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【推理〔文芸〕21位】霧都ヴァル・ロンドリア探偵事件簿ー怪物に戸籍のある街で  作者: 虫松
汚職

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第1話 人狼政治家の依頼

霧都ヴァル・ロンドリア。


この街では吸血鬼が銀行を経営しゴーレムが港湾労働を担い

人狼が警備隊を務める。


怪物たちはもはや伝説ではない。


社会の一部だ。

だが今、議会では激しい対立が起きていた。


怪物たちに市民権を認めるかどうか。

その法案を強く推進していたのが


人狼議員

ルーカス・フェンリルだった。


彼は言った。


「我々は怪物ではない」


「この街の住民だ」


星霧探偵事務所に


一台の高級な黒い馬車が止まる。


扉が開く。


現れたのは

人狼の政治家 ロウニン。


背は高く

灰色の髪。

柔らかい笑み。

丁寧な礼をする。


ロウニン

「夜分失礼します。わたくし政治家 ロウニンと申します。」

落ち着いた声。


物腰は低い。

威圧感はない。

政治家特有の

相手の懐に入る話し方。


彼は静かに言う。

「探偵 アレクシス・グレイヴン さんですね」


アレクシスは椅子に座ったまま答える。


「依頼ですか」


ロウニンは微笑む。


「ええ」

「この街の未来に関わる話です」


ミレイアはロウニンを見る。


その笑顔。

優しい声。

温和な態度。


まるで

理想の政治家。


ロウニンは続ける。


「最近」

「ある政党が急速に議席を増やしています」


彼は紙を机に置く。


白亜党


ロウニン

「表向きは移民反対」


「ですが」


声が少し低くなる。


「彼らの本当の思想は」

「怪人排除です」


沈黙。


ロウニン

「吸血鬼 悪魔 影人」

「人狼 魔女 魔人」

「猿人 人魚 その他 少数の獣人」


「この街の怪人たちを」

「消し去ろうとしている」


ミレイアは眉をひそめる。


ロウニン

「私は議会で彼らと戦うつもりです」

「ですが」

「証拠が必要だ」


彼はアレクシスを見る。

「白亜党に潜入してほしい」


「内部の実態を調べていただきたい」


アレクシス

「政治の仕事を探偵に?」


ロウニンは苦笑する。

「政治家には政治家の敵が多い」

「私が動けば警戒される」

「ですが」

「探偵なら」


静かに言う。

「真実に近づける」


ミレイアはずっとロウニンを見ている。

彼の笑顔。

礼儀正しさ。

柔らかい話術。


しかし。

彼女の胸に

微かな違和感。


ミレイア

「……」


ロウニンはさらに言う。

「白亜党の幹部の一人に」

「ある人物がいます」


資料を机に置く。

そこに書かれている名前。


ドクター・ハロルド

アレクシスの目がわずかに動く。


ロウニン

「思想家で天才科学者」

「最近は白亜党の政策顧問になっています」


「危険な人物だ」


ミレイアはその時

はっきり感じる。


ロウニンの心。

表面は

穏やか。

理性的。

誠実。


だがその奥に

暗い感情。

不安。

恐れ。


そして

隠している何か。


ミレイア

「……」


ロウニンは優しく微笑む。

まるで

いい人を演じる政治家。


言葉は丁寧。

態度は穏やか。

相手を安心させる。


だが

ミレイアにはわかる。


その心の奥に

小さな闇がある。


アレクシスは静かに言う。

「依頼は受けます」


ロウニンは頭を下げる。

「助かります」


帰り際。


ロウニンは振り返る。

「この街を守りたいのです」

「怪人も人間も」

「共に生きる街を」


扉が閉まる。

静かな事務所。


ミレイアは小さく言う。

「アレクシス」

「ロウニンさん」

「いい人に見える」


アレクシス

「見える?」


ミレイア

少し考えて言う。

「でも」

「心の奥に」

「黒いものがあった」


アレクシスは窓の外の霧を見る。

「政治家だ」

「闇のない政治家は存在しない」


ミレイア

「……」


遠くの街では白亜党のデモ。

その中心で静かに笑う男。


ドクター・ハロルド。


次の戦いの事件はすでに始まっていた。

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