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格闘家な紋章術士  作者: 愉快な魔法使い
第七章「日常」編
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第百二十六話「VSミズハ・ブレア」


 針の様な竜巻をブレアは泡に向けて発射する。


「てい」


 竜巻を自身の意思で操作する。魔女の眼で泡の中のマナと魔力の流れを確認し、ある一点に向けて竜巻を突入させた。


 プス。キュルルルル!!


 竜巻が泡の中に入ると同時に急回転を始める。回転が泡の中の空気を巻き込んでいき、空気が無くなっていくほどに泡は小さくなっていく。完全に空気が抜け、泡は爆発することなく消えていった。


 視界を埋め尽くすほどあった泡は小さくなりながら無くなり、バブルリザードまでの道を作り出した。


「よし」


 泡が無くなったことを確認し、ミズハはバブルリザードに向かって真っ直ぐ進んでいった。


 泡が消えたことを気にすることなく、バブルリザードは次々と泡を生み出していく。ミズハはその隙間を縫うように近づいていく。


 キィン!!


 近づくミズハにバブルリザードは爪を振るう。バブルリザードの体型では振り上げるのは難しいと思われるが、ちょっと振るっただけで地面を斬り裂くほどの威力がある。紙一重で回避しては危険だ。


 衝撃を刀で受け流し、峰をバブルリザードの頭部に叩きつける。だが、堅い鱗に阻まれてダメージを与えられない。


「くっ!!」


 重量のある身体を振り、尻尾がミズハに襲いかかる。その動きはその巨体から考えられないほどに素早い。あまりの重量に刀で受け流すこともできない。


 咄嗟に後方へと回避するが、巻き起こされた風に体勢を崩される。そこにバブルリザードの爪が襲いかかる。


「ウィンドカーテン」


 鋭い衝撃をブレアが風の紋章術でガードする。バブルリザードの攻撃は風によって軌道を逸らし、周りにある木々をなぎ倒していく。


「助かったよ、ブレア」


「意外と早い」


「ああ、気絶させるにもしっかりと動きを止めないと」


 二人は体勢を整え、バブルリザードに向き合った。生み出される泡を再び消しながら、ミズハはバブルリザードに近づいていく。


(無力化させるには…………腱を斬るしかないか)


 ミズハはバブルリザードに近づきながら、どうやってバブルリザードを無力化させるかを考えていた。


 峰打ちで倒せるほどバブルリザードの鱗は柔らかくない。かといって普通に斬りつければ、簡単ではないが殺してしまうかもしれない。今のミズハの実力ならばおそらく可能だろう。


 ミズハの炎は強力すぎて、焼き殺してしまうかもしれない。炎を使用することはできない。


 そこでミズハとブレアが考えたのは、バブルリザードの足の腱を一か所切断し、動きを鈍らせることだった。鈍らせたところでブレアの紋章術で手足を凍らせ、頭に風の塊を叩きつけ、気絶させる。動きが意外に素早く、凄まじい力を持つバブルリザードの動きを止めるには、そのくらいしないといけない。


 動きを止めるなら、全ての足の腱を斬る方が確実だ。氷で動きを止める必要もないし、動けないバブルリザードは簡単に気絶させることが出来るだろう。


 そうしない理由は、ミズハ達の目的がバブルリザードを殺すことではないからだ。


 四本の足全てを斬ってしまっては回復に時間が掛かる。回復が遅れれば、餌を取ることが出来ずに餓死してしまう。


 一本ならば少しの問題はあれど、生活が出来ないほどではないだろう。


「…………」


 全身の力を抜き、たった一振りに集中する。周りに泡が集まってきても関係ない。周りを全てブレアに任せ、腱を斬ること、それだけに意識を向ける。


「ふうぅぅぅぅ…………」


「シュルルルル」


 集中するミズハに向けて、バブルリザードが口を大きく開けて襲いかかる。このままではその大きな口の中に飲み込まれてしまう。


 それでもミズハは体勢を崩すことなく、どっしり抜刀の構えを取る。


「…………」


「シュルルルルー!!」


 バブルリザードは泡でミズハを攻撃し、その衝撃で吹き飛ばして飲み込もうとする。しかし、ブレアによって泡が消えていく。


 目を見開き、しっかりとバブルリザードの動きを見極める。瞬時にバブルリザードの右側に回り込み、抜刀する。


「――――!?」


 刀が振り抜かれたが、バブルリザードの足には変化が無いように見えた。鱗に覆われた足は傷一つない。


 だが、バブルリザード自体には変化があった。

 バブルリザードは甲高い鳴き声を上げ、動きを止めた。右前足の動きが止まり、格段に動きが悪くなる。


 バブルリザードの足は、ミズハの一振りによって腱が切断された。まるで手品のように思われるが、実際には腱と一緒に筋肉も斬られている。しかし、細胞を殺すことなく斬ることによって、刀で斬っても傷が直ぐに塞がる。


 但し、腱は切れたままだ。斬りたい物だけを斬る。カロリーナに課せられた訓練が少しは身になっているようだ。


「ブレア!!」


「オッケー」


 泡を消し続けていたブレアは一旦泡を消す作業を止め、四つの紋章をバブルリザードの真上に展開させる。


 パキ、パキパキ!!


 紋章が発動し、バブルリザードの足が全て凍る。これでバブルリザードは身動きをすぐには取れない。


 しかし、力の強いバブルリザードに氷程度で完全に動きを止めることはできない。


 ブレアはすぐさま風の紋章を展開させ、風で空気を圧縮させる。圧縮された空気の塊をバブルリザードの頭に叩きつけた。


 頭に叩きつけられたバブルリザードは、脳を激しく揺さぶられ、意識を失う。胴体からは完全に力が抜け、バブルリザードは動きを止めた。


「ふう、何とかなったな」


「殺さなくてよかった」


 バブルリザードの身体を土の紋章術で更に拘束し、二人はスレッド達を助けるために向かっていった。



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