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格闘家な紋章術士  作者: 愉快な魔法使い
第九章「魔王復活」編
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第百五十八話「奇襲」


「…………間に合ったか」


 なぜ危機一髪の兵士が助かったのか。その理由はスレッド達が兵士を吹き飛ばし、攻撃を回避させたためだ。


 岩が落ちてきた瞬間、スレッド達は即座に料理を食べ終え、待機所を飛び出した。直ぐに戦いに参加しようとしたところで、兵士が危険に陥っている場面を目撃した。


 すぐさまスレッドが移動し、手加減して兵士を蹴り飛ばした。


「ウオオオオォォォォ!!」


 潰したと思った兵士がいなくなり、攻撃対象がスレッドに移る。反対の拳でスレッドを押し潰そうと振り上げる。


「ふう…………」


 普通の冒険者なら振り上げられた瞬間に場所を移動する。目の前の岩の魔物の動き程度なら、難なく回避することが出来る。


 だが、スレッドは動かない。それどころか腰を落とし、右手に氣を集中させる。激しい力がスレッドの周りに風を巻き起こし、それに反応した岩の魔物は更に力を入れて拳を振り下ろした。


「おらぁ!!」


 振り下ろされる拳に触れる瞬間、スレッドは紋章を展開させた。荒れ狂う風を一つにまとめ、圧縮された空気を一気に爆発させた。


「――――――――!?」


 明らかにスレッドよりも質量がある拳が空気の爆発で胴体の後ろにまで吹き飛ぶ。その勢いのまま魔物の腕は千切れる様に飛んでいき、魔物は体勢を崩す。


 すぐさま氣を右足に集め、左の足裏に紋章を展開させた。左足を踏み出し、展開していた紋章を爆発させる。瞬間で魔物の足元に移動し、右足を魔物の左足にぶち込んだ。


 魔物の太い左脚はスレッドの蹴りによってへし折られ、体勢を崩して地面に倒れた。


「こいつで、止めだ!!」


 再び左脚だけで移動し、スレッドは倒れた魔物の真上に飛んだ。魔物の胸のあたりに紋章を展開させ、紋章目掛けて拳を振り下ろした。


 ガアァァン!!


 激しい爆発によって、魔物の胸に納められていた核が破壊された。核を破壊された魔物は動きを止め、只の岩に戻っていった。


「すげえ…………」


 周りにいる兵士はスレッドの戦いぶりを呆然と眺めていた。自分達がいくら攻撃しても傷一つ付けられない魔物に、たった数発の攻撃で沈黙させたのだ。


 誰もがその光景を見て、勝てると確信した。


「ぼさっとするな!! 我々の役目を忘れたのか」


『!?』


 呆然としていた兵士は、ボアの喝によって我を取り戻した。すぐさま戦いに参加し、負傷者を運んでいく。役目を思い出した一部の部隊は神殿の入口に向かっていった。


 一体目を倒したスレッドはミズハ達を連れてボアの元に移動した。


「…………すまない。助かった」


「気にするな。アレを倒すことが俺達の役目だ」


 最初にあった時の様な不遜な態度は無かった。それどころか多少気まずそうな表情を浮かべている。スレッド達はそれに対して何かを言うことは無かった。


「封印は大丈夫なのですか?」


「現在も紋章術師が総出で結界を張っている。完了するには後30分ほど掛かるだろう」


 ミズハの問いにボアは神殿の入口を見つめながら答える。


 フローデン神殿は幾つもの岩が積み上げられて造られている。ちょっとした振動で神殿自体は破壊することが可能だが、そうすると封印自体が破壊された岩が流されることによって移動し、見失ってしまう可能性がある。


 その為、封印を求める者は唯一の入口である正面から入るしかない。それが分かっているからこそ、魔族も正面から攻略しようとしているのかもしれない。


「色々と無礼な態度を取ってしまって申し訳なかったが、今は忘れて手伝っては貰えないだろうか?」


 このままでは危険だと感じたボアは、ブレアに対して頭を下げた。封印に結界を施す作業に加わってくれと。


 これまでの彼らの態度からすれば、あまり気分の良いものではない。極端な言い方をすれば、都合のいい時だけ頼りにする様なものだ。


「ん、了解」


「!? ありがとう!!」


 だが、ブレアは快く承諾した。今はあれこれ言っている時間は無いし、ブレア自身もあまりボアの態度をそこまで気にはしていなかった。


「じゃあ、俺達は――――」


「君達には魔物の討伐を頼みたい」


「――――そいつは無理そうだ」


「あれの相手をしないといけないみたいだ」


 スレッドとミズハの視線はある一点に注がれている。睨みつけるように戦闘態勢を取っている二人の視線の先を見ると、そこには袈裟を着た僧侶の様な男が宙に浮いていた。


「儚く散っていけ、人間どもよ」


 片手で拝みながら、僧侶の様な男は手に持った錫杖を振った。






 シャラン、シャラン。


「ッ!? 全員耳を塞げ!!」


 音を聞いて、スレッドは大声で周りの兵士に指示を出しながら、自身も耳を塞いだ。何人かはスレッドの言葉にすぐさま反応して耳を塞いだが、多くの者は冒険者であるスレッドの言葉など無視した。

 ちなみにミズハとブレアは即座に反応して耳を塞いだ。


「無駄だ」


 シャラン、シャラン。


「な、なんだ!?」


「あ、あれ…………?」


 錫杖の音が辺りに響く。厳かなその音は脳の奥にまで響き渡り、目の前が歪んでいく。平衡感覚が無くなっていき、身体から徐々に力が抜けていく。


 手に持った武器を持てなくなり、次々と地面に倒れていく。


「くそ…………」


「力が、抜けていく…………」


「なにも、考えられない…………」


 耳を塞いでいたスレッド達にも音が響き渡る。脳を揺さぶられる感覚が広がり、徐々に力が抜けていく。このままでは危険だと感じながらも、上手く身体を動かすことが出来ない。


「さて、終わらせよう」


 再び錫杖を鳴らそうとした瞬間、何かが僧侶の様な男に向かって飛びかかった。


「む!?」


 宙に浮いている男に向かって飛んでくる何かを錫杖で弾く。


 キィン!!


 弾かれた何かは軽やかな動きで地面に降り立った。


「ガウ!!」


 僧侶の様な男に飛びかかったのは、ライアだった。



えー、次回ですが、

「拾い食いはいけません」の方を久々に更新しようと

思いますので、少しだけ更新が遅れると思います。

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