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【推理〔文芸〕21位】霧都ヴァル・ロンドリア探偵事件簿ー怪物に戸籍のある街で  作者: 虫松
汚職

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第9話 銀のナイフの謎

ロウニン政治事務所。執務室。


連行されたサイファーの足音が廊下の奥へ消えていく。


静寂。


ガルム警部補が証拠袋を机に置く。


中には


銀のナイフ。


ガルム警部補

「もう一つある」


低い声。


「このナイフの出所だ」


オズワルド

「普通の刃物じゃないですよね」


アレクシスは袋越しに見る。


アレクシス

「純銀合金」


「対人狼用の武器だ」


ミレイアが小さく言う。


「怪人狩りの道具…」


ガルム警部補が書類を取り出す。


「調べた」


「このナイフ」


「市内の特殊武器店で購入されている」


オズワルド

「誰が?」


ガルム警部補


紙を机に置く。


購入名義:大学研究機関


オズワルド

「研究機関?」


ガルム警部補

「研究責任者」


ゆっくり言う。


「ドクター・ハロルド」


部屋が静かになる。


ハロルドは壁にもたれたまま

笑っている。


ハロルド

「それが何か?」


ガルム警部補

「説明してもらおうか」


ハロルドは歩く。


机に近づく。


銀ナイフを見る。


指で袋を軽く叩く。


ハロルド

「私は科学者だ」


「怪人の研究もしている」


「弱点を知るのは当然だろう」


オズワルド

「じゃあ」


「このナイフも?」


ハロルド


軽く頷く。


「研究用だ」


「人狼の生体反応を調べる」


アレクシス


「嘘だな」


ハロルドが笑う。


アレクシスは机の書類を見る。


一枚の紙。


それを持ち上げる。


アレクシス

「これは」


「君がサイファーに渡した資料だ」


オズワルド

「え?」


アレクシスが読む。


■ハロルドの資料


・ロウニンの献金記録

・怪人教との資金関係

・密会日時

・政治取引の内容


オズワルド

「完全な告発資料じゃないですか!」


ハロルド


肩をすくめる。


「真実だ」


アレクシス


「さらに」


もう一枚の紙。


武器研究資料。


■対怪人武器研究


対象:人狼


有効武器

・純銀刃物

・銀弾

・銀毒


備考

市販の銀ナイフでも致命傷可能


オズワルド


「これ…!」


アレクシス


「つまり」


静かな声。


「サイファーは」


「ロウニンの裏切りを知る」


「そして」


銀ナイフを見る。


「殺す手段も知った」


ガルムが低く言う。


「全部」


「揃っていた」


ハロルドは笑う。


「私は」


「真実を教えただけだ」


「それだけ」


アレクシス


「そして」


「ナイフの存在も」


ハロルド


「さあ」


軽く笑う。


「研究室には」


「いくらでもある」


オズワルド


「あなたが仕組んだんだ!」


ハロルドの目が細くなる。


「仕組む?いい得て妙だが、

当たっては、いるかも知れんな。」


アレクシスはまだ知らない

猿人サイファーの殺人行為は

ドクター・ハロルドの催眠術による

殺人誘導だったことを


くすくす笑う。


「違う」


窓の外を見る。

白亜党の群衆。


「私は」


「火をつけただけだ」


静かな声。


「燃えたのは」


「社会のほうだ」


アレクシスが言う。


「最低だな」


ハロルドは楽しそうに笑う。


「いや」


「最高だ」


群衆の声。


「怪人排除!」

「怪人排除!」

「怪人排除!」


ハロルドが呟く。


「銀のナイフ」

「少女の正義」

「政治家の嘘」


目を閉じる。


「美しい実験結果だった」


そして

ゆっくり言う。


挿絵(By みてみん)


「この街の分断は、完全に始まった」


霧都ヴァル・ロンドリア。

霧の奥で

もっと大きな事件が動き始めていた。



『汚職』事件 終幕



つづく

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