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格闘家な紋章術士  作者: 愉快な魔法使い
第七章「日常」編
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第百二十話「ブレアとのデート」


「旨いな」


「うん、おいしい」


 スレッドとブレアは片手にたれのついた串焼きを食べながら、街の大通りでウィンドウショッピングを行なっていた。


 ミズハとのデートが終わった次の日、ブレアは朝一でスレッドを誘い出し、ミズハに気付かれる前に街にやってきた。


 しかし、朝ごはんも食べずにやってきた二人が街で初めに行なったことは、お腹を満たすことだった。


「お、あれも旨そうだ」


「食べよう」


 次にスレッドが発見したのは、牛肉に調味料を染み込ませて一日置き、細かく切った肉を油でカリカリになるまで揚げたカルーラと呼ばれるファストフードだ。


 揚げ上がったばかりの良い匂いが辺りに漂い、その匂いに釣られて歩いている人々がカルーラを買い求める。


 スレッド達もカルーラを買い、食べながらショッピングを進めていく。


 こうしてスレッドとブレアのデートは食い気から始まった。






 腹ごしらえを済ませたスレッドとブレアは、古本屋に立ち寄っていた。


「…………」


「…………」


 二人はバラバラに店の中を回っている。棚に並んだ本の背表紙を一つ一つ丁寧に眺めていく。


 普通デートに古本屋などあり得ない。お喋りは出来ず、カップルが楽しめるようなところはない。ここを選ぶだけで、男性は確実に振られてしまうだろう。


 だが、スレッドとブレアは違う。話すことが出来なくても、お互いの興味のある本を読みながら穏やかな場所にいるだけでいい。


 その後特に会話もなく、数点本を見繕って店を後にした。店を出る二人の顔は笑顔だった。






 次に二人が立ち寄ったのは武具屋。スレッドの武器の調整をするためにやってきた。


 こんな日でなくとも違う日で良いのではないかと思うかもしれないが、デートであっても関係ないのが二人だ。


 手甲と杖を預け、店内の武器を眺めていく。それなりに良い武器が揃ってはいるが、二人が求めるほどの武器はなかった。


「このデザインがいい」


「…………どうなんだ、これ」


 ブレアが手に持った杖は、杖の先に天使の像が付いており、天使の像は派手やかな装飾が施されている。まるで天使が着飾っている様な姿だ。


 使えないことはないが、それを振り回すブレアは想像できない。


「カッコいい…………ぷぷっ」


「笑ってるじゃないか…………」


 肩まである手甲をはめたスレッドを笑うブレア。関節部の造りが悪く、肘を曲げることが出来ない。防御力はあっても、実戦では使用できない。


 しばらく店内を回っていると、隅の方に長細い何かが布に巻かれて立てかけてあった。埃が被り、長いこと触れられることもなくそこに放置されていたようだ。


「おーい、出来たぞ…………ん、そいつは」


「これ、開けていい?」


「ああ。前に金のない術士が売りに来てな。今更樹の杖は流行らないからな。単なる売れ残りさ」


 作業を終えてスレッド達を呼びに来た店主の許可を貰い、ブレアは布を取った。布の中からは樹の杖が現れた。


 現在の杖の主流は金属だ。昔は一人一人樹の枝などから造り出していたが、樹ではどうしても強度が落ちてしまう。徐々に金属から杖を造り出す技術も進歩し、今では樹で造られることは殆どない。


「…………これいくら?」


「おいおい、そんなの買う気か? 他にもっといい杖はたくさんあるぜ」


「これがいい」


 樹の杖を買おうとするブレアに店主は他の杖を勧める。店主の勧める杖はかなり高額なものが多く、その実あまり実戦で使えない様なものばかりだ。


 勧める中にはそれなりの杖もあったが、ブレアは樹の杖を譲らなかった。あまりの根気強さに店主は諦め、樹の杖を格安で売った。






「やっぱり…………世界樹の枝だ」


 手に持ってからずっと観察していたブレアは、店の外に出たところで樹の素材を特定した。


「そんなに凄いものなのか?」


「凄いなんてものじゃない。現在では決して手に入れることの出来ない貴重な素材。紋章術士にとって最高の杖だよ」


 口調はいつもと変わらない様に思えるが、その表情は興奮しているのが分かるほど喜んでいる。




 世界樹――――今では世界に数本しか存在しないと言われる巨大な樹。街一つほどの大きさを誇り、大量のマナを含んでいる。世界樹の枝から造られた杖は紋章術士にとっては最高級品で、お金をいくら積んで手に入らないほどだ。現在では世界樹を傷つけることは国から禁止されている為、新しく杖を作ることはできない。




 どこの誰が売り払ったのか分からないが、ブレアにとっては最高に運がいい。


「だけど、宝玉が無いぞ」


 スレッドが杖の先を指さして指摘する。


 紋章術士の杖は紋章術を補助するためのものであり、杖の先に取り付けられた宝玉がその機能を担っている。それが無ければ、ただの棒だ。


 ブレアが持っている杖の先には宝玉が付いていない。ついてあった形跡はあるが、何も無かった。


「代用品を探さなきゃ…………」


 大事そうに抱えて歩いていると、横から声を掛けられた。


「そこのお二人さん、アクセサリーなどはいかがかい?」


 声のする方に視線を向けると、髭を生やした老人が路上でアクセサリーを売っていた。指輪やネックレス、宝石などが拡げられていた。


 いつもなら無視するところだが、気分の良いブレアはしゃがみ込んでアクセサリーを眺め始めた。


「これって…………」


 アクセサリーを眺めていたブレアは、並んでいる宝石の中から一つを手に取った。その宝石は中に紋章が刻まれており、その大きさからブレアの持っている杖にぴったりの大きさだ。


 老人に許可を貰い、杖に宝石を取り付ける。宝石はぴったり嵌まり、杖が完成した。


「これが欲しい」


「銀貨5枚だよ」


 若干高いと感じたものの、ブレアは素直にお金を払った。支払いを終えたブレアは早速杖と宝石のパスを繋げ始めた。


「…………」


「どうだい、彼女にプレゼントでも」


 一つのペンダントを手に取り、じっくりと眺めているスレッド。鮮やかな蒼色の宝石が付いており、それ以外には装飾が無いシンプルなペンダントだ。


 それでもその蒼色を見て、スレッドはそのペンダントを購入することを決めた。


 代金を支払い、ブレアがパスを繋ぎ終えたところでスレッドはペンダントをブレアに向けて放り投げた。


「わ、わわ!?」


 突然のことに慌てるブレアだが、ペンダントはしっかりとキャッチする。


「プレゼント…………だ」


「…………ありがとう」


 照れて赤い顔をそむけるスレッドに、ブレアは驚きの表情を浮かべた後笑顔でお礼を告げる。早速胸元にペンダントを着け、指で宝石を転がす。


「…………エヘヘ」


 転がすたびに綺麗な光を放つ宝石を眺めながら、ブレアは頬を緩ませていた。



…………上手く書けてたらいいな(-.-)


今回の話はブレア派の方からの感想をいただいてからの

執筆でしたので、かなり悩んでからの更新です。

楽しんでくれたらうれしいです。


しかし、派閥があることを初めて知りました。

それだけ皆さんが読んでくれているのだと

勘違いしておきます(←うぬぼれ)


次回の話ですが、次話の最初のあたりは

ブレアとのデートの続きになります。

本来でしたらこの話数に収めるつもりでしたが、

その部分を収めたら結構な量になるので

次に持ち越しました。


次はもう少し早く更新したいな……(-_-;)

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