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第百七十五話

すみません、サブタイトルが全く思いつきませんでしたので、

思いついた時に付けることにします。


 魔王城の王座の間に転がるアーノルドの死体が蠢く。全身の筋肉が波打ち、骨が砕かれていく。それと同時に筋肉が隆起し、骨が組み合わさっていく。


 しばらくすると、死体がアーノルドとは全く違う人物を形作っていく。出来上がった人型は自分の力で立ち上がり、ヨハンの前に跪いた。


「くっくっく。面白いものだな」


「…………」


 出来上がったモノを見下ろし、ヨハンは楽しそうに笑う。サイフェルは冷静に出来上がったモノを観察する。ヨハンに危害を加えないかと警戒していた。


 出来上がった人型はアーノルドの面影を殆ど残していなかった。筋肉が3倍程度に膨れ上がり、それに合わせて骨格が変化した。顔はまるで魔物の様に歪み、紅い目や牙が特徴的だ。


 唯一アーノルドの面影が残っているとしたら、髪型ぐらいだろう。


「アア…………アア…………」


 どうにか言葉を発しようとするが、上手く言葉にならない。それでも、何かを伝えようとしているように見える。


「どうされるのですか?」


「ふむ…………人間の世界へ放り込め。適当に暴れさせれば面白くなるだろう」


 サイフェルの問いにヨハンは人間界へ派遣することを指示する。


 目の前の魔物は魔族の血を取り込み、更にアーノルドの魔力が混ざり合うことで一般的な魔物とは思えないほど強力な力を内包している。


 また、肉体が改造されたことにより凄まじい膂力を持ち、本気の力でクレーターを生み出すほどだ。


 こんな魔物が人間界で暴れるのだ。多くの悲鳴と破壊を生み出すだろう。それを想像しただけで楽しくなる。


「サイフェル、こいつはお前に任せる。好きに使え」


「了解しました。では、名はいかがいたしましょう?」


「そうだな…………『アーノルド』で構わん。その名で送り出せ」


 ヨハンは人間の時の名前で人間と対峙させろと指示する。


 アーノルドは有名な冒険者として知られている。一般の市民であっても名前を聞けば姿を思い出せるほどの人物だ。


 そんな有名な人物の名前が与えられた魔物が人間を襲う。おそらく誰もが戸惑うだろう。


 ギルドはアーノルドが人間を裏切った事を一般には公表していない。事実を知っているのはギルドの上層部と一部の冒険者だけだ。


 サイフェルはアーノルドに指示を出しながらその場を立ち去った。その後ろ姿をヨハンは楽しそうに眺めていた。






「そろそろ最終決戦といったところかな?」


「人間の最後か…………」


「もしくは僕たちの、かな」


 魔王城に一室、机と椅子だけの部屋でノアとラファエーレが向かい合ってワインを片手に話し合っていた。


 部屋には窓一つしかなく、そこからは黒い雲に覆われた空が広がっている。


「楽しい宴になりそうだ」


「まったく、お前の考えには賛同しかねる」


 人間が魔王領に侵攻する為に準備していることは既に把握している。本来なら侵攻の準備を妨害するべきだが、ヨハンによって止められている。


 ヨハンの考えでは人間にわざと侵攻させ、魔王城で人間を潰した方が絶望を与えられる。だからこそ、今スレッド達が行なっていることを静観していた。


 それに、部下にだけ任せてしまっては面白くない。自身の手で人間を潰したい。


「まあまあ、いいじゃないか。魔王様も楽しみにしているんだ。僕たちも戦いを楽しめばいい」


「ふん、俺はお前の様に戦闘狂ではない。人間どもを支配する為にあらゆる手を尽くす」


 ノアはヨハン同様人間との戦いを楽しみにしていた。バルゼンド帝国でスレッドと戦って以来ノアに対抗できそうな人物は現れなかった。


 あの頃よりも更に技に磨きを掛け、強力な武器も手に入れたスレッドの戦いを想像するだけで楽しくなる。


 グラスのワインを優雅に飲み干す。それを見ていたラファエーレがノアのグラスにワインを注ぐ。


「だが、お前のお気に入りがここまで来れるかは分からんがな」


 ラファエーレは戦いを楽しまない。効率よく人間を屈服させ、人間の土地を魔に染めることを目的としている。


 だからこそ、正々堂々と戦うなど論外だと考えている。


「…………彼の相手は僕がする。手を出すなら、君でも許さないよ」


 二人の間に緊張が走る。空間が軋みそうなほどの魔力が部屋の中に渦巻く。この場にいるだけで普通の人間ならば死んでしまうほどの歪みだ。


 互いに引くことは無い。魔族にとって相手が誰だろうと自分から引くわけがない。


「心配しなくとも、どうせお前が一番に出るのだろう」


「勿論。万全の状態で戦いたいからね」


 しばらく睨み合っていたが、ラファエーレの言葉で魔力が霧散した。再びワインを楽しむ。


 ラファエーレが何を言ったところで、ノアが一番に戦いに向かうだろう。それならば妨害する必要もない。


「早く来ないかなー」


「…………はあ」


 プレゼントを待つ子どもの様にウキウキしているノアを眺めながら、ラファエーレは溜息をつかずにはいられなかった。






 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!


 魔王領にある森が震える。大量の砂煙を上げながら、森の中を魔物の群れが移動している。全てが魔王領に生息する魔物で、全てがSランク以上の魔物ばかりだ。


 現在の魔物は魔王が復活したことにより強力かつ凶暴になった。魔王が復活してからは魔物の侵攻が激しさを増し、今も境界線上では多くの魔物が結界を破壊しようとぶつかっている。


 魔物の群れは一定の速度で人間界へ向かっている。このまま進めば結界に激突するだろう。


 普通の魔物ならば結界の力で侵攻を防ぐことが出来る。それほど心配することは無いだろう。

 だが、今群れを成している魔物の実力からいけば、結界を破壊する可能性がある。


 決戦の時は刻一刻と迫っていた。



最近何となく執筆が雑な感じになっているように感じています。

どうにか更新しなければならないのと、

でも就活と資格の勉強をしなければならないので、

どうにも余裕がないように思えます。


それでも立ち止まるつもりはありません。

最終決戦まで後少し。最後までなんとか書ききってみせます。

ただ、少し最終章を振り返り、内容を練り直しなどしながら、

先のストーリーをしっかり構築し、

最後まで読んでいただけるものを書きあげてまいりますので、

これからも応援よろしくお願いいたします<(_ _)>

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