第百四十一話「鎧の男」
皆様、お待たせしました!!
本日から「格闘家な紋章術士」を再開いたします。
まだまだこの先が試行錯誤になりそうですが、
これからも頑張ってまいります。
それでは、本編をお楽しみください。
スレッドの勘を頼りに森の中を進んでいく。出来るだけ魔物を回避しながら、随時メモを取っていく。
魔王領の魔物は想像以上に強かった。倒せないほどではないが、あまり体力を消費する訳にはいかない。
スレッド達は気配を極力消しながら草木をかき分けていった。
「…………」
静かに、ゆっくりと進んでいく。適当に進んでいる様に見えるが、スレッド達は何かに導かれるように進んでいった。
しばらく森を進んでいくと、スレッド達の眼の前に白い壁が広がった。
「壁?」
壁は横に広がっており、形状から円を描いているように見える。その大きさは一つの街ほどの広さがありそうだ。
「あそこに入口があるみたいだ」
ミズハが指差す先には、白い壁の一部に入口の様な穴が開いている。他には何も無い。
明らかに罠のように見える。ここに来るまで魔物を避けてきたが、作為的に誘導された可能性がある。
それでも、魔王領にやってきた目的を考えれば、調べないわけにはいかない。
《明らかに罠だと思うのだがのう…………》
「罠なら罠で、喰い破ってやるよ」
白夜の言葉にスレッドは力強く答える。頷く者もいれば、苦笑している者もいる。それでも反対している者はいない。
スレッド達は白い壁の中に入っていった。
白い壁に囲まれた通路を進み、しばらく進むと少し先に光が見えてきた。光を抜けると、そこには広大な円形の闘技場が広がっていた。
屋根は無く、雲の掛かった空が広がっている。
「ようやく来たか」
『ッ!?』
闘技場の中央に黒い鎧を着た男が立っていた。男は右手に巨大な戦斧を持ち、圧倒的な存在感がある。
スレッド達はすぐさま戦闘態勢を取る。
「ふん、慌てるな」
鎧の男が左手を上げると、闘技場全体にかけられた紋章術が発動する。発動した術は入口を塞ぎ、出入りを出来ないようにした。
「これで邪魔は入らない」
「ご丁寧にどうも」
強力な結界は魔王領の魔物すら防ぐことが出来る。雑魚に邪魔されること無く戦える。
準備を終えた鎧の男は戦斧を構えた。
「我が名はボルフォック。好きに掛かってこい。ここがお前達の墓場だ」
「人間、舐めんなよ」
最初に動いたのはスレッドだった。速攻で合体紋章を発動させる。雷と身体強化の紋章を重ね合わせ、膨大なエネルギーで身体を覆った。
一気に足を踏み出し、間合いを詰めた。
足を踏ん張り、右手にエネルギーを集中させる。右手の手甲がエネルギーを更に増幅させ、右の拳をボルフォックの腹に叩きこんだ。
「おらぁ!!」
「ふん!!」
まるでスレッドの攻撃を受けなかったかのように。ボルフォックは右手の戦斧を振るう。スレッドは上体を逸らして、紙一重で戦斧の刃を回避する。
そのまま両手を地面に付け、後方へとバク転する。
「やあ!!」
バク転するスレッドの陰に隠れながら、ミズハは空中に飛び出した。身体に纏った炎を刀に集約していく。
「白夜!!」
《ほれ》
白夜によって炎が増幅され、増幅された炎を圧縮していく。赤白く圧縮された刀を振り上げた。
「はあぁぁ…………」
ボルフォックは両手で戦斧を持ち、力を溜める。空中に飛び上がったミズハに移動手段はないだろうと考えていた。
刀程度では黒の鎧を傷つけることはできない。ミズハが地面に着地してから攻撃しても問題ない。
ボルフォックが力を溜めているのを見て、白夜が判断する。
《主、気を抜くでいないぞ》
白夜は尻尾を三本に増やし、一本をミズハの身体に巻きつけた。残り二本の尻尾の先を刃に変化させ、ボルフォックに向けて伸ばしていく。
刃は正確に鎧と鎧の間を狙っていく。鎧の中身がどうなっているのか分からないが、ダメージを与えることが出来る筈だ。
「無駄だ」
ボルフォックは微かに動き、ヒットするポイントをずらす。白夜の刃は鎧に弾かれた。
しかし、白夜の目的はダメージを与えることではなかった。白夜の尻尾はボルフォックの戦斧に巻き付き、一気にミズハごと間合いを詰めていく。
「ミズハ!!」
「ッ!!」
そのまま刀を振るおうとした瞬間、ブレアの声が聞こえた。声に反応し、刀を持つ手の動きを止める。
ブレアは『魔女の眼』を発動させ、ミズハの真下の空間を見つめる。マナの動きを見極め、世界の答えを見つける。
見つけた答えを現実世界に表示させ、ミズハの真下に風を巻き起こした。風はミズハを更に上空へと押し上げ、上空からボルフォックの真上に位置した。
炎を翼の形にイメージし、刀身から羽を生やしたように炎が広がる。
「飛炎…………龍線!!」
兜に向けて突きを放ち、直撃した瞬間に炎がボルフォックを包みこむ。白夜の尻尾を使ってミズハはスレッド達の元に移動する。
燃え盛る炎を見つめながら、スレッド達は戦闘態勢を解かない。この程度で魔族を倒せたら苦労しない。
それでも多少は鎧にダメージを与えられることを期待した。
ヴォン!!
「ふん。それなりか」
たったの一振りで炎を薙ぎ払う。鎧は微かに燃えていたが、ダメージというほどの被害はない。
「まだまだ、これからだ」
いかがだったでしょうか。
一応は再開はいたしましたが、
8月は出張など色々忙しくなりますので、
まだまだ更新速度は遅くなりそうです。
出来るだけ新作と併せて進めていきたいですので、
応援のほどよろしくお願い申し上げます<(_ _)>




