第6話 被害者ガウディーの過去
夜葬ホテルの
亡霊祭壇の調査が続く中
扉が開き、ガルム警部補が資料の束を持って入ってきた。
「少し面白いことが分かった」
その声に、
アレクシスとミレイアが顔を上げる。
ガルムは机に資料を置いた。
「被害者」
「ガウディー・ロンソンの過去だ」
ミレイアが身を乗り出す。
資料の一枚に
古い写真が貼られていた。
舞台。
強いライト。
満員の観客席。
そして――
派手な衣装の女性マジシャン。
その隣に立つ、若い男。
ミレイアが目を細めた。
「……この人」
ガルム警部補が指で示す。
「ガウディーだ」
「昔はマジックショーに出ていた」
後ろで聞いていた
オズワルドが目を丸くする。
「マジックショー?」
ガルムは頷いた。
「ただし――」
「主役じゃない」
一拍おいて言う。
「助手だ」
ミレイアが小さく呟く。
「助手……?」
ガルムは写真の女性を指差した。
「そしてこの女性」
「妻のエレナ」
ミレイアの目が少し大きくなる。
「エレナが……?」
ガルムは続ける。
「元マジシャン」
「地方の巡業ショーを回っていたらしい」
部屋に
わずかな沈黙が落ちた。
ミレイアがゆっくり口を開く。
「ガウディーは……」
「マジシャンのエレナの助手……?」
その瞬間。
アレクシスの口元が
ほんのわずかに動いた。
「なるほど」
静かな声だった。
まるで
霧の中の何かが
形を持ち始めたような声。
その横で――
オズワルドも腕を組み
深く頷く。
「なるほど」
次の瞬間。
ガルム警部補が振り向いた。
「お前は何も分かっていないだろ」
オズワルドが固まる。
「えっ!?」
「いやその!」
「なんかこう……」
「雰囲気で!」
ガルム警部補は額を押さえた。
「雰囲気で事件を解くな」
ミレイアが小さく笑いをこらえる。
だが
その間も。
アレクシスは
写真から視線を離さなかった。
マジシャンのエレナ。
その横に立つ助手ガウディー。
そして
調査で判明した奇妙な棺桶。
重さ。
妙に厚い底。
まるで
舞台装置のような構造。
そして
オズワルドの言葉が蘇る。
「運んだ時……」
「まるで人が入ってるみたいに重かったです」
アレクシスの瞳がわずかに細くなる。
(棺桶)
(マジック)
(助手)
頭の中で
いくつもの線が
静かに結びつき始める。
だが
まだ言わない。
確証が足りない。
今はただ一つ。
アレクシスは写真を見つめながら
小さく呟いた。
「棺桶の……亡霊」
その声は
誰にも聞こえないほど
静かだった。
だがその瞳には確実に一つの仮説が生まれていた。




