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格闘家な紋章術士  作者: 愉快な魔法使い
第六章「世界会議」編
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第百八話「世界会議 下」


「それでは、会議を再開しよう」


 約15分の休憩が終了し、会議が再開された。先ほどまでの張り詰めた空気と熱気は無くなっているのを確認し、リカルドは会議を進行していった。


「現在封印の破壊が確認されているのはアーセル王国とリディア共和国の二か所。残りはバルゼンド帝国とハイロウの二つのみ」


「この二つを護ること。これが今の最優先事項だ」


「しかし、重要なものであるのに、破壊されてしまったんですね」


 リカルドとエリュディオの説明にバルザックは皮肉を言う。


 確かに魔王を封印ならば、そう簡単に破壊されてはいけない。だが、こう短期間で二つも破壊されたのは、これまでの対策がなっていなかったと思われても仕方ない。


「厳重に保管されており、本来なら魔族は入ることの出来ない結界のある場所に安置されていたのだ」


「ならば、なぜそうなったのだ?」


「封印を持ち出したのが、人間だからだ」


 封印の安置されている場所は魔族が入ることの出来ない結界であっても、人間とっては簡単に入ることの出来る場所である。盗賊などが侵入し、芸術品と勘違いして持ち出し、売り払ってしまったのだ。


「封印とはどのような物なのですか?」


「戦神アルサムをモチーフにした石像だ。石像自体は簡単に破壊されてしまう物だが、バルゼンド帝国に安置されている封印に関しては心配する必要はない」


「なぜです?」


「ある冒険者達によって厳重に封印され、場所も安置されていた場所から移動しているからだ」


 バルゼンド帝国にあった封印は、古代の遺跡に安置されていた。それをある冒険者が更に封印を施し、遺跡内の地面へと埋めた。これでそう簡単に見つけることが出来ない。


 そうなれば、後はハイロウに安置されているはずの石像を護るだけだ。


「君らはまず封印が何処にあるのかを探索してくれ。石像の封印に関してはギルドで行なおう。二人とも、協力して行なってくれ」


『…………分かった』


 協力という言葉を聞き、二人は不承不承で了解した。その拗ねている子どもの様な姿にミラは苦笑していた。






「最後にだが…………私は魔王領の調査を行なうべきである、と考えている」


『ッ!?』


 エリュディオの言葉にリカルド以外の全員が息を飲んだ。まさかの提案に誰もが驚愕している。



 魔王領――――大陸の南方に広がる暗黒の大地であり、大量の魔力に覆われた森が広がっている。強力な魔物が生息し、誤って入り込んでしまった者は、決して生きて帰ることが出来ないと言われている。

 その昔、各国が魔王領を開拓しようと軍隊を派遣したが、誰一人帰ってくることはなかった。その後大量の魔物が人間の住む大地を襲撃した。多くの人が殺され、大地が荒らされた。

 各国はその教訓を元に、魔王領への不可侵を決定し、今でも魔王領への侵入は禁止されている。



 今まで護られてきた魔王領への侵入を行なおうと大国の王が提案したのだ。驚かずにはいられなかった。


 誰もが言葉を失う中、エリュディオは話しを進めていく。


「我々は魔族という種族の情報を持ち合わせていない。存在は確認しているが、詳しいことを知らないのが現状だ。この様な状態では対策など取りようが無い」


「しかし、危険ではないでしょうか!!」


「過去の事例をお忘れですか?」


 エリュディオの説明にジョアンとバルザックが反対を表明する。そう簡単に賛成できる事案ではないのだ。


「危険は確かだ。だが、危険だからといって足を止めるわけにはいかない。足を止めることは、滅亡へ向かうのと同義だ」


『…………』


 エリュディオの言葉に誰もが考えさせられる。


 考えなかったわけではない。いつかは魔王領への侵入を各国が考えていた。危険な場所ではあるが、豊富な資源が眠っているはずだ。


 しかし、今すぐというわけではない。


「調査は軍隊を編成して行なうのですか?」


 バルザックは戸惑いながらも、調査の内容などを質問する。


 各国が軍隊を派遣して、一度失敗しているのだ。同じような失敗をするわけにはいかない。調査を行なうにしても、どうしても慎重にならざるを得ない。


「調査に関してはギルドが担当させていただきます」


「騎士団は調査などの作業には向いていない。それならば少数で、冒険者を派遣するべきだろう」


 リカルドが答えたことを補足するようにエリュディオが理由を語る。


 騎士団は集団の行動に実力を発揮するが、少数での調査などには向いていない。対してギルドに所属する冒険者の中には魔物に精通した者もいる。また、少数のパーティで行動する冒険者の方が調査には向いているだろう。


「軍隊を派遣するよりはリスクは少ないだろう」


「…………それならば」


「構わないんじゃないかい」


「問題ありませんね」


「好きにすりゃあいい」


 説明を聞き、全員が賛成を示した。簡単に決定したように見えるが、元々は全員が考えていた事である。リスクが少ないならば、試してみる価値がある。


「では、皆さま賛成ということで話しを進めさせていただきます」


 こうして、魔王領の調査が決定した。






「最後に派遣する冒険者ですが、私から推薦させていただきたい者達がおります」


 詳細を詰め、最後に派遣する冒険者について話し合うことになった。基本的にはギルドマスターであるリカルドが決めることになっているが、推薦したい冒険者がいればここで推薦し、後ほどリカルドが審査することになった。


「ランクはBでありますが、実力は確かです」


「それなら僕も推薦したい者達がいます。おそらく、リカルド殿と同じ人物でしょうが」


「なら、あたいも推薦するよ。二人の推薦者を」


 リカルドの推薦者にジョアンとミラも推薦する。リカルドが推薦した人物が誰であるのか分かったのだろう。


 派遣する冒険者も決定し、数ヵ月後魔王領の調査が行なわれることとなった。



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