第零話「歴史」
その昔、神々は一つの大陸を創造した。大陸に草木を生やし、動物を産み落とす。そして最後に人間が創られた。
人間は徐々に数を増やしていき、幾つもの集落に分かれる。そこから更に発展し、街を創り、国を創っていった。その中で幾度かの争いはあったものの、おおむね平和に暮らしていた。
ある時、人間が暮らす土地に魔物が現れる。魔物は人間を襲い、家を破壊し、作物を荒らした。多くの者が命を落とし、人間はその数を減らしていった。
しかし、人間も黙っているわけがなかった。武器を造り、罠を仕掛け、知恵を絞って魔物に対抗していった。
知恵を持った人間により魔物はその数を徐々に減らしていき、魔物が暮らしていた土地へと追い戻していった。これで人間側の勝利に終わるかに見えた。
だが、人間側の勝利にはならなかった。魔物を追い詰めた人間は、魔物が生息する土地で城を発見した。逃げる魔物を城まで追った人間達は、城の中で魔物たちの主、魔王を発見する。
魔王は圧倒的な力で人間を薙ぎ払い、その勢力を拡大していった。魔王は六人の魔族を造り出し、更に人間を追い詰めていく。
誰も敵わない。諦めかけたその時だった。
天から戦いを見守っていた神々は、人間を護るために力と神器をある片田舎に住んでいた一人の青年アルサムに与えた。
アルサムは神から与えられた力と神器を使い、魔族に辛くも勝利したが、魔王は完全に滅することが出来なかった。
そこで魔王を封印し、地中深くに埋めた。
こうして人間界に平和が訪れた。
その後アルサムは人間界に戻ったが、すぐにその姿を消してしまう。自分が持っている神々の力や神器は強力で、必ず争いの種になってしまうと考えたのだ。
彼がどこかに消えた後、各国は彼を探し出そうとしたが、見つけることは出来なかった。代わりに各地の祠に彼が使用した神器が祀られていた。
アルサムが消えた後、人々は彼を称え、戦神に位置付けた。今でも戦神アルサムは冒険者の守護神として称えられている。
魔王が封印されてから数百年。誰もが魔王や魔族の存在を忘れつつあった。
そして、物語は一人の青年スレッド・T・フェルスターが生まれ育った山を降りるところから始まる。