第6話 第二の殺人事件
夜の警察署。
静まり返った廊下に突然、悲鳴が響いた。
「人が倒れてる!!」
駆けつけた警官たちが凍りつく。
床に倒れている男。
胸には深く突き刺さったナイフ。
マルコ・ディアス。
警察内部監査官。
血が床を赤く染めていた。
ガルム警部補が現場に到着する。
「……クソッ」
拳を強く握る。
ミレイアが静かに言う。
「バロックさんの次は……」
「ディアスさんが次の犠牲者に」
アレクシスが遺体を見下ろす。
「内部監査官」
「警察の不正を知る立場」
ガルムが言う。
「つまり」
「口封じだ」
ディアスさんはバロックさんの調査対象の一人だった。
13年前の事件。
消された証拠。
警察幹部との繋がり。
ディアスは
何かを知っていた。
そして
殺された。
ミレイアが周囲を見る。
警察署内。
捜査員。
監視カメラ。
警備。
すべてが揃っている場所。
それでも
犯人はここで殺した。
ミレイアが低く言う。
「これ……」
「外部犯じゃない」
アレクシスが答える。
「当然だ」
「犯人は」
「警察内部にいる」
その言葉に
空気が凍りついた。
さらにミレイアが言う。
「それだけじゃない」
「犯人は」
「捜査状況を全部知ってる」
ガルムが振り向く。
「どういう意味だ」
ミレイアが説明する。
「ディアスさんが調査対象になったのは」
「昨日」
「つまり」
「犯人は。捜査情報をリアルタイムで知ってる」
ガルムの顔が険しくなる。
「内部の誰かが」
「情報を流してる」
警察署内に静かな恐怖が広がる。
誰も信用できない。
その夜。
アレクシスたちは
再びバロックのノートを調べていた。
サラがページをめくる。
「このバロックノート」
「まだ全部解けていません」
アレクシスが聞く。
「なぜそう思う」
サラが指差す。
「このページ」
そこには
普通の文章。
だが
違和感があった。
妙に
文字の間隔が不自然。
ミレイアが言う。
「これ……」
「文章じゃない?」
アレクシスがノートを近づける。
そして静かに言う。
「いや」
「暗号だ」
文字を並べ替える。
間隔を区切る。
すると
別の文章が浮かび上がる。
サラが読み上げる。
「鏡」
「見る」
「真実」
「開く」
ミレイアが驚く。
「鏡?」
その時
ガルムの言葉が蘇る。
「事件を正面から見るな」
「見方を変えろ」
アレクシスが言う。
「なるほど」
「そういうことか」
アレクシスはノートを机の上に置いた。
そして
手鏡を取り出す。
ノートの文章を
鏡に映す。
するとそこに
新しい文字が現れた。
裏文字の暗号。
サラが息を飲む。
「こんな仕掛け……」
ミレイアが読む。
そこに書かれていたのは
「裏切り者は内部にいる」
さらに
その下に
短い文章。
「信頼する者を疑え」
ガルム警部補が呟く。
「バロックさん……」
アレクシスが言う。
「彼は」
「犯人を知っていた」
ミレイアがページをめくる。
そこには
さらに
暗号。
だが
その中に
一つだけ
明確な記号があった。
名前の頭文字。
たった一文字。
警察関係者の誰かを示す文字。
ミレイアが息を飲む。
「これ……」
ガルムが低く言う。
「警察内部の裏切り者だ」
だが
まだ確信はない。
アレクシスが静かに言う。
「急ぐな」
「これは」
「まだ途中だ」
アレクシスはバロックノートを閉じた
「次の推理で」
「すべて明らかになる」
その瞬間、誰も気づいていなかった。
この警察署のどこかで
本当の犯人が彼らの動きを静かに見ていることを。




