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格闘家な紋章術士  作者: 愉快な魔法使い
第八章「魔王領探索」編
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第百三十三話「才能」


「おらっ!!」


「ほっほっ!!」


 新しい感覚に笑いながら攻撃を繰り出していくスレッド。スレッドの攻撃をこれまた笑いながら回避していくセバス。


 防御の隙間を狙った拳は空を切り、その攻撃にカウンターが合わされる。脇腹を狙って放たれた蹴りを左腕でガードする。多少の衝撃はあるが、先ほどまでとは違って動きを止めるほどではない。


 片足の体勢になったセバスの足を払おうと右足を横にスライドさせる。回避されると思っていたが、セバスはあっさりと足を払われて横向きに身体が回転していく。


「ふん!!」


 すかさずセバスの身体の中心に正拳突きを叩きこむ。


 ドン!!


 激しいと音共にセバスは後方に吹き飛ぶ。


「…………どうやったら、あの状態からノーダメージなんだ」


「ほっほっほ。単に数回空中を蹴って、後ろに飛んだだけでございます」


「でたらめだな…………」


「この程度出来ずに、カグラ家にお仕えすることなど出来ませんよ」


 まるで重さを感じさせない様な動きで地面に着地する。服についた多少の埃を払いながら、再び間合いを詰めてくる。


 セバスの動きは明らかに初老の動きではない。大抵の人間が驚きを通り越して、呆れてしまうだろう。


 例にもれず、スレッドも呆れていた。だが、呆れの中にも楽しさがにじんでいた。


 迫るセバスを迎え撃つ。氣を集中・圧縮させた拳をあり得ないスピードでスレッドに叩きこむ。当たる直前に拳を覆う様に両手で抑え込み、動きを止めた。


「不正解です」


 ニヤリと笑いながら、圧縮させていた氣を開放した。開放された氣は一気に膨れ上がり、セバスの拳を中心に爆発する。


 何とか抑え込もうとしたスレッドだったが、あまりの威力に身体ごと吹き飛ばされる。


「うわぁ!?」


 空に吹き飛んだスレッドは空中で体勢を整え、足裏に紋章を展開させる。反動で空中を移動し、足裏の紋章を爆発させ、猛スピードでセバスに向かっていった。


 拳に氣を集中させ、勢いのまま拳を繰り出した。


「ふん!!」


 対するセバスも拳に氣を集中させ、真正面からぶつかった。氣と氣がぶつかり合い、衝撃と激しい音が辺りを揺らす。


「うおおおお!!」


「はああああ!!」


 一見すると、拮抗しているように見える。だが、よく見るとスレッドの額には汗が流れている。対してセバスは変わらず余裕の表情だ。


「なかなか力強いですが、力だけでは私に勝てませんよ」


「!?」


 拮抗は直ぐに崩れた。セバスは腕の氣を回転させ、拳の威力が増した。突きの威力は回転によって増し、スレッドは再び後方へと飛んでいく。


「ふう……ふう……なるほどな」


 息をつきながらも、セバスの姿を観察する。どうするのかとセバスはスレッドの行動を観察していたが、スレッドは拳に氣を集中させて、再びセバスに迫った。


 セバスは少々がっかりしていた。まだ何か策があるのかもしれないが、それでもスレッドの行動は先ほど変わりない。ここから策を行なうにもその手段は限られてくる。


 それでも諦めない姿勢は評価に値する。全力を持って当らねば失礼だ。拳の氣を回転させ、スレッドに拳を放った。


「こんな、感じ、か!!」


「ッ!?」


 軽い感じで拳を突き出すスレッド。先ほどまでと変わらないと考えていたセバスだが、スレッドの拳を見て、本日一番の驚いた顔をしていた。


 なぜなら、スレッドはセバスと同じように拳の氣を回転させていたのだ。


「やってみるもんだ!!」


「…………全く、才能とは恐ろしいものですな」


 簡単に真似してしまうスレッドのセンスに呆れかえる。


 氣の回転は簡単そうに見えて、実際はかなり難易度が高い。自身の意思で氣を移動させることはできても、戦闘中に高速で回転させ続けることは難しい。セバスがこの技術を身につけたのは三十代になってからだ。身につけるまでかなりの努力をした。


 回転する氣は激しい音を響かせ、最後には相打ちで双方の氣がはじけ飛ぶ。


「…………」


「…………」


 拳を突き出したまま、スレッドとセバスは動きを止めた。しばらくの間微動だにしなかったが、突然動いた。


 ドサ。


 全ての氣を使いきり、スレッドは崩れる様に地面に倒れた。


「…………やっぱり、負けたか」


「まさか、これほどとは思ってもみませんでした。これはすぐにでも追い抜かれてしまいそうですな」


「その割には、余裕に見えるが?」


「いえいえ、これでも立っているのがやっとですよ」


 軽く執事服の誇りを払う。見た目には戦う前と全く変わらない。対するスレッドはあちこちボロボロで、腕を持ち上げることもできない。


 それでも、スレッドの顔はとても満足そうだった。






「あら? あなたが人に教えているなんて珍しいわね、セバス」


 戦い終わったところに、ミズハを連れたリアナが現れた。その姿は先ほどまでとは違い、ラフな格好だ。


「ミズハ様の未来の旦那様でございますから、ついつい力が入ってしまいます」


「セ、セバス!?」


 笑顔で答えるセバスに顔を真っ赤にしながら叫ぶミズハ。セバスの言葉に頭の中で一瞬未来の自分とスレッドを想像し、すぐに頭から振り払った。


「あらあら」


 そんなミズハの様子を見ながら、リアナはニヤニヤと笑っていた。


「それに…………未来ある若者に道を示すのは、老兵の努めでございます」


「ふふ、それなら私も示さないとね」


 地面に倒れるスレッドを介抱しているミズハの姿を眺めながら、リアナは決意の籠った視線を未来ある若者たちに向けた。


「ミズハ、そろそろ始めますよ」


「あ、はい。でもその前にスレッドの治療を――――」


「ミズハ様、ご心配なく。スレッド様の治療は私が手配しておきます」


「でも…………」


 セバスの提案を受けても、ミズハは迷っていた。リアナとの訓練があるが、スレッドが心配だ。セバスのことは信頼しているが、それでも渋ってしまう。


「俺なら大丈夫だ」


「スレッド…………」


「頑張ってこい」


 力の入らない拳を握り、力を振り絞って腕を上げる。ミズハに拳を向け、エールを送った。


 少し動かすだけで身体が痛い。顔が歪むほどの痛みだが、スレッドは笑顔をミズハに向ける。


「…………行ってくる」


 ミズハもスレッドに向けて拳を突き出す。


「では、参りましょう」


「ちょ、さすがに引き摺るのは…………」


「男に担がれたいですか?」


「…………このままでいい」


 拳を突き出した状態のまま、スレッドはセバスに襟首を掴まれながら引き摺られていった。


「頑張らないといけないわね」


「…………はい」


 頑張る理由を再確認し、ミズハはリアナに向き合った。



今回は戦闘部分を頑張ってみました。

まあ、それでもまだまだ下手ですが^^;

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