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格闘家な紋章術士  作者: 愉快な魔法使い
第七章「日常」編
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第百二十一話「珍しい再会」


 買い物を終えたスレッドとブレアは、酒場に食事を取りに来ていた。


 ショッピングの合間に食べ歩きしたので十分だと思うかもしれないが、二人にとっては食べ歩きの量ではおやつにもならない。


「ガツガツ…………」


「モグモグ…………」


 テーブルに座った二人は大量の料理を注文し、次々運ばれてくる料理を平らげていく。その食べっぷりに誰もが驚き、いつもなら多くの男にナンパされるブレアだが、食べている最中は誰も声を掛けられなかった。


 十五分後、テーブルの上にあった大量の料理は姿を消し、店員が二人のテーブルに近づく。


「…………あの、どうされますか?」


 どう見ても終わりだろうと思わないでもないが、それでも店員は笑顔で尋ねた。


 店員の顔を見ながら、スレッドは驚きの注文を行なった。


「もう一回同じものを」


『まだ、食べるんかい!!』


「…………すみません、材料が足りません」


 先ほどまでの大量の料理をもう一度頼むスレッドに、店内にいた人全員が思わず突っ込んでしまった。


 店員は笑顔を浮かべながらも、もう材料はないと断るしかなかった。






「ふー、食った食った」


「満足」


 さすがにもう一度あの量は難しかったので、あるだけの材料で料理を頂き、食後のデザートまでしっかり食べ、飲み物で喉を潤していた。


 店員は疲れた表情を浮かべながら、厨房へと帰っていった。周りの客もその光景に呆れていた。


「この先どうするの?」


「さて、どうしようか」


 二人はゆったりとしながら、この先について話し合っていた。


 現在はクエストをしながらスレッドのリハビリを行なっている。だが、スレッドの体調も回復し、リハビリの必要も徐々に無くなってきた。


 普通の冒険者ならこのままクエストをこなしながら生活していくものだが、スレッド達には放っておくことの出来ない問題がある。魔族の暗躍だ。


 魔族が何を企んでいるのかは分からない。その企みをスレッド達がどうにかしなければならない義務はない。


 それでもこのまま普通に冒険者を続けることはスレッド達には出来ない。


「まあ、まずはミズハも含めて相談だな」


 ミズハ抜きでこの先の方針を決めるわけにはいかない。仲間全員で考えて、決めるからこそのパーティだ。


「…………おなか減った」


「よし、食べるか」


「あはは、もう食材は一つも残ってないみたいだよ」


 店員を捕まえて注文しようと辺りを見渡すスレッド達のテーブルに男女二人組が近づいてきた。


 短く刈り揃えられた金髪にがっちりと引き締まった身体、背中に大剣を背負った男とポニーテールに誰もが振り向く様な美貌、腰に鉄の塊を二つぶら下げた女性だ。


 金髪の男が笑顔で話しかけてきた。


「久しぶりだね」


「? 誰だ?」


 男の言葉に二人とも首を傾げる。会ったことがあるような気がするが、思い出せない。


「あはは、さすがに分からないか。僕だよ、ヴィンセンテだ」


『…………ええっ!?』






 ヴィンセンテと連れの女性はスレッド達のテーブルに座り、店員に飲み物を注文した。その間に挨拶を交わす。


「頑張っているみたいだね。噂は色々聞いてるよ」


「…………本当に変わったな」


「意外」


 爽やかな笑顔を浮かべるヴィンセンテの変わりようにスレッドもブレアも驚かずにはいられない。明らかに一目ではヴィンセンテとは分からない変貌ぶりだ。


「あの時、僕にも出来ることがある。あの戦いが僕にそれを教えてくれた」


 ミズハの結婚相手を探す戦いでヴィンセンテは応援を呼ぶことしかできなかった。アースドラゴンと戦えるわけもなく、スレッドを置いて街へと戻った。


 だが、その応援があったからこそスレッドが助かったのも事実だ。殆どスレッドが解決したとはいえ、後始末などはスレッドだけでは出来なかった。

 ヴィンセンテが応援を呼んだことで事件の犯人であるアドニスを裁判にかけることが出来たのだ。


 それを実感したヴィンセンテは自身を変える努力を行なった。それまで格好に拘っていた装備を一新させ、自身を痛めつけるほどの修行を行なった。


 今では昔の仲間が驚くほど変わり、冒険者の間でも一目置かれるほどの実力をつけてきた。


「で、私はいつ紹介してくれるのかしら」


「すまない、久しぶりの再会だったからね」


 楽しげに会話を交わすスレッド達にヴィンセンテの連れの女性が不機嫌そうに声を掛ける。


 女性に謝りながら、ヴィンセンテは女性を紹介する。


「彼女はナディーネ・クレス。一緒にパーティを組んでいるんだ」


「よろしく~」


 手をひらひらさせながら、ナディーネは間延びした声を出す。スレッドとブレアも名を名乗り、スレッドの名前を聞いたナディーネは驚く。


「ふーん、リディアの武術大会優勝者にはあまり見えないね」


「…………あの大会は対外的には中止になったはず。どうして知ってるの?」


 リディア共和国の武術大会で優勝したことを知るものは少ない。そもそも武術大会は決勝で事件が起こり、対外的には優勝者がいないことになっている。

 スレッドが優勝者だということを知るものは、ミラを始めリディアの上層部とギルドマスターであるリカルドぐらいだ。


 ブレアの疑問に答えたのはヴィンセンテだった


「僕らにも一応独自の情報網があるからね。色んな噂を聞く中で、あの事件についても情報が入ってきたのさ。詳しいことまでは分からなかったけど、関係者の名前だけは情報が入ってきたんだ」


 リディア共和国の事件は冒険者の間で色々な情報が飛び回った。様々な情報が錯綜し、正確な情報を掴めた者は少なかった。


 二人も情報を手に入れたが、その量はそれほど多くなかった。手に入れた情報の中にはスレッド達の名前もあり、スレッドの強さを知っているヴィンセンテにはその情報が正確なものであると分かった。


 情報を仕入れたヴィンセンテ達はスレッド達の居場所を探し出し、会いに来たのだ。






 ナディーネも加え、しばらくの間話をしていると、スレッドが真剣な表情でヴィンセンテに質問を投げかけた。


「……話しがあるんだろう?」


「……そんなに分かりやすいかな」


 スレッドの質問にヴィンセンテは隠し事が上手くない自分の態度に笑いながら、本題を切り出した。


「実は…………頼みがあるんだ。あるクエストを手伝ってほしい」


 ヴィンセンテの頼み、それは彼らが現在受けているクエストの助っ人だった。



もう少し書く予定でしたが、

本日の更新に間に合いそうになかったので、

切りのいいところで終わらせました。

ただ、気になるところの流れが上手くいってないので、

休みである土日に改訂すると思います。


3月16日改訂

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