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第百七十二話「集合」

「…………これをこっちに持ってきて、こっちを外す」


「…………」


 ギルドの一室でブレアとセリナが向き合って座っている。ただ座っているだけのセリナに対して、ブレアは両目の魔女の眼を発動させ、セリナの中にある封印を解除しようと試行錯誤していた。


 セリナに施されている封印はかなり強固なものであった。紋章術が使用されていることだけは分かったが、一流の紋章術士でも解除することが難しい。


 そこでブレアの出番だ。魔女の眼を持ってすれば、体内に施された紋章術に干渉し易い。


 しかし、封印は複雑であり、時間が掛かりそうだ。


「どうやら、魔王に対抗するための力が手に入ったようだね」


 ブレアの解除作業を眺めながら、カロリーナは神器を確認していた。


 まさかスレッド達が所持していた武器が神器だとは思ってもみなかった。スレッド達の武器は確かに良い武器だったが、神器ほどの力は感じられなかった。


 力を解放された神器は一目見ただけでその力を感じることが出来る。


「だけど、力が強すぎるのは危険ですね~」


「まあ、彼らなら問題ないんじゃないかな」


「魔王がぶったおせるなら問題ねえよ!!」


 部屋の中にはスレッド達とカロリーナ以外に二つのパーティがいる。その一つがブラッド達だ。


 神器の凄まじい力に危険を感じるミンティにシャンテが冷静に判断し、ブラッドが豪快に笑っている。


 彼らはカロリーナの依頼で、破邪の力を持つ「月のしずく」を採取するためにライディア山へ向かい、先ほど帰ってきたところだ。


「で、そっちはどうだったんだい?」


「問題ねえよ」


 ブラッドがカロリーナの質問に答え、シャンテが腰の道具袋から3つの水晶の欠片を机の上に取り出した。


 水晶の欠片は仄かに青く輝いている。この青い輝きこそが月の光を浴び続けた証拠だ。


「どうにか3つ採取することが出来ました」


「この大きさでも十分な力がありますよー」


 ミンティが欠片を1つ摘みながら、力を感じ取る。


 直径5センチほどの大きさで、半透明の水晶。長年月の光だけを浴び、破邪の力を内包している。


 手の平に乗るほどの大きさだが、そこに秘められた力は強力だ。これ1つで半径数百メートル程度まで魔素を緩和することが可能だ。


「最後は…………」


 そして、ブラッド達とは対照的に三組目のパーティ、ヴィンセンテとナディーネは机にぐったりと上半身を横たわらせていた。


「…………どうにか、必要なものは用意できたわ」


「だけど、肝心の翼を手に入れられなかった」


 そう言ってヴィンセンテが取り出したのは、一枚の羽根と爪を机の上に広げた。一見するとどこにでもありそうな羽根と爪だ。


「何が分かったんだい?」


 さすがに話を聞かずに呆れるわけにはいかない。懸命に探してきたのだ。とりあえず話を進める。


 顔を上げたナディーネは目の下に隈が出来ている。どうやら寝る間を惜しんで調査したようだ。


「なぜ翼が必要なのか。それは魔王城へ辿り着く為に必要だと分かったわ」


 ここ一週間ほどでナディーネは各国から集められた資料を読み漁り、翼について調べた。


 しかし、翼に関して直接記されたものは存在しなかった。そこで、違う視点から考えてみた。


 翼という単語ではなく、翼を利用して何が出来るのか。魔王討伐にどうして必要なのか。方向性を変えて調べてみれば、魔王城までの距離に辿り着いた。


 魔王城の正確な場所は特定できていない。どの方向にどの位進めばいいのか分からない。鳥型の氣獣を飛ばして調査を行なったこともあるが、高濃度の魔素に影響され、長時間調査することが出来ない。


 どこにあるのか分からないのに、闇雲に魔王領を進むわけにはいかない。


「神の鳥を復活させ、その背に乗って魔王城へ。おそらくこれが正解だと思う」


「その為に必要なのがこの二つだ」


 ヴィンセンテも顔を上げた。そこには疲労の色が浮かんでおり、こちらも大変だったことが窺える。


「これは唯一現存している神の鳥の羽根と爪の一部だ。手に入れるのに苦労したけど、どうにか手に入ったよ」


 銀色に輝く羽根に鋭く尖った爪。この二つは遥か昔に生息していた神の鳥の一部だ。それぞれ日の当らない倉庫に眠っていた。


 ヴィンセンテはギルドや自分の実家の力を借りて、どうにか二つを見つけ出した。


「でも、これだけじゃ復活しないわ。後一つが必要なんだけど、それがどうしても見付からなかったの」


 神の鳥に関する資料は北ハイロウから提出されたものだった。北ハイロウ代表のウルコンの納める部族、ハイラ部族が代々護ってきた本だが、内紛などで本の一部が読み解けなくなっていた。


 そして、一番必要なのが読み解けない部分だ。


「一先ず休みな。後はこっちでどうにかするよ」


 さすがに二人の疲労はピークだ。カロリーナは労いの言葉を掛けた。






「うーん…………」


「あの…………大丈夫ですか?」


「大丈夫。心配無用」


 なかなか解除出来ない封印に首を捻るブレア。まるでパズルを解くように紋章の一部ずつを解いていく。しかし、紋章は複雑だ。どうしても式を解くのに時間が掛かる。


 悩むブレアにセリナが心配そうに声を掛ける。ブレアに負担を掛けているという思いが申し訳なさそうな表情を浮かべる。


 そんなセリナを安心させるように、ブレアは笑顔で応える。


 式を解いては紋章を解く。その繰り返しの先に、最後の紋章が見えた。


「…………これで、最後」


『!?』


 ブレアが最後の紋章を解除した瞬間、セリナの身体が眩しく輝いた。その輝きは光となってセリナの胸元辺りから現れ、部屋の中を照らしながら天井近くまで浮かび上がった。


 誰もが光を見上げる中、光は徐々に変化していく。何かを映し出していき、次第にそれが人の形であると分かる。


 映し出されたのは、神々しい雰囲気を持ち、温和な表情を浮かべた女性だった。



お待たせしております!!


先日活動報告でも載せましたが、

「小説家になろう大賞2014」に応募してみることにしてみました。

現在キーワードを設定しております。

後は締め切りまでにあらすじも少々手を加えようと思います。


そう簡単に通過していくとは思っていませんが、

それでも物は試しと応募してみます。

一次は6月末に発表ですので、今からドキドキです(-_-;)

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