第百八十三話
「うおおおおおおおお!!」
キィン!! キィン!!
ラファエーレの足元から襲いかかる影をヴィンセンテが大剣で防ぐ。大剣を盾にしながら直撃を防ぎ、すぐさま側面に移動して影に向けて大剣を振り下ろす。
「……………………」
ラファエーレは気にすることなく、次々と影を操っていく。更に空中に氷を幾つも浮かべ、ナディーネへ向けて放つ。
「ウザったいわね!!」
迫りくる氷を銃で撃ち落としていく。しかし、全てを落とせる量ではない。ナディーネは動きながら最小限で氷を回避する。
「くらえ!!」
影を回避しながら、ヴィンセンテは足に集中させた氣を爆発させる。直線的な動きだが、その速度はラファエーレの影では追いつけない。
大剣を振り上げ、足に集中させていた氣を大剣へと集中させる。そして、全身から余計な力を抜いた。
二流の剣士はここで全力を込める。まるで力で相手を潰すかのように全身の力で剣を振り下ろす。
だが、それでは実際の力は伝わりにくい。戦いに必要なのは力だけでなく、技も必要なのだ。
ヴィンセンテは力を抜き、叩きつけるようではなく、まるで刀で相手を斬る様な形で大剣を振り下ろした。
「ふん」
迫ってきた大剣をラファエーレは片手で受け止めた。全く苦もなく受け止めた様に見えるが、受け止めた個所から碧の血が滴る。
どうやら、受け止めた際にヴィンセンテはダメージを与えられたようだ。
そこから一気に押し切ろうとするが、大剣は全く動かない。
「ッ!?」
ヴィンセンテは瞬時に判断し、大剣を力任せにラファエーレの手から外し、大剣を盾の様に構えながら後方へと飛んだ。
四方八方から迫りくる影。このままでは後ろから迫る影によってヴィンセンテの身体が串刺しになってしまう。
そこに、銃声が響いた。
ヴィンセンテの背中に迫る影をナディーネが銃で撃ち抜く。しっかりと計算尽くされた銃弾の軌道は、ヴィンセンテを一切掠ることなく通り抜け、互いの弾にぶつかりながらラファエーレへと向かう。
「小賢しい」
「…………冗談でしょ?」
向かってくる銃弾を全て片手で受け止めた。全てを受け切った銃弾を地面に落とすのを見て、ナディーネは呆れるしかなかった。
ヴィンセンテはラファエーレから距離を取り、ナディーネの隣へと移動する。一旦距離を取ることで作戦を立て直す。
「やっぱり、簡単にはいかないようだ」
「相手は魔族。当り前でしょ」
武器を構えてラファエーレの攻撃に警戒しながら、ヴィンセンテは息を整える。先ほどの攻防だけで体力を消費したようだ。
「やはり使うしかないか…………」
腰に下げる道具袋から一本の小瓶を取り出した。その中には黄色の液体が入っている。
「いいわね。それは2本までよ」
「分かっているよ」
その液体はナディーネが調合した栄養剤だ。それもただの栄養剤ではない。使用した人の限界以上の力を引き出し、体力や魔力、氣まで回復させる。
それだけの力を飲むだけで引き出すのだ。副作用も存在する。
この栄養剤を服用すれば力を手に入れるが、その後数日間動けなくなる。更に本数を増やせば、疲労だけでなく激痛も伴う。
しかし、栄養剤無しにヴィンセンテの実力では魔族と戦えない。
「……………………いくぞ!!」
小瓶の蓋を開け、一気に栄養剤を飲み干した。その味にヴィンセンテは顔を歪めたが、我慢して身体に取り込んでいく。
「不味い…………」
「良薬口に苦し、よ」
ナディーネが調合した栄養剤はとても不味かった。飲めないほどではないが、それがまた飲み難さを増長させていた。
栄養剤を飲んだヴィンセンテは小瓶を床に捨て、床に突き立てていた大剣を手にする。大剣を構え、回復していく身体の状態を把握していく。
回復した氣で再び身体強化を行ない、限界まで引き上げられた力を大剣を持つ手に込める。
「それじゃあ、作戦を伝えるわ。あんたは前衛でもう一度敵を相手して。その間に私は大技の準備を行なうわ」
ナディーネはヴィンセンテに作戦を伝えながら、大技を放つ為の五つの特殊な弾丸を用意する。
五つの弾丸には一つ一つに違う紋章が刻まれており、それを決められた順番に装弾していく。
「合図をしたら、さっさと下がるように」
「了解!!」
必要最低限の作戦だけを確認し、ヴィンセンテは飛び出した。その動きは先ほどよりも素早く、影に阻まれる前に間合いを詰める。
大剣を横薙ぎに振るう。ラファエーレは先ほどと違い、片手で受け止めないで紙一重で大剣を回避する。
「どうした!! 今度は受け止めないのか!?」
「人間とは言え、油断はしない」
続けて大剣を上段から繰り出すが、全て回避されてしまう。
ヴィンセンテの攻撃は先ほどよりも強くなっている。それを感じ取ったラファエーレは受け止めるのではなく、回避することを選択した。
ラファエーレは攻撃を回避しながら影を操る。鋭い影の帯はヴィンセンテの命を奪おうと急所を狙う。
危険なものだけ最小限に回避し、ヴィンセンテは攻撃を続ける。身体の節々には掠り傷を負いながらも、動きを速める。
互いの攻撃スピードが徐々に上がり、一撃一撃が必殺となるほどの戦いとなっていった。
「……………………」
ヴィンセンテとラファエーレの戦いを観察しながら、ナディーネはブレアと考えた技を放つタイミングを計っていた。
五つの特殊な弾丸はスレッドが作成し、その紋章術を使用した技をブレアの知識と合わせて編み出した。
弾丸を決められた順番に撃ち、五つの紋章を全て干渉させることで魔族に対抗するだけの威力を発揮させる。
だが、それだけの威力を発揮させるためには、1ミリのずれもなく紋章を展開させなければならない。しかも、激しい戦闘中にだ。
(もう少し…………もう少しで読み解ける)
だからこそ、この技を成功させるためにはナディーネの知力と観察眼が必要だ。敵の動き、味方の動き、攻防などあらゆる要素を観察し、弾丸の軌道をシミュレートする。
「……………………ここ!!」
集中力を極限まで高め、ナディーネは引き金を引いた。
最近めっきり暑くなり、執筆のやる気も出てこない中、
エアコンを使用しようとしたら、冷たい風が出てきませんでしたorz
どうやらガスが足りてないと思い、補充しようか考えていましたが、
今使っているのが14,5年前に取り付けたやつなので、
さすがにそろそろ取り変えようかなと考えて、
昨日量販店に行ってきたのですが、一番安くても意外と高かったです(T_T)
しかし、エアコンなしに今年の夏は過ごせないので、
思い切って買ってこようと思ってます。
さっさと取り付けて、快適な環境で執筆頑張ります!!