第百六十四話「要請」
皆様、長らくお待たせしました!!
ようやく最終章の1話目を更新することが出来ました。
ずいぶんとお待たせしてしまって、誠に申し訳ありませんでした。
まあ、ここであれこれ言っても仕方ありませんので、
あとがき会いましょう。
では、本編をお楽しみください!!
目を覚ますと、リカルドの眼に窓から入る眩しい光が見える。
「…………」
マリュークの裏切りによって傷ついたリカルドは何とか命を取り留めた。しかし、未だ本調子ではなく、身体を動かすことが出来ない。
リカルドは日々のんびりとベッドの上で過ごしていた。
しばらく窓の外に視線を向けていると、リカルドの頭に影が落ちる。
「元気そうね。それにしても…………老けたわね、あんた」
「お前は若すぎだ、カロリーナ」
にやにやと笑みを浮かべながら、カロリーナがリカルドを見下ろしていた。
ドン!!
「さあ、飲むわよ」
「…………わしは怪我人なんじゃが」
右手に持っていた酒瓶とコップをベッドの脇の机に置く。コップに酒を並々と注いでいく。
机の上には三つのコップが置かれている。部屋の中にはリカルドとカロリーナ以外いないが、カロリーナは三つとも酒を注ぐ。
だが、リカルドはそれに疑問を持つことなく、無理矢理身体を起こしてコップを手に取った。
『乾杯』
二人はコップを合わせ、机に置かれたコップに乾杯した。そしてコップの酒を飲み干した。飲み終わるとカロリーナはすぐに酒を注いだ。
「まさか、あいつが一番先に逝くなんてね」
「全くじゃ」
二人は机に置いてあるコップを見つめながら、昔を思い出して笑みを浮かべる。フォルスと三人で冒険していた頃を思い出す。
机の上に置かれたコップの酒は、先にあの世に逝ってしまったフォルスの分だ。
しばらく昔話に花を咲かせる。リカルドとカロリーナが本気喧嘩して、フォルスが慌てて止めに入ったこと。カロリーナがクエスト中に暴れまくって、貴重な遺跡を破壊してしまったこと。
思い出す限り、カロリーナが暴れたことが一番印象に残っていた。
「…………迷惑を掛けていたみたいだね」
「お互いに、のう」
二人してフォルスに迷惑を掛けていたことを思い出し、苦笑いをするしかなかった。
「真面目な話に入ろうか」
しばらくしてリカルドが真剣な表情でカロリーナに向き合った。それに対してカロリーナも真剣に向き合う。
「封印が破壊されたことは知っているじゃろう?」
「ええ、強大な魔を感じたわ」
魔王の封印が破壊され、大陸全体に魔の気配が感じられた。魔力が少ない一般人であっても、封印が破壊された瞬間は何かを感じられたほどだ。
「魔王が復活した。ならば、我々ギルドも動かねばならない」
魔王が復活したことにより、各地で魔物が活性化している。多くの街や村で被害が多発しており、冒険者達が対処に動いている。
だが、指揮系統が上手く回っておらず、被害が徐々に拡大している。
「で、私を呼んだ理由は? まあ、大体は予測できるけど」
「ザックと協力して、ギルドを指揮してもらいたい」
「無理。あいつとは無理」
「…………」
即座にリカルドの願いを却下する。カロリーナの表情は真剣で、冗談ではなく本気であると分かる。
リカルドは昔を思い出して、カロリーナに頼みごとをしたことを後悔していた。
カロリーナとザックは昔から仲が悪かった。何かと言えば喧嘩をして、リカルドと喧嘩した時以上に周りを破壊した。
冒険者の間では、二人が顔を合しているのを見たら逃げろと言うのが暗黙の了解だった。
「どうにかならんか?」
「強力なんて、無理。どうせ喧嘩して、まともな指揮なんて出来やしないよ」
「ふう…………」
どうしたものかと思考を巡らせる。カロリーナに協力させるのは難しいが、ザック一人ではギルドを指揮しきれない。
仕方なくリカルドは最後の手段に出た。
「カラート、78年物」
「!?」
リカルドが発した単語にカロリーナはすぐさま反応する。リカルドを見つめる表情は驚きで彩られていた。
カラートとはお酒の一種であり、寝かせれば寝かせるほど美味しくなる。たった一年でも違うと、味に深みが増していく。
しかし、年代物はそうそう市場に出回らない。大抵が王族や貴族に献上され、冒険者でも入手すること自体困難だ。
そんなカラートの78年物ははっきり言ってプレミアものだ。それだけの年代が経つと、本数自体が少なくなり、買おうとすれば少なく見積もっても金貨1000枚以上は確実だ。
酒好きでなくとも、それだけの物があれば飲んでみたい。ましてやカロリーナは酒好きだ。反応せずにはいられなかった。
「86年物」
「なっ!?」
更に年代の古いカラートを提示され、思わず声を出してしまった。カロリーナの心は揺らぎまくっていた。
「…………」
「…………分かったよ」
「ふむ、お前さんなら引き受けてくれると信じておったよ」
「ふん、酒に釣られたわけじゃないよ。あいつへの借りを返すだけさ」
そう言って、カロリーナは机の上のコップを見つめる。思い出すのは、自分のせいで迷惑ばかり掛けていたフォルスの姿だった。
「まずは情報収集じゃ。魔王の情報を手に入れなければならん」
「とはいえ、ギルドを使って手に入る物かねえ?」
魔王が復活した以上、再び魔王を封印、もしくは討伐しなければならない。その為に必要なものは何か。どうすれば魔王を倒すことが出来るのか。
長年の経験や知識がある二人でも、情報の糸口はそう見付かりそうにない。
ならば、どうするか。二人は答えを瞬時に導き出し、再び机に視線を向けた。
「探してみますかね」
「…………破壊だけはするでないぞ、あいつの家を」
いかがでしたでしょうか?
この後ですが、魔王を倒すために様々な準備を行い、
そして魔王に挑む。
あまり詳しくは話せませんが、
一応この章で「格闘家な紋章術士」は終了となります。
おそらく他の章よりも話数が多くなると思いますが、
最後まで頑張ってまいります。
どうぞ、最後まで読んでやってください<(_ _)>
第六章、第七章の改訂につきましては、
2月1日中に行います。
矛盾や誤字脱字の修正ですので、話自体は変わっていません。
この後も順次修正は行っていきます。