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格闘家な紋章術士  作者: 愉快な魔法使い
第八章「魔王領探索」編
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第百四十話「魔王領」


「許可証を確認させていただきます…………はい、結構です」


 リュディオンから魔王領に入る唯一の扉、その前でスレッド達は最終的なチェックを行なっていた。


 魔王領に繋がる扉は紋章術によって何重にも封印が施されている。その頑丈さは、魔王領に生息する魔物の攻撃にびくともしない。


 この封印は十人以上の紋章術士が総出で解除しないと外すことが出来ない。その為、解除は月に一回と決められている。どのような例外があろうとも、それだけは覆すことが出来ない。


 スレッド達も例外ではない。許可自体は簡単だったが、出発までには幾日か待つことになった。


 そして現在許可証のチェック、諸注意、荷物のチェックを終え、封印解除まで待機しているところだ。


「…………ついに魔王領だな」


《我が主もさすがに緊張しているようだのう。大丈夫じゃ。妾がついておる》


 扉を真っ直ぐ見据えながら、ミズハが呟いた。その顔には緊張が窺える。ミズハの肩に白夜が乗り、尻尾をゆらゆらと揺らしながらミズハを気遣っている。


「忘れ物…………無し」


 ブレアは最終的な荷物のチェックを自身で行なっていた。これまで何度も確認し、ここの職員にも手伝ってもらったが、それでも確認を怠らない。


 おそらく魔王領でもブレアは後方からの攻撃や支援になるだろう。それを考えると、道具を使用するのも必然的にブレアになる。


 何処にしまっているのか、それも重要な要素だ。


「ふう…………」


「ガウ…………」


 スレッドとライアは共に精神を集中させ、いつでも戦闘が行なえるように身体に氣を循環させている。


 これから進む先は、いつ命を落とすかもわからない危険な場所だ。扉を出た瞬間に魔物に襲われる可能性もある。


 そうなった時、仲間を助けるためには力が必要だ。


「では、解除を始めてください」


 許可証を確認した職員が控えていた紋章術士たちに合図する。ローブを深々と被った紋章術士たちは無言で扉に近づき、封印を施している紋章を解除していく。


 一つ一つ紋章を解除していく。幾つもの属性を備え、あらゆる攻撃を想定して封印が施されている。


 絶妙に配置された紋章がこれまで一度も敗れることなく、魔物の侵入を防いできた。


 紋章が全て解除され、幾つもの物理的な鍵が開けられていく。これで全ての準備が整った。


「よし、行こう!!」


 様々な思いを持ちながら、スレッド達は魔王領に入っていった。






 扉を通ると、そこには何の変哲もない森が広がっていた。


 目に見える物だけを捉えれば、拍子抜けするほど平穏な森にしか見えない。穏やかな風が吹き抜け、空からの木漏れ日が眩しい。


 しかし、その場にいれば、場の異質さに気付く。いつもより身体が重く、なんとなく息苦しく感じる。


《ふむ、魔素が濃いようじゃ》


「魔素?」


《空気中に漂う魔力の素じゃ。濃い魔素は魔物や魔族には快適な環境じゃが、人間にとっては苦しいだろう》


 魔素とは魔力の元である。本来魔素は空気中のあちこちに存在するが、人間にはあまり影響が無い。


 だが、魔物や魔族は魔素の影響を受ける。魔素を取り込んで力と変えている為、魔素の濃い魔王領の魔物は他の地域で生息している魔物より強力だ。


 そんな魔素だが、濃すぎると人間にも影響を与える。本来人間には取り込めない魔素が空気中にあり過ぎると、体内の魔力と反応して魔力の循環に支障をきたす。


「こういう時こそ、こいつの出番か」


 そう言ってスレッドが取り出したのは、ザックから渡された金属の板で作られた許可証だった。


 許可証には特殊な紋章が刻まれている。板に魔力を通すと、板に刻まれた紋章が発動する。


 発動した紋章はスレッド達を覆い、濃度の濃い魔素を遮断した。その途端息苦しさが無くなり、動きもいつも通り動かせるようになった。


 魔王領に入る冒険者に渡される許可証には一流の紋章術士が紋章を刻んでいる。紋章を刻みこめる紋章術師は世界にも少なく、この許可証自体も希少だ。


 だからこそ、ギルドとしても回収できるのならしてもらいところだ。


「よし、気合い入れていくか!!」


『おう!!』


 スレッド達はとりあえず真っ直ぐ進んでいった。






「はっ!!」


 襲ってくるダークウルフに拳を振るう。防御の隙間をつき、更にダークウルフの頭に蹴りを入れる。


 全ての攻撃がヒットしているのに、未だにダークウルフを倒せない。ダメージは与えているが、それでも一匹すら倒せない。


「これなら、どうだ!!」


 拳に纏わせた氣を回転させる。重心を落とし、迫りくるダークウルフに正面から拳を突き出した。


「ギャアウ!!」


 拳が当った瞬間、ダークウルフは回転しながら吹き飛んだ。吹き飛んだダークウルフの身体は木に激突し、地面に落ちた。微かに震えた後、息を引き取った。


「…………ふう」


 周りに魔物がいないことを確認し、身体から少しだけ力を抜く。完全に力を抜いたら、もしもの時に対応できなくなってしまう。


 周りを見ると、ミズハとブレアがそれぞれ戦闘を終え、スレッドに近づいてきた。


「そっちも終わったようだな」


「強かった」


 ブレアが言った感想の通り、魔王領の魔物は強かった。おそらく低ランクの魔物だろうが、それでも倒すのに多少苦戦した。


 魔物の数が少なかったのが幸いした。襲ってきたのが数匹程度で、これ以上襲ってきたら危なかった。


「どうする?」


《妾としては、あまり無理をすべきではないと思うがのう。とりあえず、もう少し進んで見てはどうかのう》


「…………方位磁石は?」


「駄目だ。完全に狂っているよ」


 ミズハの手に持った方位磁石は全く機能していなかった。グルグルと回り続け、方向は全く分からない。


 どちらの方向に行くべきか考えていると、スレッドが突然ある方向を指さした。


「…………こっち行くか」


「何か分かったの?」


「ん、いや、単なる勘だ」


『…………』


「ワウゥ…………」


 ブレアの問いに勘で答えるスレッド。そんなスレッドに誰もが呆れる中、ライアだけはいつも通りと器用に溜息を洩らしていた。



ここ最近ちょっと執筆が進んでおりません。

そこで、もし訳ないのですが、少しだけ「格闘家な紋章術士」を

お休みして、今頭の中にある異世界漂流物を書こうとしています。

休むと言っても一週間程度で、早ければもう少し短縮すると思います。

異世界漂流物は公開するか分かりませんが、どうしても書きたくなりました。


出来るだけ「格闘家な紋章術士」も同時進行で進めていきますので、

少しの間お待ちください。




話は変わりますが、8月には2回ほど出張が決まっており、

その後も何度か出張に行く予定です。

その出張で開いている時間に執筆したいので、

現在持ち運びのできるタブレットもしくはノートPCの購入を考えています。

そこで、ちょうどよいものがあれば、どなたか紹介していただけないでしょうか?

予算の都合上、買わないという選択肢もありますが、

よろしくお願いいたします<(_ _)>

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