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【推理〔文芸〕21位】霧都ヴァル・ロンドリア探偵事件簿ー怪物に戸籍のある街で  作者: 虫松
吸血鬼歌劇場連続殺人

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第4話 劇団員と関係者の事情聴取

観客は全員退場させられ、ヴァル・オペラ劇場は静まり返っていた。


舞台にはまだ霧が漂い、赤いカーテンが半分だけ閉じている。


観客席の中央には


白い布で覆われた死体。

その周囲で事情聴取が始まる。


客席後方。


腕を組んで立つ男。

ガルム警部補。


その隣で静かに観察しているのは

天才科学者

ハロルド・ヴァン・エーデル。


ガルム警部補が低く言う。


「……帰らないのか」


ハロルドは微笑する。


「ええ」

「彼らのやり方を見るのも面白い」



舞台裏の控室。

重い赤いカーテンの向こうで、劇場のざわめきがまだ続いている。


奥の椅子に

ガルム警部補とドクター・ハロルドが座り、静かに様子を観察している。


その前で事情聴取を行うのは星霧探偵事務所の三人。


探偵

アレクシス・グレイヴン


秘書

ミレイア・ルーンベル


弟子

オズワルド・ハーゲン


事情聴取①

ヴァルド・ドラクロワ伯爵

吸血鬼貴族。

劇場の最大スポンサー。


黒い杖をつきながら椅子に座る。


オズワルド

「いやあ、伯爵。お会いできて光栄です。僕、あなたの劇場支援の

記事を読んだことあります」


伯爵

「ほう。若者にしては教養がある」


オズワルド

「ソフィアさんをかなり高く評価していたとか?」


伯爵

「彼女は宝石のような声を持っていた」


アレクシス

「新聞記者モーリスとは対立していたそうですね」


伯爵は薄く笑う。


伯爵

「記者というのは、いつの時代も騒ぎを作る仕事だ」


ミレイアは静かに目を閉じる。


感情を読む。


怒り

だが

殺意はない


ミレイア(小声)

「敵意はありました。でも……殺すほどではありません」


ハロルドが腕を組む。


ハロルド

「合理的だな。衝動殺人の気配はない」


事情聴取②

ルシアン・ヴァレンティ

劇団専属作曲家。


穏やかな紳士。

柔らかい笑みを浮かべている。


オズワルド

「あなたがソフィアさんの曲を?」


ルシアン

「ええ。彼女の声は特別でした」


アレクシス

「舞台演出にも関わっていたそうですね」


ルシアン

「音楽と舞台は一体ですから」


ミレイアが目を閉じる。


感情を読む。


静かな湖。


だがその底に


何かが沈んでいる


ミレイア

「……」


オズワルド

「モーリスさんとは口論したとか」


ルシアンは苦笑する。


ルシアン

「芸術論ですよ。よくあることです」


ミレイアが小声で。


ミレイア

「感情が……読みにくい」


アレクシスの視線が一瞬鋭くなる。


だが何も言わない。


事情聴取③

アルベルト・カリーニ

スター歌手。


アルベルト

「俺が疑われてるのか?」


オズワルド

「いえいえ。形式的なものですよ」


アルベルト

「モーリスの野郎は最低だった」


アレクシス

「酷評記事ですか」


アルベルト

「俺の声を“衰えた英雄”だと書きやがった」


ミレイア

怒り

屈辱


だが


殺意ではない


事情聴取④

クラウディア・ノクト

舞台監督で吸血鬼。


冷静な女性。


クラウディア

「私は舞台を管理していただけです」


アレクシス

「ソフィアとは衝突していた」


クラウディア

「彼女は天才でした。だがわがままだった」


オズワルド

「舞台機械の管理は?」


クラウディア

「技師のヘンリーです」


ミレイア

疲労

苛立ち


しかし嘘はない。


事情聴取⑤

ヘンリー・ヴァイス


舞台機械主任技師。


油に汚れた作業服。


ヘンリー

「劇場の機械は全部俺の管轄だ」


オズワルド

「回転舞台も?」


ヘンリー

「もちろん」


アレクシス

「血液装置も?」


ヘンリー

「……舞台用の血だ。芝居の小道具だよ」


ミレイア

戸惑い

恐れ


だが

嘘ではない。


事情聴取⑥

エリザ・フェルナン

衣装デザイナー。


目を赤くしている。


エリザ

「ソフィアは親友だったのよ……」


オズワルド

「彼女、最近悩んでました?」


エリザ

「……舞台のことで」


ミレイア


悲しみ

喪失


純粋な感情。


事情聴取⑦

ヴィクトル・ハイド

劇団マネージャー。


ヴィクトル

「劇団の評判が台無しだ。」


アレクシス

「ソフィアと金銭トラブルが?」


ヴィクトル

「スターにはよくあることです」


ミレイア


計算

保身


だが殺意は感じない。


事情聴取⑧

ユリウス・カール指揮者。


ユリウス

「芸術家同士の衝突など日常だ」


オズワルド

「テンポの口論ですか」


ユリウス

「彼女は自由すぎた」


ミレイア


苛立ち

芸術家の誇り


しかし事件とは遠い。


事情聴取終了


全員が退室する。


控室に沈黙が落ちる。


ガルム警部補


「どうだ?」


アレクシスは窓の外を見る。


劇場の巨大な舞台。


そこにある機械。


回転舞台

昇降機

霧装置


そして血液噴射装置


アレクシス


「……妙だ」


オズワルド


「何がです?」


アレクシス


静かに言う。


「この劇場は」

「舞台装置が多すぎる」


ミレイア


「?」


アレクシス


舞台の図面を見る。

血液装置の配管。


アレクシスの瞳が鋭くなる。


「……なるほど」


オズワルド


「え?」


アレクシス


「舞台だ」

「この事件の本当の現場は」


ゆっくり言う。


「観客席ではない」


後ろでハロルドが微笑む。


ハロルド


「ようやく気づいたか」


ガルム警部補


「何にだ?」


アレクシス


舞台を指さす。


「巨大な劇場トリックです」


赤い幕が揺れる。

物語は次の推理へ進む。



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