♯03 挫折
―――放課後。
部活中に絵里香からメールが来た。
“今日はミキとふたりでやる。みんなは図書館から見張っといて。”
6人でのリンチ行為はさすがに目立つとおもったらしい。
まぁ、4人の時も十分目立ってたけど・・
杏奈は塾で帰ったみたいだし・・・
見張りチームはあたしと麗奈、それから加奈。
上手くいけば加奈からいろいろ聞き出せるかもしれないな。
絵里香グループでの杏奈と加奈は、絵里香と美紀ほど結束は強くない。
切り崩すならまずこの二人からだ。
といっても、杏奈はなんか大人っぽいし自立していてつかみどころが無い。
ねらうなら加奈。
今日は最高の状況だ。
加奈はグループ新加入のあたしと麗奈を信用しているみたいだし。
あたしと麗奈は部活が終わるとすぐに図書館に向かった。
「ユキ! レイナ! おそかったねー もう絵里香がつれてきてるよ!」
やっぱりこれは信用しているな。
さっそく聞き出してやろう。
っていうかあの子・・・・
『アユミじゃん!!』
「そーなのー サイコーじゃない?? 今日は二本立てだからながくなるよ~。」
今日の被害者はクラスメイトの歩。
正直、ちょっと安心した。
歩はうちのクラスでは絵里香たちと同じく不良グループみたいなかんじだ。
ただ、グループは違うけど・・・
入学当初から絵里香と歩は仲が悪かった。歩は人のコンプレックスを取り上げて馬鹿にしたり、ホームルームなんかの時も自分勝手で絵里香だけでなくあたしも疎ましく思っていたくらいだ。
あたしが入学お祝いテストの数学で36点をとった事をクラス中に言いふらされたときは、あたしが殴ってやりたい気分だった。
勝手にやってくれ・・
そんな感じ。歩がどうなろうが
知ったことじゃない。
あたしにとっては暴力団同士の抗争のようなもんだ。
心配事がひとつなくなった。
予定どおり加奈からなにか聞き出してみよう。
『カナさぁ・・・・ 』
「エリカってさぁ、美紀ばっかりだよね。」
『えっ?』
急に言葉を遮られて驚いた。
「ほら・・今日だってうちと杏奈は外されたわけだしさ。ぶっちゃけギャラもほとんどあの二人で分けてんだよ。」
『はい? ギャラ?・・ ねぇそれってどういうこと?』
「あれ・・ エリカに聞いてなかった? うち等がぼこった奴に繁華街で身体売らせてんだよ。それで店に引き渡すときに金もらってんの。」
はぁぁ!!?
なんだそれは。
イジメなんかじゃない。
犯罪だ。
「でも払い悪くってさぁ。店の奴も組関係だから強く言えないし・・・ エリカは自分の男だから我がままいえるんだろうけどさー。」
急にあたしの中で絵里香に対する恐怖心がむくむくと膨れ上がってきた。
絵里香は売春をさせている。
それもクラスメイトに!
絵里香たちの暴行が終わり、歩は男に連れて行かれた。
無理だ。
そんなことする奴相手にできない。
昼休みにあたしに芽生えていた正義感は音を立てて崩れ去っていく。
芽衣子ごめん・・・
助けられない。
次は美紀が二人目のターゲットを連れてくる。
「あっ!! 来た。二人目だ。男子だよ!」
その二人目の被害者の顔はあたしの気持ちをどん底に突き落とした。
『雄希・・・・・・・・』
To be continued