第九十八話「試練」
話数的には第九十八話ですが、
全ての話数を合わせると百話に到達しました!!
まさかここまでこれるとは…………。
これも応援してくださる皆さんのおかげです。
あとがきにお知らせがありますので、
出来ましたらあとがきもお読みください。
それでは本編をお楽しみください。
「お姉ちゃん達、ありがとう!!」
「気をつけてね」
「無くさない様に」
街に戻り、待っていたララに「コロムの葉」を渡した。「コロムの葉」は特殊な薬草であり、摘み取った瞬間から急激に枯れていってしまう。
そこで特殊な瓶に「コロムの葉」を入れ、ファイラル山で拾った真っ赤な鉱石を入れる。こうすることで火山と同等に近い環境を生み出すことが出来る。
瓶のまま持っていき、瓶から出したらすぐに調合しなければならない。
二人はララに説明し、ララは嬉しそうに走り去っていった。転ばないかと後ろ姿を心配そうに二人は見つめていた。
「ふりだし、かな」
「もう一度、頑張ろう」
二人の手元に「コロムの葉」は無くなった。
ララに渡したことを後悔はしていない。ララが笑顔になり、ララの父が回復することは喜ばしい。
たとえララを無視して、スレッドを回復させてもスレッドは喜ばないだろう。それ以上に二人の心が納得しない。
困っている人を助けること。それが冒険者のあり方だ。
「一度カロリーナのところに戻ろう」
「どうしてだ? ファイラル山に戻らないのか?」
「多分、あの山にはもう無いと思う」
ブレアの説明によると、「コロムの葉」は辺り一帯の栄養を一枚の葉に集約させる。そうすることで薬としての材料になる。
その為、これ以上探しても意味が無いのだ。
「カロリーナなら、他にある場所を知っているかもしれない」
「仕方ないな。一旦戻ろう」
軽く肩を落とし、仕方なく二人はカロリーナの元へと戻ることにした。
「その顔を見る限り、空振りだったようだね」
カロリーナの家に入った二人の顔を見て、結果が駄目だった事を察した。直球な言葉にミズハとブレアの胸に突き刺さった。
さらに落ち込みながら、二人は椅子に座った。そこにカロリーナが紋章術でお茶を運ぶ。
「で、どうだったんだい?」
「…………実は」
ニヤニヤ笑いながらカロリーナが尋ねる。それに対してミズハがファイラル山での出来事を話していく。
ララとの出会い。サラマンダーとの戦い。「コロムの葉」と紋章武器の発見。そして、「コロムの葉」をララに渡したこと。
「コロムの葉」は手に入らなかったが、ミズハはララに上げたことを後悔していなかった。それはミズハの表情に表れていた。
ちなみに、ブレアは途中で出されたお菓子を貪っていた。
「なるほどね」
「それで、カロリーナなら他に『コロムの葉』がある場所を知っていないかと思って戻ってきたんだ」
「モグモグ…………知ってる?」
口に物を入れながら話すブレアに呆れながらも、話を進めるために注意はしない。
しばらくの間沈黙が続く。お互いの視線が交わる。
「一つ聞いても良いかい?」
「ああ」
「その少女に渡したこと、本当に後悔していないかい?」
カロリーナが質問する。「コロムの葉」を渡したことを本当に後悔していないか、と。
たとえ少女との約束だとしても、ミズハ達にとっても時間が無いのだ。相手を気遣っている暇などないはずだ。
それでも二人はララに「コロムの葉」を渡した。
「確かにその少女のことは可哀想だが、スレッドのことは良いのかい?」
「…………全く後悔していないと言えば嘘になるかもしれない。確かにあの一枚さえあれば、スレッドを助けることが出来たかもしれない」
そこまで言って、ミズハは一息おいた。そして、顔を上げて、真っ直ぐにカロリーナの目を見つめた。
「だけど、あれで良かったと思っている。人を踏みにじって手に入れる幸せなんて私達は納得できないし、それで助かるスレッドも納得しないと思う。これで良かったんだ」
「ふーん…………ブレア、あんたは?」
「私達は冒険者。困っている人を助けるのは当たり前」
胸を張る様に答えるブレア。その姿はどこか微笑ましく見えてしまう。
「…………いいだろう。合格だ」
二人の答えを聞いたカロリーナは指を鳴らし、部屋の奥からある人物を呼んだ。
「!? 君は!!」
「ララ?」
部屋の奥から現れたのは、数日前に分かれた筈のララの姿だった。ララの手には「コロムの葉」の入った瓶が握られている。
「こういうことさ」
再び指を鳴らすと、ララの姿が煙となって消えた。その後には小さな紅い宝石だけが地面に転がっていた。
「あんた達の冒険者としての資質を試させて貰った。騙す様な真似をして悪かったね」
カロリーナの言葉に二人の視線は厳しくなる。しかし、文句は言わない。
確かにカロリーナの行なったことは二人を騙したことになる。ララを産み出して二人を試さなければ、スムーズに「コロムの葉」を入手できただろう。
だが、薬を作るのはカロリーナだ。彼女には条件を出す権利がある。
それ故にあまり文句を言えないのだ。
「そんなに睨まないでおくれ。試したことは悪かったが、あんた達が冒険者として必要な資質をちゃんと持っていることが分かった。それさえ分かれば、私も全力を上げて治療を行なうよ」
「…………分かった」
「一応許す」
不承不承でカロリーナを許す。いつまでも怒っていても仕方が無い。
スレッドを治療する手筈が整ったのだ。これで大切な仲間に再び会うことが出来るのだ。喜びが込み上げてきた。
ここでお知らせがあります。
この話数で全百話に到達し、第百話に達するまで後二話。
そこで第百話までに企画のリクエストを受け付けます。
人気ランキングや過去話など、作者が実現できそうなものに限ります。
企画が決まってもすぐに出来るとは限りませんが、
頑張りますので適度にリクエストを送ってください(笑)