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格闘家な紋章術士  作者: 愉快な魔法使い
第七章「日常」編
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第百二十四話「戦いの前に」


「準備が整った。行こう!!」


「お気をつけて」


 夜が明け、スレッド達は村長の家で朝食をご馳走になり、準備を再確認してからバブルリザードが向かっている森へと向かった。


 移動は途中まで馬車で移動し、森の入口から徒歩でバブルリザードを探索する。馬車の中でも各々武器のチェック等を行ない、緊張感を保つ。


「皆、少し聞いてくれ」


 準備が整い、目的地まで身体を休めているところにヴィンセンテが全員に向けて話し始めた。その表情は真剣そのものだ。


「今回のクエストの対象であるバブルリザード。バブルリザードは本来穏やかな性格で、子を産むために人間を襲う」


 森へと続く道は舗装されていない。馬車が移動するたびにスレッド達の身体も揺れる。


「人間を襲うことは、見過ごせる問題じゃない。だけど、僕達の目的は人々の生活を護ることだ。魔物を狩ることが目的じゃない」


 魔物の中には非常に危険で、賞金首に指定されている魔物も存在する。そういった魔物を放置することはできない。


 だが、冒険者は狩りを楽しんでいるのではない。冒険者の中には魔物を殺すことに快楽を覚えている者もいるが、極一部だ。


 しかし、バブルリザードは危険指定されていない。出産期には凶暴になるが、それ以外は穏やかな性格だ。生態系を崩してまで駆逐する魔物ではない。


「この世界は弱肉強食だ。強い者が弱い者を倒すのは仕方が無いのかもしれない。それでも、冒険者として甘いのかもしれないけど、むやみに殺したくないんだ…………」


 ヴィンセンテの話が終わり、静かな時間が流れる。


「…………良いんじゃないか」


「ああ、私は甘くても良いと思う」


「殺すことが全てじゃない」


「いつものことじゃない」


 誰もがヴィンセンテを否定しなかった。そのことが嬉しくなり、ヴィンセンテは涙が零れそうなのを必死に抑えていた。


「…………ありがとう。だけど、決して無理だけはしないでくれ。気絶させられないなら、自分の命を優先してくれ」


 バブルリザードを殺さずに、自分が命を落としてしまっては意味が無い。そこまで危険なことはさせられない。


 クエストの方針が決まった。後は成功させるだけだ。






 しばらく進んだところで、馬車が止まった。まだ森には到着していないことを確認し、スレッド達は不審がった。


「どうした?」


「…………すまねえ。これ以上進むのは俺にゃ無理だ」


 これまで馬車の手綱を男性は村の人が握っていてくれた。だが、彼は一般人だ。バブルリザードを恐れるのは無理もない。


 ここまで震えながらも、必死に我慢してここまで来てくれたのだ。


「構いません。ここまでありがとうございました」


「本当にすまねえな」


 ヴィンセンテは男性に礼を告げ、馬車から下りた。荷物を持ち、馬車を見送る。馬車は急いで村へと帰っていった。


「仕方ないわね。さっさと行きましょう」


 目指す森までは後少し。スレッド達は徒歩で進んでいった。






「クンクン」


「頼むぜ、ライア」


 森に到着したスレッド達は、ライアの鼻を使ってバブルリザードを探索していた。


 バブルリザードは水中に住む魔物だ。微かな水の匂いがするはずだ。中には湧き水などという可能性もあるが、虱潰しに探していけばその内見付かるだろう。


 ライアの鼻なら微かな水の匂いも嗅ぎ分けることが出来る。地面や空中を嗅ぎながら森の奥へと進んでいく。


「クゥーン…………」


「駄目か……」


 しかし、半日ほど歩いてもバブルリザードは見付からない。


 スレッド達は仕方なく休憩を取るために開けた場所に陣取る。中心で火をおこし、ここに来るまでに集めた木の実や果物、ライアが狩った猪の肉を焼いて食べる。


 本来冒険者はこんな場所で肉を焼いたりしない。魔物の中には肉の匂いに釣られてやってくる魔物もいる。


 だが、今回は魔物を誘き寄せることが目的である。肉を焼くことで匂いを発生させ、その匂いでバブルリザードを引き寄せる。その為の焚火だ。


 休憩しつつも、いつバブルリザードが現れてもいいように緊張感を保っていた。


「見付からないな」


「モグモグ、その内見付かるさ」


「モグモグ、そうそう」


「…………あまり食べ過ぎない様にな、スレッド、ブレア」


「本当に良いパーティね、あんた達」


 なかなか見つからないことに溜息をつくヴィンセンテに、スレッドとブレアが肉を頬張りながら励ます。そんな二人をこれまた溜息をつきながら、ミズハが二人に注意する。そんなやりとりをナディーネが笑いながら見ていた。


 バキ、バキバキ。


「どうやら釣れたようだな」


 木々がへし折られていく音が聞こえてくる。その音は徐々に大きくなり、スレッド達のいる場所にその姿を現した。


 その姿を見たスレッドは、横にいるヴィンセンテに尋ねた。


「なあ。確か確認された数は3体だった、よな?」


「あ、ああ」


 目の前には全身が湿った鱗で覆われた巨体、大きな口に幾本もの牙、長い尻尾をゆらゆらと揺らしながら、紅い目でスレッド達を認識する。


 その巨体の周りには小さな泡がまるで意思を持っているかのように漂っている。


 今回の目的の魔物バブルリザード。探していたよりも1体多い、4体が目の前に現れた。



どう決着をつけるのか、少し迷っています。


来週は本年度最後の週。

色々忙しいうえに、会社で異動があるかもしれません。

出来るだけペースは保とうと思いますが、

執筆できない日があるかもしれません。

気長に待ってやってください<(_ _)>

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