!!」
もう一体の人形と対峙するブレアとライア。牽制に紋章術を放つが、全て相殺されてしまう。
魔女の眼を持っている人形は、魔王の魔力によって無尽蔵にどの属性の紋章術でも扱うことが出来る。
「……………………」
「さっさと倒して、ミズハを助けなきゃ」
ブレアは周囲に数十もの紋章を展開させ、紋章から圧縮された空気の弾丸が形成される。見えない弾丸は発射の瞬間を待っている。
見えない弾丸に反応して、人形も周囲に紋章を展開させる。紋章は水に変換され、圧縮された水の弾丸に変化した。
互いに発射の瞬間を待っている。いや、人形はブレアの動きを待っているだけの様に感じられる。
(ここをこうすれば…………完成)
頭の中で複雑な計算式を組み上げ、これから起こる事象を予測していく。そして、一番効果のある動きを完成させる。
「ライア、よろしく」
「ガウ♪」
ブレアの作戦にはライアの活躍が不可欠だ。ブレアはライアの頭に手を置き、作戦の意思をライアの核へと直接教え込む。
ライアが嬉しそうに鳴いた後に、ブレアは空気の弾丸を人形へと放った。
いかがでしたでしょうか?
これまでの状況は活動報告でお知らせしてきましたので、
あまり語ることはありませんが、
今後もいつ更新できるか分かりませんので、
お待たせしてしまうと思いますが、
気長に待ってやってください<(_ _)>