第百八十四話
大変お待たせしておりました!!
まさかここまで時間が掛かるとは自分でも思っていませんでした^^;
まあ何はともなく、本編をお楽しみください!!
撃ち出された弾丸は時間差でラファエーレの周辺に着弾する。空中を飛びながら、銃弾に刻まれた紋章が発動した。
「!?」
「ヴィンセンテ、すぐに下がって!!」
紋章が発動していくのを確認しながら、ヴィンセンテは即座に後方へと飛ぶ。その間にも影がヴィンセンテに襲いかかるが、大剣で防御しながらどうにかラファエーレと距離を取った。
ナディーネが放った銃弾程度、ラファエーレにとっては回避するまでもなかった。
だが、紋章が発動した瞬間、それが危険であると直感した。ラファエーレは影を操り、自身の身体を護ろうとする。
「無駄よ。その術式は魔族でも耐えられない」
発動した術式を確認しながら、ナディーネは不敵な笑みを浮かべる。
五つの紋章が互いに反応していく。属性の違う紋章は反発しながらも、暴発することなくラファエーレに迫る。
ナディーネがブレアと共に開発した術式は、五つの属性を互いに反応させることにより分子を消滅させる危険な紋章術だ。
「やったな!!」
「…………どうかしらね」
隣にやってきたヴィンセンテにナディーネは険しい表情で前を見つめている。
術式は徐々に大きくなっていき、ラファエーレを覆う影を削るように破壊していく。押し潰す様に迫っていく光景を見ながらも、ナディーネは不安を感じていた。
(…………効いているのかしらね)
攻撃は順調にダメージを与えているはずだ。あの術式の威力は既に実験済みだ。実験して、その威力にブレアと共に恐怖したほどに。
だからこそ、ここで使用した。魔族を倒せるほどの威力があるからだ。
それでも、不安は拭えない。目の前で術式に潰されていく光景を見ても、勝てるイメージが浮かんでこない。
そして、ナディーネのその予感は的中した。
「なかなか良い攻撃だった」
『ッ!?』
影が全て破壊されると同時に、術式が力だけで破壊された。ラファエーレは両手を横に広げ、術式を弾き飛ばす。
後に残ったのは、ローブを失ったラファエーレの姿だった。
「へえ、結構良い男じゃない」
素顔を露わにしたラファエーレを観察しながら、ナディーネは額から冷や汗を流していた。軽口を叩いていても、汗が止まらない。
「…………」
その隣では、ヴィンセンテは言葉を発することなく、手に持つ大剣に力を込める。そのヴィンセンテの額からも汗が流れる。
ラファエーレの素顔は、どこにでも居そうな人の顔をしている。碧の髪に蒼の瞳、整った顔立ちは女性を振り向かせるほどだ。
だが、二人を緊張させているのは、ラファエーレの素顔ではない。ラファエーレの身に宿る膨大な魔力を感じ取ったからだ。
先ほどまで感じられなかった魔力は、ローブで押さえられていた。しかし、ローブが破壊されたことで、ラファエーレの本来の力が姿を現した。
「…………ふん!!」
「くっ!!」
「…………全く、冗談じゃないわね」
溢れ出す魔力を一気に爆発させ、瞬時に魔力を己の体内に空中の魔素と一緒に取り込んでいく。
爆発した魔力は風を生み出し、辺りに転がる瓦礫が吹き飛び、飛んできた瓦礫をヴィンセンテの大剣で防御する。
「大人しく殺されておけ。そうすれば、苦しまずに済む」
「そう言われて、はいと応えるわけないだろう」
「私達は、まだ死ぬつもりは無いわ。あんたに勝って、生きて帰るわ」
「そうか…………ならば、その選択を後悔しながら死んでいけ」
ドン!!
「ぐふっ!!」
力を解放させたラファエーレは一瞬でヴィンセンテの懐へ移動し、魔力で強化させた拳をヴィンセンテの腹へと叩きこんだ。
どうにか反応して氣で腹を防御するが、その防御を軽々と越えていく。凄まじい激痛が全身を襲い、ヴィンセンテの身体は軽々と浮き上がる。
衝撃で浮き上がったヴィンセンテに向けて、ラファエーレは更に攻撃を加える。先ほどと同等の破壊力を持った拳を全身に叩きこんだ。
「シャドウ・ブレッド」
掌をヴィンセンテに向け、影を球体状に圧縮させる。圧縮させた影玉はヴィンセンテの胴部に撃ち込まれ、後方へと吹き飛ばされた。
「ヴィンセンテ!?」
「よそ見をしている場合か?」
「ッ!?」
飛ばされたヴィンセンテに視線を向けている間に、ラファエーレはナディーネに向けて影を槍状にして発射する。
すぐさま影を銃で撃ち落としていくが、全てを落とせる余裕は無い。幾つかはナディーネを傷つけていく。左腕と右太ももに突き刺さり、鋭い痛みが走る。
「まだ終わらんぞ」
右手に魔力を圧縮させ、地面に突き刺す。瞬時に式を組み立て、魔力を爆発させた。爆発した魔力は地面に伝わり、ラファエーレを中心に岩の塊となって飛んでいく。
飛んでいった岩の塊は二人に降り注ぎ、ダメージを与えた。
「く、くそ…………」
「あ…………う…………」
傷つき、地面に倒れる。攻撃を受けた瞬間に武器を落としてしまい、二人の近くに転がっている。
しばらくすれば動くことが出来るだろうが、すぐには戦えない。ダメージが大きく、身体に力が入らない。
「そろそろ、止めを刺してやろう」
動けない二人にラファエーレがゆっくりと近づいてくる。影の帯を槍に変え、右手に持って構えた。
このまま振り下ろされれば、確実に影の槍は心臓を貫くだろう。
「貴様らは人間にしてはよくやった。それを評して、一撃であの世に送ってやろう。さらばだ、女」
「ッ!?」
ラファエーレは影の槍をナディーネの心臓目掛けて振り下ろした。
いかがでしたでしょうか?
本当言うと、ラファエーレとの戦いはこの話数で終わらせるつもりでしたが、
終わりきれませんでした。
おそらく、次話で決着がつくと思います。
次回の更新に関しては、いつになるか全く分かりません。
一応構成は頭の中にあるのですが、時間があるかどうか……。
近況については活動報告でお知らせしたいと思います。
出来れば曜日を決めて活動報告を更新しようと思いますが、
まだはっきり決まってませんので、適度に覗いてやってください。