第8話 大演説チェックメイト
夜葬ホテルのロビー。
警察の規制線の内側に、
関係者全員が並ばされていた。
・オズワルド
・リン
・キャロライン
・料理長オスカー
・フロント イリーナ
・ベルボーイ イルミ
・掃除 ゴンザレス
・愛人 ベネッサ
・銀行員 オスカー
・妻 エレナ
その中央にアレクシスが立つ。
ガルム警部補は腕を組み、
ミレイアは静かに見守る。
アレクシスはゆっくり口を開いた。
「この事件は」
「二つのトリックで構成されています」
「毒殺」
「そして」
「マジック」
ざわめきが広がる。
アレクシスは続けた。
「ガウディー・ロンソンの死因は毒」
「しかし毒はホテルでは使われていない」
ガルム警部補が補足する。
「毒は体内でかなり進行していた」
「つまり」
「ホテルに来た時点で」
「彼は、すでに死んでいた」
驚きの声が上がる。
オズワルドが思わず言う。
「じゃあ……」
「ホテルの殺人じゃない?」
アレクシスは首を振る。
「いいえ」
「これは」
「ホテルで完成する殺人です」
そして言う。
「鍵は棺桶」
ミレイアが続ける。
「棺桶は普通ではなかった」
「底が厚い」
「そして重い」
アレクシス
「二重構造です」
「マジック用の棺桶」
「人を消すための装置」
その時。
オズワルドが手を挙げた。
「ちょっといいですか!」
ガルム警部補が睨む。
「またお前か」
オズワルドは慌てて言う。
「いや大事な話です!」
そして思い出すように言った。
「俺ホテルで」
「ガウディー支配人と話しました」
その場が静まる。
オズワルドは語り始めた。
「荷物運びしてた時です」
「ガウディー支配人と」
そしてその時の会話を思い出す。
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ガウディー・ロンソン。
「準備はいいか」
低い声だった。
「今夜は特別な客がいる」
俺は軽く手を振った。
「支配人さんよ、安心しろ」
「俺の亡霊は一級品だ」
ガウディーは無表情だった。
「今夜の葬儀は最上階だ」
「棺桶はもう置いてある」
その言葉に、俺はふと疑問を口にした。
「なぁ支配人」
「一つ聞いていいか?」
ガウディーが振り向く。
「なんだ」
俺は言った。
「さっきゴンザレスと一緒に荷物運んでるとき思ったんだけどさ」
「やけに重くなかったか?」
一瞬。
ガウディーの表情が固まった。
だがすぐに言う。
「気のせいだ」
「古い棺桶だからな」
そう言って彼は去っていった。
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オズワルドが言う。
「でもあの時」
「支配人ちょっと変だったんです」
アレクシスが静かに頷く。
「ええ」
「重要な証言です」
そしてゆっくり言う。
「ただし」
「一つ訂正があります」
全員の視線が向く。
アレクシスは、銀行員オスカーを見る。
「その時」
「あなたが見た人物は」
「本物のガウディーではない」
ざわめき。
銀行員オスカーの顔が強張る。
アレクシスは続ける。
「あなたが会話した相手」
「それは」
「銀行員オスカーです」
騒然。
オズワルドが叫ぶ。
「ええ!?」
アレクシス
「ガウディーと体格が似ている」
服
帽子
暗い廊下
「遠目なら分からない」
ガルム警部補が低く言う。
「変装か」
アレクシスは頷く。
「銀行員オスカー」
「彼は過去に劇団員だった」
その場がざわめく。
ミレイアが言う。
「つまり」
「演技ができる」
アレクシス
「そう」
そしてもう一つ。
「オスカーとエレナは」
「昔の恋人だった、そして、不倫関係は今もなお続いていた。」
全員の視線がエレナに集まる。
エレナは黙っている。
アレクシスは続ける。
「計画はこうです」
「エレナは夫を毒殺した」
「自宅で」
「死体を棺桶の底の隠し部屋に入れる」
「そしてガウディーに変装した銀行員オスカーにホテルまで運ばせた」
オズワルド
「俺が運んだやつだ!」
アレクシス
「ええ」
「だから重かった」
「そして夜、エレナはマジシャンの仕掛けを発動」
「棺桶から死体を上に出す」
アレクシス
「まるで」
「棺桶から死体が現れたように見える」
ガルム警部補
「亡霊の演出か」
アレクシス
「そして銀行員オスカーは」
「ガウディーに変装解いて」
「ロビーないに戻り、ホテル内に自分が存在しているように見せた」
静寂。
アレクシスはゆっくり言う。
「共犯」
「銀行員オスカー」
「そして」
視線を向ける。
「犯人は」
「妻」
「エレナ」
沈黙。
エレナが笑った。
「……さすがね」
静かな声だった。
「全部見抜いたの?」
アレクシスは言う。
「マジックは」
「仕掛けを知れば終わりです」
エレナは目を閉じる。
「私はかつてマジシャンのスターだった」
「彼は助手」
「私が食べさせてあげた」
声が震える。
「なのに」
「愛人をつくり離婚まで要求」
「ふざけないで」
「だから」
「最期のショーをしてあげた」
「永遠の亡霊としてね」
静寂。
アレクシスは最後に言う。
「永遠の亡霊なんてものは、存在しない」
「あるのは、消えない恨みだけです」
ガルム警部補が手を上げる。
警官がエレナと銀行員オスカーを拘束した。
連行されながら
エレナは小さく言った。
「最後の一代ショーだったのに」
手錠の音が響く。
夜葬ホテルの亡霊事件は終わった。
その横で。オズワルドが震えながら言った。
「すげぇ……」
「名探偵って」
「本当にいるんだな……」




