第百六十二話
「サンダーアロー!!」
目の前に紋章を展開させたスレッドは、紋章術を発動すると同時にノイドに向かって飛び出した。
紋章術は巨大な雷の矢を作り出し、ノイドに向かって飛んでいく。それなりのスピードだが、ノイドの動きなら簡単に回避することが出来るだろう。
「油断はしない」
それでもノイドは油断しない。これまでの戦いからスレッドがこの程度とは考えていなかった。
身体に魔力を纏い、雷の矢に備える。すると、雷の矢は数十個に分かれ、ノイドを囲う様に全方位から飛んでいく。
「こいつもおまけだ!!」
正面からスレッドが拳を振り抜いた。スレッドの拳から雷が飛び出し、龍の形になってノイドに向かっていく。雷は辺りに舞う砂を焼きながら、ノイドに直撃した。
バリバリバリ!!!!
激しい音がノイドから発せられ、眩い光が辺りを覆う。しばらく雷はノイドに帯電し、数分後に雷は放電された。
「この程度か…………」
「…………無傷はへこむな」
雷が晴れると、そこには無傷で埃を払っているノイドの姿があった。普通の人間なら丸焦げになるほどの威力が無傷なのは、スレッドとしても落ち込みそうだ。
すぐさま気持ちを持ち上げ、再度合体紋章を発動させる。身体を眩い光が覆い、破邪の力が追加される。
「ミズハ、あの剣は後何回使える?」
「…………おそらく次が最後だろう。さすがに何度も使用できる業じゃない」
スレッドに近づいてくるミズハとブレア。スレッドはノイドを警戒しながら、ミズハに「劉炎宝刀」が何回使えるのかを尋ねる。それに対して、ミズハはあと一回しかないと告げる。
カグラ家の秘儀は大量の魔力と精神力を消費する。先ほど「劉炎宝刀」を一回使用している。更に他にも炎を使用しており、今の魔力を考えると使用できるのはおそらくあと一回だろう。
それでも魔族に対抗できるのは、ミズハの「劉炎宝刀」だけだろう。
「俺とブレアがチャンスを作る。その隙に一撃を頼む」
「了解した」
身体を解しながら、スレッドは前に出る。ブレアも杖を構えながら、ミズハの前に立って魔女の眼を発動させた。
前に出た二人を見て、ノイドは更に魔力を高めていく。魔力は衝撃となって、辺りの砂を巻き上げていく。
再びスレッドとノイドの戦いが始まった。
「ふん!!」
「…………はっ」
先ほどまでの激しい動きではなく、ノイドの激しい攻撃を両手で捌いていく。迫りくる右の拳の左の掌で軌道をずらし、左の拳も同様に捌く。
捌いたところで、右手でノイドの胴体を攻撃する。
「…………今!!」
そこにブレアの補助が入る。魔女の眼でマナを操作し、スレッドの攻撃に合わせて光の紋章術を発動させた。
魔力で覆われたノイドの胴体は普通に攻撃してはダメージを与えられない。
そこでスレッドとブレアの協力でその防御を破壊する。まずはスレッドの身体を覆っている光で魔力を削り、ブレアのピンポイントでの紋章術発動で部分的に魔力の鎧を破壊した。
「ぐっ!!」
まさか攻撃が当るとは考えていなかったのだろう。スレッドの緩やかな攻撃であったが、中に響く様な攻撃でノイドが呻く。
「まだまだ!!」
再び攻撃しようと前に出るが、ノイドの背中の腕が向かってくるスレッドを攻撃する。残り二本で魔力を破壊された個所をガードする。
スレッドは攻撃を捌きながら懐に入っていくが、先ほどと同じ場所は攻撃できない。しかし、このまま懐に居続けるのは危険だ。
(…………そこか!!)
瞬時にノイドを観察し、相手の隙を探し出す。腕に纏ったエネルギーを回転させ、力を貫通させやすいように操作していく。
そして、ノイドの左胸に向けて拳を振り抜いた。魔力を貫通させ、破邪の力をノイドに叩きこんだ。
「サンダーブラスト」
魔力が貫通されたことで、ブレアはノイドの身体の中に雷を侵入させた。
雷を操るブレアの表情は厳しい。額からは汗を流し、徐々に精神力を消費していく。それでもブレアは杖を構えたままだ。
ブレアの操る雷はノイドの全身を駆け巡る。相手を倒すほどの威力は無いが、それでも数秒相手の動きを止めることぐらいは可能だ。
「今だ、ミズハ!!」
「…………」
精神を集中させ、ミズハの前に炎が集まっていく。炎は剣の形をかたどっていき、「劉炎宝刀」が造り出された。
《準備はよいか、主?》
「勿論」
白夜に返事をしながら、ミズハは「劉炎宝刀」を手に取った。更に炎を刀に注ぎ込み、次の一撃に全てを込める。
「ふう…………」
軽く息を吐き、身体から余分な力を抜く。心を落ち着け、スレッドの合図を待った。
「今だ、ミズハ!!」
スレッドの合図を聞き、白夜の尻尾が伸びてスレッドの腰に巻き付く。スレッドと入れ替わるようにミズハ自身を移動させ、先ほどまでスレッドがいた場所にミズハが納まった。
「ぬおおおお!!」
雷によって動きを止められたノイドは必死に動こうとするが、上手く動けない。ブレアが全力で動きを封じているからだ。
それでも動きを止めるのも限界だ。
刀を持つ手に力が入る。真っ直ぐ前を見据え、ゆっくりと、しっかりと刀を振るった。
「おのれーー!!」
破邪の力がノイドの魔力を全て破壊し、巨大な腕を二本斬り落とした。更に一歩踏み込み、上半身を斬った。
魔力が破壊されたことによって、ノイドの力が次々と無くなっていく。このまま攻撃を受け続ければ、人間に負けてしまう。
すぐさまミズハから距離を取り、足元に黒い渦が発生した。
「覚えておけ。貴様らは必ず殺す!!」
僧侶の格好をしていたとは思えないほどの暴言を吐きながら、ノイドは渦の中に消えていった。
こうして、封印は護ることが出来なかったが、魔族を撃退することには成功した。ノイドが消えたことで、兵士も含めたその場の全員が安堵した。
すみません、サブタイトルが思いつきませんでしたので、
思いついたら更新します。
最近パソコンのドライブが壊れ、
読み取りが出来なくなったので外付けを購入したのですが、
使用するたびに面倒になってきました。
一応ボーナスも出たので新しいノートPCを考えていますが、
執筆に問題もないのでまだいいかなとも考えています。
まあこれまでもポメラなど、買おうとして買わなかった物も
多いので、今回も買わないかもしれませんが、
年始に多少は安くなると思いますので、
じっくり考えてこようと思います。