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霧都ヴァル・ロンドリア探偵事件簿ー怪物に戸籍のある街で  作者: 虫松
苦渋の決断

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第4話 バロックの暗号ノート

バロックの葬儀の翌日。


アレクシスたちは

彼の遺品を整理していた。


場所は警察庁の保管室。


静かな部屋の中で

ガルム警部補が古い革の手帳を手に取る。


「……これは」


表紙には何も書かれていない。


だがページを開くと

奇妙な数字が並んでいた。


3-12

8-1

14-20


ミレイアが眉をひそめる。


「暗号?」


ガルム警部補が舌打ちする。


「バロックさんは。こんな遊びをする男じゃねえ」


アレクシスがページをめくる。


だが、どのページにも


同じような数字。

そして

短い単語。


意味不明の記号。


そこで呼ばれたのが


情報分析官

サラ・エヴァンス。


サラは端末を開き

ノートを見つめた。


「……なるほど」


静かに言う。


「これはアルファベット暗号です」


ミレイアが身を乗り出す。


「解ける?」


サラはキーボードを叩く。


「数字はアルファベットの順番」


A=1

B=2

C=3


つまり


3-12



C-L


いくつか解読すると

単語が浮かび上がった。


CL

HA

NT


アレクシスが言う。


「単語の断片か」


サラが頷く。


「恐らく

文章を分割して記録しています」


「もしノートが見つかっても、すぐには意味がわからないように」


元刑事バロックらしい慎重さだった。


さらにページをめくる。


そこで


全員の表情が変わった。


別のページ。


そこには


数字ではなく


事件名のリストが書かれていた。


10年前の事件。


・港湾密輸事件

・市議会汚職事件

・証拠紛失処理案件

・暴力団資金ルート摘発


その横には


すべて同じ印がついていた。


「監察処理」


ガルムが顔をしかめる。


「監察処理だと?」


ミレイアが聞く。


「どういう意味?」


ガルムが答える。


「警察内部で処理された事件だ」


「公表されないケースも多い」


アレクシスがバロックノートを見る。


そして


あることに気づく。


「この事件……」


「全部」


「証拠が途中で消えている」


サラが頷く。


「記録にも残っています」


「証拠保管ミス」


「データ破損」


「担当者の異動」


理由はすべて


事故処理の扱い


だが偶然にしては


多すぎた。


ガルム警部補が低く言う。


「つまり」


「警察内部で」


「違法な証拠処理が行われていた可能性がある」


ミレイアが息を飲む。


「そんな……」


バロックノートの最後。


そこには


バロックの手書きの言葉。


「同一手口」


「監察案件」


「10年継続」


アレクシスが呟く。


「これは……」


「警察内部の」


「組織的な証拠処理だ」


部屋の空気が重くなる。


もしこれが事実なら


問題は


一人の犯人ではない。


警察組織そのものが関わっている可能性がある。


サラが言う。


「まだあります」


ノートの最後のページ。


そこには

暗号ではなく

短い文章が残されていた。


「決断の時」


「証拠は揃った」


「これ以上は、見過ごせない」


そして


最後の一行。


「苦渋の決断」


ガルム警部補の拳が震える。


「バロックさんは……」


ゆっくり言う。


「警察をそのものを告発するつもりだったんだ」


沈黙。


その時


アレクシスが言う。


「だが」


「まだ決定的な証拠はない」


「このノートだけでは」


「誰が関わっているのか」


「わからない」


ミレイアが小さく言う。


「つまり」


「犯人は」


「まだ警察の中にいる」


ガルム警部補が窓の外を見る。


夜の警察庁。

巨大な建物。

無数の窓。


そのどこかに元刑事のバロックを殺した人物がいる。

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