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第百七十一話「過去の記憶」


『そろそろ時間の様だ』


 出来るだけ魔王に関することを伝えたいが、この立体映像にも限界がある。


 アルサム達を映し出している紋章術はこの地に存在するマナと魔力を利用している為、そう簡単に術が解けるわけがない。


 しかし、紋章自体の耐久力は別だ。神殿が管理してきたとはいえ、長年地下に安置されてきたのだ。


『出来るならもう少し力になってやりたいが、僕たちは過去の人間だ』


『やっぱり、その時代の人間がどうにかしないとね』


『心配あるまい。我々の子孫だ。上手くやるさ』


 立体映像にノイズが入り始め、間もなく消えようとしていた。


 それでもアルサム達は笑顔だ。神器を渡すことが出来た。ルーファは魔女の眼とその制御方法を伝授出来た。


「だが、これで勝てるのか…………」


 それでも不安になる。確かに神器は受け取った。しかし、自分達が強くなったわけではない。


 神器の力を引き出せなければならない。ミズハは手に持つ刀を見つめる。


『何を弱気になっている。私の力を受け継いでいるのだ。しっかりしろ』


《そういうでない、アリス。あの頃とは時代が違うのじゃ》


『そうそう。私達の時代と比較しちゃ駄目だよ、アリス』


 アルサム達がいた時代は、戦乱の時代だ。魔王が存在し、魔物の強さも現代と比較にならない。


 対して冒険者達のレベルも軒並み高かった。生きるためにはそれだけの力がいる。自然と実力が底上げされていく。


 アリスとルーファの言葉を聞きながら、アルサムは苦笑していた。


『最後にこれを授けよう』


 紋章の中央に光の珠が浮かび上がる。見ているだけで暖かくなりそうな穏やかな光の珠に三人が近づいていく。


『!?』


 光の珠は三つに分かれ、スレッド達の前に移動する。手を伸ばすと、光は三人の身体に吸い込まれていく。


 吸い込まれた光が三人へ同じ映像を見せていく。それは、アルサム達と魔王との戦いだった。






 ボロボロになりながらも魔王に攻撃を繰り出していく。アルサムは合体紋章により強化された拳を振るい、炎を纏ったアリスが別方向から斬り掛かり、少しずつだがダメージを与えていく。


 その隙間を縫うようにルーファが魔女の眼で紋章術を発動させ、手足を凍らせる。


 一瞬動きを止める魔王だが、膨大な魔力だけですぐさま氷を砕く。腕を振るい、腕に集めた魔力をアルサムへ向けて放つ。魔力はエネルギーへ変換され、アルサムの身体を吹き飛ばす。


 アリスは魔王の攻撃を回避し、巨大な炎の塊を上空に生み出した。炎を全て自身の身体に吸収し、一気に間合いを詰めた。


 炎を刀に集中させ、魔王へ振り下ろした。魔王は真紅の刀身を左手で受け止めようとするが、炎が左腕を焼き斬った。


 さすがに左腕を破壊されたことは魔王を動揺させた。すぐさま再生出来ず、動きを止めてしまう。


 アリスが攻撃を行なっている間、アルサムは体勢を整え、その横に一人の女性が立っていた。僧侶の服を着て、頭に天使の像が乗せられている杖を持っている。


(…………セリナ、じゃない?)


 その姿にセリナの姿を思い浮かべてしまう。服装だけは似ているが、それ以外は全く似ていない。

 だが、女性の雰囲気にセリナが持つ雰囲気を感じ取った。


 女性はアルサムが持つ神器に何かの力を与え、神器が輝き出した。


 そして、一瞬動きを止めた魔王にその力を叩きこんだ。


 光が魔王を覆っていき、辺りが光で包まれた。そこで映像が途切れた。






「彼女は…………?」


『彼女はシャルロッタ・ラグレーン。ミストの巫女さ』


「ミストの巫女?」


『女神ミストより力を与えられた者のことよ。シャルは神の啓示と封印術を与えられたの。出来ればもう少し説明してあげたいけど、時間がないみたい』


 映像は最早人の形を保っていない。後数分もすれば映像は完全に消えてしまうだろう。


「魔王を倒すには、ミストの巫女が必要なのですか?」


 スレッド達が見た映像には、ミストの巫女がいた。ならば、今の時代でも巫女が必要なのではないか。


 消えゆく映像に向けてミズハが問いかけた。


『魔王は神と対をなす存在。人の力だけでは完全に滅することはできない。女神の力を持つ巫女が必要だ』


『大丈夫。巫女ならもう見付かっているよ。君達の目の前にね』


『さて、もう終わりみたいだ。大丈夫、君たちなら魔王を倒せる』


 その言葉を最後にアルサム達の映像は消え、紋章は完全に消え去った。






「ミストの、巫女…………」


 これまでの話しを聞いていたセリナがぽつりと呟いた。何かを思い出しているかのように、呆然と虚空を見つめている。


「目の前?」


「ということは、セリナが巫女?」


 先ほどのルーファの発言を考えれば、セリナがミストの巫女ということになる。


 スレッド達の視線がセリナに向かう。呆然としているセリナは視線を受けて我を取り戻し、顔と手を横に振りながら否定した。


「わ、わたしはそんな大それたものではありませんよ!!」


 慌てるセリナにミズハの肩から降りた白夜が近づく。下からじっと見つめ、何かを確認している。


《…………封印されているようじゃのう》


「封印? どういうことだ、白夜?」


《何かは分からんが、女神の力が封印されておる》


 白夜が言うには、セリナの中に女神の力を感じるが何かが力を封印している。尻尾を伸ばして調べてみるが、白夜の力では封印を解くことはできない。


「私はどうすれば…………」


 自分が魔王を倒すために役立てるなら力になりたい。しかし、これまで力を感じたことなどない。どうすれば女神の力を引き出すことが出来るのか分からない。


「一先ず報告」


「そうだな。まずはギルドに戻ろう。セリナ、すまないが一緒に来てもらえるか?」


「…………分かりました。私でお役に立てるのなら」


 今は人が一丸となって対応しなければならない。神殿を護らなければならない司祭の立場だが、どうにかすると約束した。


 こうして、魔王を倒すための一つが手に入った。



4月1日で無事に仕事を終了し、

現在は就職活動を頑張っていますが、

まだまだ決まりそうにありません。

昨日も仕事相談会に参加して、面接をしてきましたが、

行ったらいきなり希望の職種が取り消されていたりと

なかなか上手くいきません。

ですが、出来るだけ早く内定のお知らせをしたいと思います。


その間も執筆は続けますが、更新頻度は遅くなりそうです。

それでも読んでいただければ幸いです。


活動報告も更新していきますので、

そちらでも応援いただける嬉しいです。


では、次の話をお楽しみください。

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