表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
格闘家な紋章術士  作者: 愉快な魔法使い
第五章「魔女の試練」編
102/202

第百話「模擬戦その2」


 気絶したミズハを小屋に運んだ後、再び外で向かい合ったブレアとカロリーナ。


 ブレアは既に『魔女の眼』を発動させている。


 カロリーナはブレアの眼に対して特に何も言わなかった。

 誰もが忌避する『魔女の眼』だが、カロリーナにとってはマナが見えるだけの眼でしかない。恐れる必要が何一つない。


「遠慮はいらない。本気で来な」


「分かった」


 二人とも紋章術師として一流だ。その二人が本気を出せば、周囲一帯が破壊尽くされるだろう。


 しかし、手加減は一切しない。それでは模擬戦の意味が無い。

 ブレアが本気で訓練できる紋章術師などそういるものではない。相手を出来そうな者は高ランクの冒険者や宮廷紋章術師ぐらいだ。


 カロリーナほどの紋章術師と戦える機会などそうそうない。


「この辺りの時空間は歪めてるから、どれだけ暴れても大丈夫だよ」


 気がつくと、周囲に異変を感じた。先ほどまでと全く風景が変わらないのに、生き物の気配が全くしない。


 カロリーナの紋章術によって周囲一帯の空間を歪めた。歪めたことにより時間と空間が固着し、いくら暴れても問題なくなった。


「それもフォルスの理論?」


「ああ。あいつの実力はそれほどでもなかったけど、理論は国の研究者すらも唸らせるものがあった。全ては教えてもらえなかったが、幾つかを教えさせたよ」


「…………力づくで?」


「よく分かってるじゃないか」


 ニヤリと笑みを浮かべるカロリーナにブレアは溜息を洩らした。






 模擬戦が開始された。


「ロックニードル」


 カロリーナが作り出した石の槍がブレアを全方向から襲いかかる。鋭い槍は直撃すれば命の危険がある。


 しかし、カロリーナにとってはこの程度小手調べだ。


「ウィンド」


 対するブレアは身体の周りに風を生み出し、襲いかかる石の槍を巻き上げて槍を破壊する。破壊された槍は粉々になって地面に落ちていく。


 風を発生させたブレアはその風を操作し、空気を圧縮させていく。圧縮された空気は直径10センチほどの大きさになり、カロリーナに向けて発射した。


「ミズハにも言ったけどね、単純な攻撃じゃあ…………」


「ブレイク」


「!?」


 軽く横に回避しようと移動した瞬間、圧縮された空気が四方八方に飛び散る。小さな見えない塊がカロリーナに襲いかかる。


 驚きはしたものの、カロリーナは余裕で対応していく。

 幾つもの紋章を展開し、飛んできた空気の塊が紋章に接触した瞬間爆発し、空気が霧散した。


 ブレアもカロリーナなら問題なく対応できるだろうと、驚くことなく次を考える。


(下位じゃ直ぐに対応されちゃう)


 自身に強化の紋章術を発動させ、一旦後方へと下がる。


「次は何を見せてくれるんだい?」


 後ろに下がったブレアを追わず、何をしてくれるのかと期待しながら待っているカロリーナ。

 その姿には強者の風格が漂っている。


 そんなカロリーナの期待に応えるために、ブレアは時間を掛けて紋章を構築させていく。

 ブレアの正面に二つの大きな紋章が浮かび上がり、紋章が光り輝いていく。次に紋章をカロリーナに向けて一直線になる様配置する。


「…………」


 紋章を完成させても、すぐに発動できるものではない。魔力が込められていなければ、単なる文字と円でしかない。


 巨大な紋章に魔力を込め、マナと混ざり合わせていく。


 明らかな隙だが、カロリーナは動かない。確かにここで動けばブレアを簡単に倒せるだろう。実際の戦闘であってもこの様な隙を敵が放っておくわけがない。


 それでもカロリーナは動かない。これは模擬戦だ。ブレアの実力を見るためには、紋章が完成するのが一番だ。


「…………行く」


「来な。あんたの実力を見せてみなさい」


 紋章が完成し、ブレアは小さく呟く。声は小さいが、その瞳にはしっかりとした意志が込められている。


 ブレアの意志を感じ取ったカロリーナは、紋章を待機状態で展開する。


「…………ブラスト・トルネード」


 手前の紋章から強力な竜巻が発生し、竜巻は二つ目の紋章に触れた。二つ目の紋章に触れた瞬間に炎が発生し、竜巻に巻き込まれ炎が拡散していく。強力な風と炎がカロリーナに向かう。


 広範囲に広がっている為、回避するのは難しい。これならダメージを与えられるだろう。ブレアはそう思っていた。


 だが、ブレアの考えは甘かった。


「…………やった?」


「やっぱり、甘いね」


「!?」


 荒れた視界が一気に晴れる。そこには埃一つ付いていないカロリーナの姿があった。






 迫りくる風と炎。このままでは鋭い風に斬り裂かれ、熱い炎に身体を焼かれるだろう。


 ブレアの放った紋章術を解析する。式を頭の中に思い浮かべ、紋章術を無効化させるための紋章を組み上げる。


 空中に組み上げた紋章を展開し、右手を横に振る。瞬間無効化させる紋章が風と炎をかき消す。


 視界が晴れた先には、呆然と油断しているブレアの姿があった。


「やっぱり、甘いね」






 一瞬の隙。それさえあれば、超一流の術師にとって充分な時間だった。


 頭の中で組み上げていた紋章を瞬時に消し去り、下位の紋章を組み上げる。頭の中で組み上げた紋章は次の瞬間には形となり、ブレアが体勢を整えない内に紋章術が発動した。


 光の矢がブレアに直撃した。


「きゃあ!!」


 怪我をさせないように改良された光の紋章術だが、それでも衝撃は与えられる。


「上位の、強力な紋章術だけが戦術じゃないんだよ」


 そう言って次々と下位の紋章を放つ。シングルアクションで放つことの出来る下位の紋章術のスピードにブレアは紋章を展開することが出来ない。


 いつものブレアなら、カロリーナのスピードに対応することが出来る。


 しかし、先ほどの紋章術が無効化され、動揺しているブレアはで対応できない。それでも慌てて下位の紋章を展開させていく。


 そうこうしているうちにブレアは手に持っていた杖を弾き飛ばされ、多数の光の矢に倒された。


「こりゃあ、二人とも特訓が必要だね」


 派手な紋章合戦になると思われたブレアとカロリーナの模擬戦だが、勝敗はあっさりしたものに終わった。



さて、以前募集した企画のリクエストですが、

もう少し募集期間を延ばそうと思います。

とりあえずこの章が終了するまでにして、

第五章が終わった次話にリクエスト企画をしようと思います。


皆様の意見をお待ちしております<(_ _)>

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ