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格闘家な紋章術士  作者: 愉快な魔法使い
第八章「魔王領探索」編
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第百三十四話「娘の成長」


 ミズハとリアナは訓練場の中心で向かい合い、互いに『血の紅』を発動させた。二人の周りには炎が発生し、周囲の温度が上がっていく。


「それじゃあ、思う様に向かってきなさい。武器も使用して構いません」


「でも…………」


 さすがに武器を使用しての模擬戦は危険だ。リアナの実力はそれなりに知ってはいるが、それでもミズハはこれまで冒険者として魔物と戦ってきたのだ。


 それなりに実力を身につけたし、紋章武器もある。武器を持たないリアナと戦うのは戸惑いがある。


「気にしなくても大丈夫です。貴女では私を倒すことは出来ませんよ」


「…………行きます」


 多少カチンとしながらも、慎重にリアナへと向かっていく。


 炎を弾丸のように発射する。一つ一つが人間を吹き飛ばすほどの威力がある。そんな炎の弾丸を実の母親に向けて放つ。


 普通なら模擬戦であっても、手加減を行なうだろう。しかし、ミズハ達にとってはこれぐらい普通だ。幼い頃から何度かリアナから訓練を受けているが、一度手加減したらリアナ自身に激怒された。


『訓練とは全力でやるものです。それがたとえ実の親でも関係ありません。全力が出せないのなら、戦うことなどやめてしまいなさい』


 それ以降、ミズハは訓練であっても全力を出す様にしている。


 迫りくる炎の弾丸に対して、リアナは炎の壁を目の前に展開する。炎の弾丸は炎の壁に吸い込まれ、無効化される。


「この程度では勝てませんよ」


「分かっています!!」


 炎を纏ったミズハは、手に持った刀に炎を纏わせる。炎の力で身体能力を高め、リアナに接近戦を挑む。


「狙いは良いですね。ですが、少し慎重さに欠けます」


 キィィン!!


 ミズハの刀はリアナが右手に持った何かによって阻まれた。


 リアナが右手に持っているのは、炎で作られた刀だ。形を持たないはずの炎を圧縮させ、金属音を響かせるほどの完成度を誇る武器を作り出した。


「久しぶりに剣術の指導をしてあげましょう」


「くっ!?」


 片手で持った炎の刀でミズハに斬りかかるリアナ。その剣速は軽く振るっているとは思えないほどのスピード、リアナの細腕の何処から出ているのかと思われるほどの力がある。


 必死にリアナの攻撃を受けとめながら、リアナの隙を狙う。だが、隙を見せるほどリアナは手加減などしない。


 それでも諦めずに反撃していく。攻撃を受け止めた瞬間に半歩後ろに下がり、返す刀で斬りかかる。


 キィン!! キィン!!


 華麗な動きでミズハの斬撃を受け止める。その動きには全く無駄が無く、余裕の表情で刀を振る。


「…………ふう」


 ミズハは一旦距離を取り、気持ちを落ち着ける。意識を集中させ、纏っていた炎を刀に集めていく。限界まで纏った刀身が紅く染まり、汗をかくほどの熱量を発する。


 普通ならこの隙を狙うのだが、リアナは笑顔でミズハの攻撃を待っている。ここで攻撃してもいいが、それでは娘の成長が見られない。


 待たれていることを実感しながらも、ミズハは上段から全力で刀を振り下ろした。


「炎月列覇!!」


 半月状の炎の刃がリアナに向かって飛んでいく。その大きさを観察し、リアナは娘の成長を喜んでいた。


 以前訓練を行なった頃には、炎月列覇は今の半分ほどしか大きさしかなった。圧縮も不安定で、使用には向かないとミズハに告げた。


 その時はミズハも落ち込んではいたが、それでも諦めなかった。己の力を鍛え、完璧な炎月列覇を完成させたつもりだ。


「見事に成長しましたね。ですが、まだまだです」


 娘の成長を見て微笑み、それを迎え撃つために己が炎を振り絞る。炎の刀にありったけの炎を纏わせ、圧縮させていく。


 刀を上段に振り上げ、ミズハと同じ型で同じ技を放った。


「炎月列覇」


 リアナの刃はミズハと同じほどの大きさだが、その色はミズハの刃に比べて濃い紅をしていた。


 刃と刃が激突する。激しい熱が辺りに広がり、圧縮された刃が爆発した。煙が立ち込め、晴れた先には砕けた炎の残骸が残っていた。


「はあ……はあ……」


「…………」


 息を切らしているミズハとは対照的に、リアナは一つも息を切らせていない。それほど動いていなくても、莫大な炎を使用するには大量の精神力が消費される。


 おそらく次が最後の攻防になるだろう。


「見事に成長しました…………最後の試練を与えましょう」


 息切れはしていないが、リアナもかなりの精神力を消費していた。だが、ミズハの師匠の立場にあるリアナがここで弱さを見せるわけにはいかない。


 リアナの炎がリアナの背後に集まっていく。炎は絡まり合いながら徐々に何かを形作っていく。


 バサァ!!


「これが私の炎の源『桜花』です」


 カグラ家の力は血によって受け継がれる力だ。一族の殆どが血が炎の源であると考えている。


 しかし、それは大きな間違いである。

 確かに血によって力が受け継がれる。だが、炎の源とは別である。カグラ家の一族はその身体に一匹の獣を飼っている。


 殆どの者がその存在に気付かずに一生を終えていく。だが、稀に一族の中にはその獣を飼いならし、炎の化身として顕現させることが出来る者がいた。


 その者は一族の中でも天才と呼ばれ、リアナもその一人であった。


「選ばれた者だけが顕現させることが出来る、そう伝えられていますが、実際には違います。顕現させるには意志の強さが必要です」


「意志の強さ…………」


「さあ、見せてみなさい。貴女の意志を!!」


 炎の翼を羽ばたかせ、『桜花』がミズハに向かって飛んでいった。



今回でミズハの特訓を終える予定でしたが、

なぜか二話に分かれてしまいましたorz


…………まあいっか。

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