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霧都ヴァル・ロンドリア探偵事件簿ー怪物に戸籍のある街で  作者: 虫松
地の血判

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第9話 集会場にて大演説

霧に包まれた夜。


ブラッドフォージ村の集会場には、すべての村人が集められていた。


重い木の扉が閉まり、外の世界は遮断される。

蝋燭の光が揺れ、壁に長い影を作る。


中央には アレクシス と ミレイア。

その横には 首都から来たガルム警部補 が腕を組んで立っていた。


外では、低く唸る獣の声。


魔獣犬 パブス が、霧の中を徘徊している。


村人たちは不安げにざわめいていた。


地主たち

セシリア・モーレン

イザベラ・クロフト

ルパート・ダイン

そして、長老 ガブリエル・ロウ。


全員の視線がアレクシスへ向く。


静寂。


やがてアレクシスが口を開いた。


「皆さん、今夜ここに集まっていただいた理由は一つです。」


「ブラッドフォージ村で起きた連続殺人。そして“地の血判”の呪い。」


「その真相をお話しするためです。」


村人たちの間に緊張が走る。


アレクシスはゆっくり歩き出した。


「地主のダミアンさんの殺人、最初、私は魔獣の仕業だと思いました。

現場は荒らされ、巨大な犬の足跡が残っていた。」


「しかし」


「壁に書かれた文字。」


『地の血判状を忘れるな』


アレクシスの声が鋭くなる。


「魔獣が文字を書けるでしょうか?」


ざわめき。


「答えはノーです。」


「つまり魔獣は“殺人の道具”にすぎない。」


ミレイアが静かに頷く。


アレクシスは続ける。


「魔獣犬パブス。

その動きは、ただの飼われていた犬ではない。」


「風向きを読む。匂いを追跡する。命令に従って標的だけを襲う。」


ガルム警部補が低く言った。


「軍用犬の動きだ。」


アレクシスは頷く。


「その通りです。」


「私はガルム警部補に依頼し、この村の過去を調べてもらいました。」


ガルムが一歩前に出る。


「ブラッドフォージ村には、昔、軍の犬訓練士が一人いた。」


空気が凍る。


アレクシスが視線をゆっくり動かす。


そして止まる。


ガブリエル・ロウの前で。


老人は微動だにしない。


アレクシスは静かに言う。


「さらにもう一つ。私はあなたの家を訪れた時、見ました。」


「玄関に置かれていた物。」


「犬笛」


「そして犬の首輪」


村人たちが息を呑む。


ガブリエルはゆっくり笑った。


「ふむ。」


「確かに私はパブスを軍用訓練した。」


ざわめきが広がる。


ガブリエルは肩をすくめた。


「だがな、若い探偵。」


「犬を訓練したからといって、殺人犯とは言えんだろう?」


静寂。


アレクシスは黙ってガルム警部補を見た。


「警部補。少しお借りします。」


ガルムはコートの内側から小さな金属の笛を取り出す。


「犬笛だ。調査のときに押収してきた。」


アレクシスはそれを受け取る。


「ありがとうございます。」


彼はゆっくりと扉へ歩く。

集会場の重い扉を開くと、霧が流れ込んできた。


冷たい夜気。


アレクシスは笛を口に当てる。


――ピィィィン……


人間にはほとんど聞こえない高い音が夜へ放たれる。


数秒の沈黙。


そして。


霧の奥で草が揺れた。


グルルルルッ


低い唸り。

巨大な黒い影が現れた。

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