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格闘家な紋章術士  作者: 愉快な魔法使い
第七章「日常」編
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第百二十五話「バブルリザード」


 目の前のバブルリザードは圧倒的な威圧感を発している。


「予想外だ」


 ギルドからの情報では、ボンゴンに向かっているバブルリザードは3体だった。ギルドの情報網はかなり正確で、外れることはないと思われていた。


 だが、実際スレッド達の前には4体のバブルリザードがスレッド達を睨みつけている。


「ふう、仕方ない。俺とライアで2匹相手する。その間に残りの2匹を頼む」


「危険だ!!」


「だが、他に方法が無いだろう。大丈夫だ、俺もライアもそう簡単にやられたりしないよ」


「…………」


 バブルリザードは話しをしている間も徐々に近づいてくる。いつまでも迷っているわけにはいかない。


 このパーティの中で一番実力があるのは、スレッドであることに間違いは無い。また、氣獣であるライアは疲れることが無い。長時間戦闘を行なっても、そう簡単に負けることは無いだろう。


 スレッドとライアが1匹ずつ相手をするのが一番だろう。


「…………分かった。だが、決して無理はしないでくれ」


 分担が決定した。ミズハとブレアが1体、ヴィンセンテとナディーネが1体、そしてスレッドとライアが2体の相手をする。


 スレッド達はそれぞれが相手をするバブルリザードへと向かっていった。






 スレッドは合体紋章を発動させ、ライアの頭に手を置いた。


「…………」


 ライアの核に刻まれた紋章を発動させる。テオの爪によって刻まれた新たな紋章にドラゴンの力を引き継がれた大量の魔力が注ぎ込まれる。


「ガウウ!!」


 紋章が発動し、ライアの身体をエネルギーが覆う。エネルギーは実体化していき、まるで鎧を着ているかの様だ。


 ライアの核に刻まれた新しい紋章の一つ、それは紋章のエネルギーを実体化させ、武器や防具を造り出す古代紋章の一つだ。


 実体化するだけと聞くと、それほど凄い紋章とは思わないかもしれない。

 だが、実際は実体化するだけではない。その威力は込められた魔力に比例して高くなる。大量の魔力を込められ実体化した剣は、豆腐を切るかのように鋼を切り裂くほどの切れ味を持つ。


 ドラゴン級の魔力を持っているライアの力によって実体化された鎧は、ドラゴンの攻撃を防ぐほどの防御力を誇る。この鎧を纏っていれば、ライアは大丈夫だ。


「よし、行くぞ!!」


「ガウ!!」


 準備を整えたスレッドとライアは目の前にいる2体のバブルリザードに向かっていく。空中を蹴りながら、上空からバブルリザードへ近づく。


 ポワン、ポワン。


「? 何だ?」


 上空に達した瞬間、バブルリザードが口から吐き出した泡がスレッド達の周りを漂い始めた。


「スレッド、それに触れるな!! 爆発する!!」


 パァァァァン!?


「うおっ!?」


 一番小さな泡に触れた瞬間、泡は内包していた空気と魔力が暴れ出し、爆発を起こした。


 スレッドは咄嗟に腕を交差させ、爆発から身を守ろうとした。だが、衝撃は防ぐことが出来ず、後方へと吹き飛ばされた。


 飛ばされながらも、スレッドは空中で体勢を立て直す。無事地面に着地し、周りに漂う泡に注意する。前方に視線を向けると、無数の泡がバブルリザードを護るように浮いている。


 バブルリザードの泡には様々な能力が備わっている。その一つが爆発だ。泡の中には圧縮された空気と大量の魔力が内包している。空気と魔力は常に乱流し続け、泡が割れると外のマナと触れあい、激しい爆発を起こす。


「触れない様に気を付けろ!!」


「了解」


 泡の説明を簡単に聞き、スレッドは笑みを浮かべて走り出した。






 ミズハとブレアは、バブルリザードが吐く泡を観察しながら作戦を練っていた。


「どうやって泡を回避して、近づくか…………」


 目の前には幾つもの泡が浮かんでいる。少しでも触れれば破裂してしまう泡を全て回避するのは至難の業だ。


 泡を消し去る方法は幾つかある。その中には剣で斬り裂く方法はあるが、斬り裂く個所やタイミングなど直ぐに行なえる技術ではない。


「ミズハは真っ直ぐ。泡は私がどうにかする」


「…………分かった。頼んだ、ブレア」


 どうするのか聞かずに、ミズハはブレアを信用してこのまま真っ直ぐ進むことを決める。ブレアがどうにかすると言っているのだ。信頼するのが仲間だ。


 ブレアは空中に複数の紋章を展開させる。意識を集中させ、頭の中のイメージを術に反映させていく。


 キュイィィィィン。


 甲高い音共に、ブレアの展開した紋章が細長い糸の様なものを空中に生み出す。


 生み出された糸の様なものの正体は、細長く巻き込まれる風の渦である。渦自体が細められることにより音が高くなっていく。


「後ろは任せた」


「任された」


 刀を真っ直ぐ構えたミズハは、後ろをブレアに任せてバブルリザードに向かっていった。






「ナディーネ、泡を頼むよ」


「はいはい」


 背中に背負った大剣を構え、ヴィンセンテはナディーネに泡の処理を任せる。


 ナディーネは腰に差した銃を抜き、弾丸を込める。視線を泡に向け、どうやって攻略するかを考える。


 バブルリザードの泡を消し去る技術をナディーネは持っていない。だが、ダメージを負わずにどうにかすることだけは出来る。


 それはパズルのように一つ一つを無効化させていくことである。頭の中で爆発をイメージし、どの泡を壊していくかを見定める。


「…………見えた」


 頭の中をフル回転させ、全ての泡の動きを読み取る。その間数分しか経過していない。


「3分後、真っ直ぐ進むように」


「分かった。バブルリザードの相手は任せてくれ」


 照準を泡の一つに合わせ、ナディーネは引き金を引いた。



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