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第百八十七話


 静かな廊下をスレッド達が走っていく。道は殆ど一本道で、迷うことは無い。


「…………妙だな」


「ああ、魔族も魔物も出ないのはおかしい」


 辺りには待ち伏せしている様な気配は無い。術による転移で罠にはめる可能性もあるが、紋章術に精通したスレッドとブレアが見破れない可能性は低い。


 それでも細心の注意は怠らない。


 しばらく走っていると、それなりに広さのある空間が広がった。そこには魔物が待ち伏せしているわけでもなく、何か罠があるわけでもない。


「ふふふ、待っていたよ」


「…………お前がここの番人というわけか、ノア」


 その場所で待っていたのは、楽しそうに笑いながら空間の中央に立っているノアだった。






「さあ、楽しく戦おう」


 ノアは手を広げ、全身から魔力を溢れさせる。その量は魔族に相応しいほど膨大で、溢れ出した魔力が次の瞬間には一瞬でノアの身体に圧縮される。


「どうやら、避けては通れないようだな」


 これまでのように戦わずに進むことは難しそうだ。スレッドは構えを取り、戦いに備える。


「さっさと終わらせよう」


「三人いれば大丈夫」


 スレッドに続いて、ミズハとブレアも武器を構える。ミズハは刀を構え、自身の周りに炎を生み出す。ブレアは杖を構え、周囲のマナを操っていく。


 魔族に出し惜しみする訳にはいかない。


「…………確かに彼女たちと戦うのも楽しそうだけど、ね!!」


 パチン!!


 ノアは指を鳴らし、空間を操作する。操作された空間はノアとスレッドのみを取り込み、二人が戦う為の空間が形成された。


『スレッド!!』


 突然のことに驚くミズハとブレアだが、すぐにスレッドを助けるためにノアの生み出した空間を破壊しようとした。


 だが、取り込まれたスレッドが二人を止めた。


「ここは俺一人で十分だ。二人は先に行ってくれ」


「だけど!!」


「一人じゃ危険」


 ここを一人で戦うというスレッドに不安が募る二人。二人の脳裏にはリディア共和国での戦いが浮かび上がる。


 あの戦いでスレッドは無理をして、死ぬ寸前まで陥った。どうにか間に合ったとはいえ、危険な状態だった。


 二人にはスレッドを置いて進むという選択肢は無かった。


「大丈夫。必ず勝って、追いつくから」


「…………分かった」


「ブレア!?」


 スレッドの言葉と決意の籠った瞳を見つめ、ブレアはスレッドの言葉を肯定した。先に進む事を決断したブレアに驚くミズハ。


「信じることが必要。それに、時間が無い」


「……………………」


 ブレアの言葉に考え込む。確かに時間が無いのは確かだ。ここに来るまでを仲間に託してきた。


 信じて託してきた。そして、仲間も自分達を信じて送り出してくれた。ならば、それに応えなければならない。


「…………絶対に、追いついてくること!!」


「勿論だ」


 不敵に笑いながら、スレッドは二人に拳を向ける。それに応える様に二人も拳を突き出し、振り返ることなく先へと進んでいった。


 二人が先にある階段を上っていくのを確認して、スレッドはノアと向き合う。


「さあ、さっさと始めようぜ」


「簡単に倒れないでくれよ」


 スレッドとノア、二人の最後の戦いが始まった。






「アイスブレッド!!」


 空中に紋章が展開され、四方から氷の塊が“アーノルド”と呼ばれた巨人へと向かっていく。数十個もの数が同時に向かっていくが、巨人は腕を振るうだけで氷を砕く。


 簡単に薙ぎ払われたことを気にすることなく、カロリーナは巨人へと少しずつ近づいていく。


 紋章術師は基本的に接近戦を行なわない。紋章術に絶対の自信を持っている事もあるが、紋章術を極める上で身体を鍛えている暇が無いのだ。


 一つの紋章を学ぶのに数カ月、上位の紋章になれば数年に及ぶこともある。スレッドの様に格闘術まで納めている者は殆どいない。


「他も一杯だからね。さっさと終わらせてもらうよ」


 周りには多くの冒険者が魔物を相手している。そう簡単にやられはしないだろうが、カロリーナやカイザーが抜けた穴は大きい。


 カロリーナはアーノルドの背後に移動し、紋章術で空気を圧縮させる。上下から圧縮された空気は円盤のように引き延ばされ、薄い円状の刃を形成する。


 形成した刃をアーノルドの首へと飛ばす。首を落としてしまえば復活は難しいだろう。


 しかし、その予想は外れてしまった。


「ッ!! グガアアアア!!」


「ちっ!!」


 刃はアーノルドの首に傷一つ付けることなく霧散した。攻撃などのまるで無かったかのようにアーノルドは腕をカロリーナへと向ける。


 まさかの展開にカロリーナも舌打ちしながら距離を取る。アーノルドを観察すると、距離を取ったカロリーナを探す様に首を振っていた。


「硬いね、全く」


「どうやら、多少は時間が掛かりそうだな」


「本当に厄介なことをしてくれたもんだよ、アーノルドも」


 片手に剣を持ち、カイザーがカロリーナの隣までやってきた。鋭い眼光がアーノルドを睨みつけ、いつでも飛び出せるよう全身に氣を張り巡らせる。


 軽く息を吐き、カロリーナも全身に魔力を纏わせた。周囲のマナを魔力で操作して、紋章術を待機状態で組み上げていく。


 そして、合図する事もなく、二人は同時に飛び出した。



どうにかモンハン発売日までに書き上がりました。

これで心おきなく今日はモンハンが出来そうです(笑)


来週には市役所ともう一つの結果が届く予定です。

もしかしたら両方落ちるかもしれません。

覚悟しながら待とうと思います。

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