第7話 盤上での推理
夜。
星霧探偵事務所。
応接間。
燭台の炎が、静かに揺れている。
中央の卓上にはチェス盤。
白と黒が、整然と並ぶ。
アレクシスは静かに駒を並べていた。
オズワルド
「ついに犯人がわかったんですね」
ミレイア
「……」
アレクシス
「まだ推理の最終段階だ」
指で♚キングを叩く。
♚ キング
アレクシス
「ヴァル・オペラ劇場」
巨大な舞台。
回転舞台。
昇降機。
霧装置。
血液装置。
アレクシス
「この事件の盤面だ」
アレクシスは駒を一気に置く。
♕ クイーン
♖ ルーク
♞ ナイト
■ ボーン
✚ ビジョップ
オズワルド
「全部出ましたね」
アレクシス
「では」
「動かす」
まずポーン。
■ エリザ・フェルナン
アレクシス
■ポーンを前に出す。
「衣装デザイナー」
「舞台装置には触れない。衣装の着せ替え演劇者との目撃証言が多数あり。」
ポーンが倒れる。
「犯行不可能!」
♖ ヘンリー・ヴァイス
アレクシス
♖ルークを盤の端に置く。
「舞台機械主任技師」
「劇場の機械はすべて彼の管轄」
オズワルド
「回転舞台」
ミレイア
「昇降機」
アレクシス
「血液装置」
♖ルークが横に動く。
アレクシス
「つまり」
「装置を触っても怪しまれない人物」
オズワルド
「演出ですね」
アレクシス
「その通り」
アレクシス
さらに♖ルーク駒を進める。
「舞台装置を改造する能力」
「これも満たしている」
ミレイア
「技師ですから」
オズワルド
「むしろ一番できる」
アレクシス
「だが」
♖ルークを止める。
「ここで次の条件だ」
紙に書く。
舞台演劇中に自由に動ける人物
オズワルド
「ヘンリーも動けるのでは?」
アレクシス
「いや」
♖ルークを機械室に置く。
「主任技師は」
「操作席に張り付く」
「犯行不可能!」
■ ヴィクトル・ハイド
■ポーンが前へ。
アレクシス
「劇団マネジャー」
「舞台機械には関与しない。演劇中に舞台に出入りしない。」
ポーンが倒れる。
「犯行不可能!」
♞ アルベルト・カリーニ
♞ナイトが跳ねる。
アレクシス
「スター歌手」
「舞台中央に立つ演技者」
「だが」
「機械装置には触れない」
ナイトが倒れる。
「犯行不可能!」
♞ ユリウス・カール
♞ナイトが跳ぶ。
アレクシス
「指揮者」
「音楽の人間」
「だが」
「舞台裏を歩き回る立場ではない。指揮者として舞台の下で待機」
♞ナイトが倒れる。
「犯行不可能!」
残る駒。
♕ 伯爵
♖ 舞台監督
✚ 作曲家
ミレイア
「残りは、三人」
アレクシス
「ここからが重要だ」
駒を大胆に動かす。
♕ ヴァルド・ドラクロワ伯爵
♕クイーンが大きく動く。
アレクシス
「劇場スポンサー」
「だが」
「舞台裏で装置を触る理由がない」
「また複数の人から席に座っていたとの目撃証言がある。」
♕ クイーンが盤外へ。
「犯行不可能!」
残る二つ。
♖ ルーク
✚ ビショップ
オズワルド
「舞台監督と作曲家」
アレクシス
「次の条件」
紙に書く。
舞台演劇中に自由に動ける人物
♖ クラウディア・ノクト
♖ルークが動く。
アレクシス
「舞台監督で確かに動ける」
ミレイア
「でも」
「吸血鬼です」
アレクシス
「そう、その通り。」
♖ルークが止まる。
「吸血鬼排斥組織に入る理由がない」
ルークが倒れる。
「動機が不十分」
盤上に残る駒。
✚ ビショップ
ルシアン・ヴァレンティ。
オズワルド
「作曲家の先生」
アレクシス
✚ ビショップを斜めに動かす。
「ビショップは斜めに進む」
「遠回りの動き」
✚駒が盤を横断する。
アレクシス
「舞台演劇中」
「音楽は常に流れている」
「作曲家は」
「舞台裏を歩き」
「演出と音を確認する」
ミレイア
「怪しまれない」
アレクシス
「さらに」
駒を進める。
✚ビション → ♞ナイト → ♖ルーク → 客席
「この殺人は」
「音を使ったトリック」
オズワルド
「注射針が刺さる瞬間」
ミレイア
「音楽のクライマックス」
アレクシス
「その瞬間に」
「椅子の装置が作動する」
静かに言う。
「音を理解し」
「舞台装置のタイミングを把握できる人物」
駒がキングへ迫る。
✚ルーク → ♚キングへ移動
アレクシス
「そして」
「もう一つ」
ガルム警部補の資料を置く。
アレクシス
「新聞記者モーリス」
「彼は」
「舞台後に」
「ある人物と会う約束をしていた」
オズワルド
「組織の構成員」
ミレイア
「ヴァンパイヤーハンター革命軍」
アレクシス
ビショップをキングの前に置く。
✚ビショップ
「吸血鬼に恨みを持ち」
「舞台装置を改造でき」
「演劇中に動き回れ」
「音のトリックを理解できる」
沈黙。
アレクシス
ゆっくり言う。
「人物は」
「彼しかいない」
オズワルド
「……」
ミレイア
「……」
アレクシス
✚ ビショップで♚キングを倒す。
コトン。
アレクシスは静かに言う。
「謎は解けた」
そして
チェス盤を見つめて告げる。
「チェックメイトだ」




