表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霧都ヴァル・ロンドリア探偵事件簿ー怪物に戸籍のある街で  作者: 虫松
夜葬ホテルの亡霊

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/82

第5話 棺桶の謎

最上階

亡霊祭壇。


棺桶の周りには、警察の規制線が張られていた。


現場検証が続く中、

アレクシスはゆっくりと棺桶へ近づく。


重厚な黒い棺。


だが


何かが違う。


アレクシスは棺の側面を指で叩いた。


コン……コン……


鈍い音。


普通の棺よりも、明らかに重厚な響きだった。


ミレイアが屈み込み、底の部分を覗き込む。


「……変ですね」


「底が妙に厚いです」


警察官も覗き込む。


確かに。


通常の棺よりも板が分厚い。


ミレイアが呟いた。


「普通の棺桶じゃない」


アレクシスは静かに言う。


「まるで――」


少し間を置く。


「舞台装置だ」


その時だった。


後ろで話を聞いていたオズワルドが手を挙げた。


「……あの」


全員の視線が向く。


オズワルドは少し気まずそうに頭をかく。


「その棺桶……」


「俺、運びました」


ガルム警部補が振り向く。


「運んだ?」


「いつだ」


「昨日の夕方です」


オズワルドは思い出すように言った。


「祭壇に運べって言われて」


「ゴンザレスと一緒に運びました」


ミレイアが聞く。


「その時、どうでした?」


オズワルドは腕を組み、少し考える。


「……正直」


「めちゃくちゃ重かったです」


警察官が顔を見合わせる。


オズワルドは続ける。


「棺桶ってこんな重いのかって思いました」


「それに……」


少し声を潜める。


「変なんですよ」


アレクシスの目が細くなる。


「変?」


オズワルドは言った。


「中に……」


「人が入ってるみたいな重さだったんです」


その場が静まり返る。


ミレイアが棺桶を見つめる。


「……人?」


オズワルドは慌てて言う。


「いや、もちろん開けてないですよ!」


「でも、持ち上げた時に」


「こう……」


「ズシッって」


「重さが動く感じがして」


ガルム警部補が眉をひそめる。


「……なるほど」


アレクシスは棺桶の底をじっと見つめる。


釘の位置。


板の厚み。


そして


底の影。


アレクシスの瞳に、わずかな光が宿る。


「……」


彼は何かに気づいた。


だが。


まだ言わない。


ただ静かに棺桶を撫でながら呟く。


「面白い」


「非常に面白い棺桶だ」


夜葬ホテルの廊下を、

冷たい風が静かに通り抜けていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ