第百八十八話
「ふんっ!!」
ガキン!!
素早くアーノルドへ近づき、カイザーは剣を振り下ろす。しかし、刃はアーノルドの肌を傷つけることなく、簡単に受け止められた。
カイザーの攻撃は武器に圧縮された氣を纏わせ、圧倒的な切れ味で全てを切り捨てるものだ。普通の魔物ならば一撃で命を刈り取ることが出来る。
だが、半魔族となったアーノルドには傷一つ付けることが出来ない。
「どうやら、魔力で強化されているようだな」
「厄介ね。魔力をどうにかしないと倒すことは難しいわ」
アーノルドの身体は高濃度の魔力で覆われている。魔族の姿に変貌した段階でアーノルドの身体は強化されているが、魔力を纏うことによって更に強固になっている。
魔力をどうにかしなければダメージを与えられない。
「カロリーナ、まだアレは使えるか?」
「舐めるんじゃないわよ。私に不可能は無いわ」
不敵に笑い合い、二人は頷きだけで動き出した。
カイザーは再びアーノルドと対峙する。しっかりと敵の動きを見定め、最低限の動きで攻撃を回避していく。
気負うことなくアーノルドへ近づき、剣を振る。幾度か剣を振るい、僅かだが傷を付けていく。
先ほどまでは刃が通らなかったのに、なぜ今度はダメージを与えられるのか。その理由は剣に纏った氣の上に魔力を上乗せさせ、密度を上げることによって切れ味を増しているからだ。
氣と魔力を融合させることは至難の業だ。よほどのセンスと才能、たゆまぬ努力があって初めて可能にする。
超一流の冒険者であったカイザーにしても、氣と魔力の融合は不可能だった。しかし、性質の異なる二つを重ねることはできた。
ピキ。
「…………やはりか」
だが、氣と魔力を重ねることによるデメリットも存在する。それが刃に入った罅だ。
確かに攻撃力は格段に上昇する。強靭な肉体と膨大な魔力を持つアーノルドに傷を付けられてはいるが、その分武器に掛かる負担は相当なものだ。
後一、二回も剣を振れば折れてしまうことは目に見えている。
カイザーが持つ剣は業物と呼ばれるものではないが、それでも店で売っている剣よりは遥かに良いものだ。
それでもカイザーの一撃には耐えられない。
「ふむ…………」
予想通り刀身の半ば辺りで折れてしまった。手元に残った柄部分を捨て去り、辺りを見渡す。
地面には様々なものが転がっている。冒険者や魔物の死体、瓦礫などが転がる中で、地面には冒険者が装備していた武器も転がっている。
素早く移動し、地面に転がっている1本の剣を拾い、氣と魔力を重ねる。そのままアーノルドへ近づき、再び攻撃を続ける。
「ガアアアアッ!!」
アーノルドもただ立っているだけではない。カイザーを攻撃しようと腕を振るうが、カイザーの移動速度についていけず、全く攻撃が当る気配がしない。
パキン!!
拾った剣は店で売っている普通の鋼の剣だ。その為一撃入れただけで折れてしまった。カイザーは気にすることなく再び剣を拾う。
だが、このままではジリ貧だ。まともなダメージを与えられないのでは意味が無い。
(やはり、あの剣で無ければならんか…………)
攻撃を繰り返しながらも、ダメージは与えられない。そんな中でカイザーは自身が昔使っていた剣を思い出していた。
冒険者時代、カイザーは名工が鍛え上げた名剣を所持していた。世間ではあまり知られていない刀匠だったが、腕は確かで、カイザーは冒険者を引退するまでたった1本の剣で戦った。
冒険者を辞めた時、その剣はカグラ家に預け、今は使っていなかった。
今回の戦いに際して、カイザーはカグラ家に預けた剣を修理に出そうとしたが、剣を鍛えた刀匠は既に無くなっていた。
その為、仕方なくギルドが用意した剣を使用していたのだ。
「カイザーさん!!」
ヒュン!!
自分を呼ぶ声と共に何かが飛んでくる。一緒何かの攻撃かと考えたが、飛んでくるものを見て、自分からキャッチに向かった。
「まさか…………」
飛んできたもの、それはカイザーにとって懐かしいものだった。だが、懐かしさに浸っている暇は無い。すぐさまそれを抜き出し、迫りくる拳に対して振り抜いた。
「…………どうやら本物の様だな」
飛んできたもの、それはもしもの為にとリカルドへ預けていた自身の剣だった。剣は拳に深々と傷をつけ、その痛みにアーノルドは悲鳴の様な声を上げながら後退した。
その隙にカイザーの元へ剣を投げたソルが近寄ってきた。
「間に合ってよかった」
「なぜこの剣がここに? しかも、完璧な状態で…………」
「この剣を鍛えた刀匠は亡くなっていたのですが、その後を継いだ息子の所在が判明しまして。技術的にも問題ありませんでしたので、ギルドから依頼して鍛え直していただきました」
「そうか…………」
刀身の輝きを見つめながら、冒険者時代を思い出す。楽しかったことや辛かったこと、悲しんだことなど多くの記憶が浮かんでは消えていく。
「助かった。ありがとう」
「いえ。では、私は後方での指示がありますので」
「ああ、私たちもすぐに終わらせて、他を手助けするとしよう」
そう言ってソルは街の方へと走り去っていった。その姿を見送ることなく、カイザーはアーノルドへ向けて剣を構えた。
「さあ、ここからが本番だ」
「――――――――!?」
不敵な笑みを浮かべながら、全身から覇気を放つ。その威圧感にアーノルドは獣の様な叫び声を上げた。
大変お待たせしておりました。
最近は構成が思い浮かばないのもありますが、
ゲームの方に若干をウエイトおいてしまい、
滞っておました。
次は早めに更新できるように頑張りたいですが、
どうも頭になかなか下りてこないので、
またまたお待たせしてしまうかもしれませんが、
この作品も後少しですので、頑張ってまいります。