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第百六十七話「フォルスの遺産」


 地下へと続く階段を進んでいくスレッド達。長年誰も通ることのなかった階段だが、何かしらの力が作用しているのか、階段には全く破損した様子は見られない。


 左右の壁には明かりが等間隔で設置されている。歩くごとに順番に明るくなり、ブレアはこの通路だけで色々解析したい気持ちが膨らんでくる。


 数分ほど進んでいくと、扉の前に辿り着いた。石で造られた扉で、全体に紋章の様なものが装飾として施されている。


「…………開かないな」


 スレッドは先ほどと同じように右手で扉に触れる。しかし、手甲に刻まれた紋章は反応しない。左手の手甲も近づけてみたが、反応は無い。


 他に仕掛けがないかと探してみるが、それらしき仕掛けは見付からない。


「ワウ?」


 しばらく全員で何かないかを探していると、突然ライアの身体が輝きだした。ライアの核に刻まれた紋章と扉が反応し、扉の鍵を開けた。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!


 扉が開き、中へと入っていく。部屋の中は壁際に本棚が並び、部屋の中央には石の台があり、台の上には一冊の本が置いてある。


 辺りを見渡しながら、スレッド達は部屋の中へと入っていく。中央の台座に近づくと、台座に組み込まれていた紋章が突然発動した。


『!?』


 発動した紋章は空中に立体映像を作り出す。ぼやけた状態から徐々に形を整えていき、人の形を現した。


「…………爺さん」


 台座の上に投影されたのは、フォルスの姿だった。


「久しぶりじゃのう、スレッド」


 フォルスはスレッドに話しかける。映像の中のフォルスはここに来るのがスレッドであることが分かっていた。


 その理由はこの部屋に辿り着く為の鍵にある。この部屋に入る為に二つの紋章が必要だ。一つはスレッドの手甲に刻まれた紋章。もう一つはライアの核に刻まれた紋章。


 この二つを用意できるのは、スレッドだけだからだ。そして、フォルスがスレッドの為に用意した部屋だからこそ、フォルスは目の前にいるのがスレッドだと確信していた。


「どうやら、この部屋が必要な時が来てしまったようじゃのう」


 映像の中のフォルスは溜息をつきながら話を進めていく。昔話でもしたいところだが、一方通行のうえ、紋章の効果も時間が短い。


「ここにはおそらくお前が知りたがっている情報がある。本来ならわしが直々に教えてやりたいが、時間がない。わしの全てをここに残す」


 時間が経つにつれて映像がぶれてくる。どうやら紋章の効果が消えかかっているのだ。


「ここに来たということは、お前が世界の命運を握っているということか…………」


「…………」


「大丈夫じゃ。お前なら出来る」


 穏やかに微笑みながら、フォルスは映像の中で右手を振った。その右手に反応するように部屋の中の本が幾つか光った。


「本に掛かっていた封印を解いた。お前なら使いこなせるじゃろう」


 この部屋にはフォルスの知識の全てがある。その中でも修得するだけでも危険な技術が記されている本には封印が施されており、映像を再生させることで解除される仕組みになっている。


「伝えたいことは手紙にしたためてある。では、さらばじゃ」


 そう言って、フォルスの映像は消えていった。


「…………さて、始めるか」


「スレッド、大丈夫か?」


 一番前にいるスレッドの顔を見ることはできない。それでも、ミズハとブレアには微かに涙の様な輝きがスレッドの頬を伝うのが見えた様な気がした。


 ライアはスレッドの足元に近づき、身体をすり寄せた。


「…………悪い、少しだけ待ってくれるか」


 急ぐことなく、スレッドの気持ちが落ち着くまでミズハとブレアはスレッドの前に出ることは無かった。






「まさかここまで記されているとはな…………」


 フォルスの残した資料にはスレッド達の知りたい情報が全て記されていた。


 フォルスはボルボ山にいながらも、魔王や魔王領について調べていた。情報屋や使い魔など様々なルートで情報を収集し、また自身が訪れたこともある。


 その中には魔王を封印している石像や魔族についての記述もあり、当時は誰も知らなかった石像の位置すらフォルスは知っていたようだ。


「必要なものは『月のしずく』に『神器』、それに『翼』か」


 フォルスの資料には、魔王を倒すために三つが必要と記されていた。


 魔王領は非常に濃い魔素に満ちている。一般人やランクの低い冒険者ではまともに動くこともできず、スレッド達でも結界がないと危険だ。

 更に魔王が復活したことにより魔素の濃度が高くなり、結界でも防ぐことが出来ない。


 そこで魔王領に侵攻するために必要なのが、月の光だけを受け続けた水晶「月のしずく」だ。月の光には魔を退ける力がある。「月のしずく」は持っているだけで半径数メートルに渡って効果を発揮する。


 次に必要なのは神々が造り出したという「神器」だ。

 魔王とは単なる魔族の王ではない。神々と対をなす存在であり、魔の神である。その為単なる人間では決して敵う筈がない。


 遥か昔に魔王を封印したアルサムも神々に与えられた力と神器なしでは、魔王にダメージを与えることすらできなかった。


 魔王を倒すためには「神器」を装備するしかない。


「最後の『翼』だが…………詳しいことは書かれていないな」


 魔王を倒すために必要なものの最後、「翼」については多くのことが書かれていなかった。どのように使用するのか。どこにあるのか。

 他の資料を探してみても、はっきりとしたことは分からなかった。


 フォルスの資料には必要な三つがどこにあるのかまでは記されていなかった。推測などは記されているが、はっきりしたことは分からない。


 しかし、魔王への突破口がこれで見つかった。これだけでも収穫があった。


「とりあえずこれを持ってカロリーナに報告するか」


「ああ、それで良いんじゃないか」


「…………」


 スレッドとミズハが必要な資料を探している間中、ブレアは地下にある資料を片っ端から読み耽っていた。


 そこには覚えずにはいられないほどの貴重な情報が記されている。持ち帰れるほどの量ではない為、ブレアは一心不乱で頭に叩きこんでいた。


「…………もう一泊かな」


「…………だな」


 ブレアの姿を見ながら、スレッドとミズハは苦笑を浮かべていた。



えー、お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、

数話前から間違いがあり、訂正を入れないといけません。


頭からすっぽり抜けていて、

現在訂正作業に入っています。

ひとまずは最新話の更新を止め、

先に訂正分を更新していこうと思いますので、

しばらくお待ちください<(_ _)>


話は変わりますが、

先日20日に誕生日を迎え、ついに30代に突入しました。

そろそろ落ち着くためにも、就職活動頑張ります!!

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