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格闘家な紋章術士  作者: 愉快な魔法使い
第七章「日常」編
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第百二十八話「VSスレッド」


 合体紋章を発動させたスレッドは、身体の周りに氷の結晶を纏いながら泡に近づいていく。


「ふっ!!」


 泡に向けて拳を放つ。このままスレッドの攻撃力で泡を破壊されれば、爆発を起こすだろう。


 しかし、泡は爆発することはなかった。


 パキン!!


 泡に当たる寸前に寸止めし、身体に纏う氷の結晶で泡を瞬間的に凍らせる。目の前にある全ての泡を凍らせ、氷となった泡は地面に転がっていく。


 氷を乗り越えたスレッドはバブルリザードに近づく。


「シュルルルル!!」


 どうやってバブルリザードを気絶させようか考えていると、バブルリザードが爪で先制してきた。


「ッ!?」


 スレッドは咄嗟に腕をクロスさせ、自身の身体を氷でガードする。バブルリザードから放たれた衝撃がスレッドを襲い、あまりの衝撃にガードしていた氷が粉々に割れる。


 すぐさま距離を取り、両腕の周りに氷の結晶を集める。


「ちょいと動きを止めさせてもらうぜ!!」


 一気に間合いを詰め、バブルリザードの足に拳を放った。氷の結晶がバブルリザードの足を覆い、一瞬にして氷の塊がバブルリザードの動きを止める。


「シャアアアア!!」


 しかし、片足を止めた程度ではバブルリザードをそう簡単に止めることはできない。足を止めていた氷は罅割れ、すぐにバブルリザードは動き出そうとする。


 スレッドはすぐさま移動し、反対の足を凍らせる。今度は先ほどよりも厚い氷を張り、更に身体全体を薄く凍らせていく。


 倒すだけならばバブルリザードの全身全てを氷漬けにしてしまえばいい。それが出来るほどの実力がスレッドにはある。


 だが、それをしてしまってはバブルリザードの命を奪ってしまう。


 そこで死なないほどの体温低下でバブルリザードの動きを鈍らせる。


「…………」


 スレッドはしっかりと重心を落とし、意識を拳に集中させる。これから行なう攻撃はスレッドでも難しい高等技術だ。失敗すればバブルリザードの命を奪ってしまう。


「…………はあ!!」


 バブルリザードの頭部に向けて拳を放つ。拳自体はバブルリザードの直撃することはなかったが、バブルリザード自体には変化があった。


 特殊な技術で放たれた拳は衝撃だけをバブルリザードの脳に当てて、脳震盪を起こさせた。


 体温低下と脳震盪によってバブルリザードは動きを完全に止めた。






「スレッド、大丈夫か!! …………って、問題無かったみたいだな」


「さすがスレッド」


 合体紋章を解除したスレッドの元にミズハとブレアが駆けよってきた。スレッドの横に横たわっているバブルリザードの姿を確認し、苦笑しながらも二人は安堵する。


 心配そうに駆けよってきた二人に笑みを浮かべながら、スレッドも二人の無事な姿に安堵する。


「そっちも大丈夫そうだな。ヴィンセンテ達は?」


「無事にバブルリザードを気絶させ、ライアを助けに行ったよ。もうすぐ終わりそうだ」


 最後の1匹に視線を向けると、ライアとヴィンセンテ達が協力してバブルリザードを無事に気絶させたのが見える。


「何とかなったな」


「無事成功」


 スレッドとブレアはハイタッチし、笑い合う。そこにヴィンセンテ達も駆け寄って来る。


「お疲れ様。助かったよ」


「それにしても、情報を間違えるなんてギルドにしては珍しいわね」


 バブルリザードが情報と違い、4匹いたことに首を傾げるナディーネ。


 ギルドのネットワークはかなり正確だ。その情報網がどのように張り巡らされているのかは公表されていないが、これまでギルドから間違った情報が出回ったことが無い。


 それほどまでに正確だったギルドの情報に間違いがあったことは不思議でならない。


「間違うことだってあるだろう。気にすることじゃないさ」


「うーん、そうなんだけどね…………」


 ヴィンセンテの言葉にナディーネは完全には納得できなかった。喉の奥に小骨が刺さった様な違和感があったが、結局は何なのか分からなかった。


「さあ、バブルリザードを住処に返して帰ろう」


 このままバブルリザードを住処へと運び、クエスト終了だ。紋章術でバブルリザードの巨体を持ち上げ、住処である湖まで返す。起き上がれば再び村へと向かってくるだろうが、向かってくる前に出産が終了するだろう。


 またギルドから無理を言って食料を用意してもらっている。枯れ草などバブルリザードの主食を住処の近くに置いておく。


 スレッド達はバブルリザードを運ぼうとしたその時、どこかから手を叩く音が聞こえてきた。


 パチパチパチ。


『!?』


「まさか人間がここまでやるとは。見事だ」


 拍手の聞こえる方に視線を向けると、空中に悠然と立っている一人の男がいた。白髪に切れ長の紅い瞳、スーツ姿にマントを纏った姿は普通の男には全く見えなかった。まるで仮装大会にでも出場しそうな格好だ。


 男の雰囲気は異様なものがあった。特に怪しい動きもなければ、凶悪な武器を所持しているわけでもない。

 それでも警戒せざるを得ない何かを感じさせた。


 楽しそうに笑みを浮かべるその男は拍手を止め、スレッド達一人一人を眺めていた。


「…………誰だ?」


 警戒しながら、スレッドは男を睨みつける。


「おっと、自己紹介が遅れたようだな。俺の名前はバルドール・ファンタスティック。魔族だ」


『ッ!?』


 魔族という言葉に誰もが驚き、動きを止める。まじまじとバルドールを観察し、異様な雰囲気を纏っていることで納得した。



……何となく話の流れが他の章と似てきたような(-_-;)


そのうち全体を見直さないとorz

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