第百五十九話「音」
皆様にご指摘いただきまして、
「拾い食いはいけません」に「格闘家な紋章術士」を
更新していたようです^^;
「ふん、獣風情が」
「ガア!!」
錫杖の音が響き渡る戦場で、ライアは俊敏に動きまわっていた。
音による攻撃は生物であれば防ぐことが出来ない。脳や三半規管がある限り、何かしらの影響を受けてしまう。
しかし、ライアには音による攻撃を無視することが出来る。氣獣であるライアは体内にある核が全てを司る部分であり、核を傷つけられたり破壊されたりしない限り倒れることは無い。
「ガウウ!!」
ライアの周りに五つの紋章が展開される。どれも中位程度だが、展開速度は早い。すぐさま紋章術が発動し、五つが同時に爆発した。
「むっ!?」
爆発は辺りの砂を巻き上げ、激しい衝撃音が響く。
「この程度で――――」
「――――この程度で十分だよ」
「!?」
突然男の近くで声が聞こえた。すぐさま腕を上げて、迫りくる何かを受け止めた。凄まじい攻撃を受けたにも関わらず、男はびくともしない。
「なるほど、衝撃音で中和させたか」
「音さえなければ、問題ない」
攻撃を加えたのはスレッドだった。ライアの紋章術によって辺りに響いていた錫杖の音が歪んでいく。音が消えたわけではないが、音の攻撃は微妙な音の違いで効果が無くなる。
若干動きが悪いが、それを無視して男へと蹴りを入れた。
「無駄だ。我の音は消えん」
再び錫杖を振ろうとした。
「させるか!!」
だが、スレッドが黙って見過ごすはずが無い。足裏に二つの紋章を重ねる様に展開させる。一つ目の紋章に足裏を当て、そのまま紋章を接触させるように踏み込む。
「くっ!?」
いつも以上のGがスレッドの身体を襲う。だが、スピードはいつも以上で、まるで瞬間移動でもしたかのように男との間合いを詰める。
スレッドはこの重ね掛けの紋章移動を普段使用しない。なぜなら、あまりにもスピードがあり過ぎて、軌道変更できないからだ。
右の拳を握りしめ、氣を集中させて、回転させる。大きく振りかぶって、錫杖の先端に拳を叩きこんだ。
バキィィン!!
遊環が破壊され、辺りに響いていた音が消えた。音の影響下にいた兵士たちも動きだし、岩の魔物に対応していく。
「これで、形勢逆転だ」
「この程度で、勝ったと思うなよ」
動きが戻って、スレッドはすぐさま男に迫った。男はスレッドの拳や蹴りを錫杖で受け止めていく。
スレッドは一旦距離を取り、両手に紋章を展開させる。そのまま重ね合わせ、合体紋章を発動させようとするが、それを許す男ではない。
「隙だらけだ」
錫杖でスレッドの頭を狙う。集中しているスレッドはすぐに回避することが出来ない。
ブゥン!!
直撃する前に、男は後方へと何かを回避する。次の瞬間にはスレッドと男の間を炎の刃が通り過ぎた。
地上に視線を向けると、そこには刀を振り抜いたミズハの姿があった。
「はああああぁぁぁぁ!!」
ミズハが稼いでくれた時間を使って、合体紋章を完成させる。全身をエネルギーと雷が覆う。
「2対1だが、構わないよな?」
まるで挑発するようなスレッドの言葉に、男は不敵な笑みを浮かべる。
「よかろう。我の名はノイド。お前達を殺す者だ」
スレッド達がノイドと戦っているその頃。神殿に入ったブレアは封印の前に立っていた。
「これ以上封印を施すのは危険だ。封印同士が干渉し、封印自体を破壊してしまう」
現在の状況を尋ねたブレアは、それまで作業を行なっていた紋章術師の説明を受けていた。すると、もう手の施しようが無いと説明された。
ここにいる紋章術師全員で丁寧に封印の上から封印を施した。幾つもの紋章が干渉しない様丁寧に作業を行なった。
「大丈夫。ここから強化する」
封印に近づき、ブレアは杖を封印に向けた。封印の構成を確認し、構成的に弱い部分を補強していく。あちこちに隙間があり、数人で施した弊害が出てしまっていた。
「凄い…………」
「こんな方法があるのか」
ブレアのやり方に周りの紋章術師は感心しながら見学していた。彼らにはブレアほどの知識や観察眼を持っていないが、それでもブレアの行なっていることの凄さが分かった。
「なっ!? 更に封印を施すだと!!」
結界の隙間を補強したのに、更に自身の封印を上から施す。彼らではこれ以上の封印は互いの封印が干渉して、暴発してしまう恐れがある。
だが、既にあった封印を改良させたこと、更にブレアの精密な封印で干渉することなく魔族からの攻撃から封印を護る。
「これで大丈夫」
ドオオォォンン!!
遠くから何かが崩れる様な音が聞こえてくる。天井から微かに砂が落ちてきて、このままここにいるのは危険だ。
「直ぐに脱出」
「あ、ああ。よし、脱出するぞ!!」
ブレアの提言をリーダー格の紋章術師が受け入れる。すぐさま仲間に指示し、出口に向かって走っていく。ブレアもすぐに出口へ向かっていった。
「…………」
誰もが出口に向かう中、特徴のない一人の紋章術師が出口に向かわず、封印へと静かに近づく。懐から何かを取り出し、それを封印の周りにばらまいていく。
無事にばらまけたのを確認し、男は静かに出口へと向かっていった。
忙しかったとはいえ、更新する作品を間違えており、
大変失礼いたしました<(_ _)>
間違えて「拾い食いはいけません」を更新してますので、
次回は間違えて更新した話数に「拾い食いはいけません」の
最新作を更新しようと思います。
次の休みが本日の振休で水曜に貰ってますので、
水曜に更新します。時間は書き上がり次第更新します。
大変お騒がせしました<(_ _)>