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【推理〔文芸〕21位】霧都ヴァル・ロンドリア探偵事件簿ー怪物に戸籍のある街で  作者: 虫松
地の血判

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第1話 調印式の混乱

魔導都市ヴァル・ロンドリアの郊外、霧深く寒々しい村


ブラッドフォージ。


新設された浮遊軌道駅ブラッドフォージ中央が完成したことで、辺境の地は一夜にして黄金の投資地へと変貌した。


駅前再開発を担うのは、巨大魔導建設企業


アークライト・コンソーシアム。


計画は壮大だ。巨大商業塔、蒸気式高級ホテル、そして天空魔導邸宅群。

地価は瞬く間に三倍に跳ね上がり、辺境の村は活気と金の香りに包まれていた。


その調印式を取材していたのは、魔導新聞社の記者クラリッサ・ヴェイン。

青い魔導光の反射が式典のテントを照らし、霧にかすむ古い村の石畳と

不気味な古樹の影が、奇妙な対比を成していた。


「新駅《ブラッドフォージ中央》を中心に、大規模商業ビル、豪華ホテル、そしてマンション住宅の予定地が広がっています。このプロジェクトは、村に新たな息吹をもたらすでしょう」


クラリッサの明るい声も、会場の張り詰めた空気には飲まれていた。


地主たちは契約書に一枚ずつ署名していく。表情には期待と緊張が入り混じる。


だが


「儂は認めん!」


声を張り上げたのはブラッドフォージ最大の地主

アルドリック・グレイヴァー(68)だけは、魔法眼の奥に硬い

怒りを隠したまま、動かない。


突如、彼の怒声が霧に響く。

「息子が勝手に儂の土地をアークライトに売りやがった! この契約は無効じゃ!」


契約書が宙を舞い、テント内は瞬時に大混乱。


魔導警備員の腕に押さえられながらも、彼は最後まで怒りの魔力を振りまく。


クラリッサはカメラの前で言葉を詰まらせる。


「皆さま……なんと、大地主の一人が契約を認めないと主張、

会場は騒然としております!」


息子のダミアン・グレイヴァー(40)不動産事業家。


「父は認知魔法による呆け状態です。お騒がせして申し訳ありません」


だが、ざわめきの中、会場の片隅に異様な気配が漂っていた。


赤い魔布に包まれ、影のように揺れる人物。体を震わせ、声を潜めている。


「父は錯乱しているのです」

と頭を下げる。


「なんだと!勝手に売るなんてありえん!」


「契約書は有効だろ、父さん落ち着け!」


「うわっ、書類が飛んだ!気をつけろ!」


「おい、誰か警備員呼べ!」


「ダミアン君、大丈夫か…?」


怒号と悲鳴、驚きの声が入り乱れる中、アルドリック・グレイヴァー(68)

は裏口へと押し出される。警備員の腕に捕まりながらも、最後まで怒りを

振りまいた。


地主たちも互いに視線を交わし、ささやき合う。


「この村には古い掟がある」

「血判状のことを思い出すと…ぞっとする」

「まさか、こんな騒ぎの直後に…」


霧のような不安が会場を漂い、紙吹雪のように飛び交う契約書の破片の間で、

誰も気づかぬうちに、古い村の掟の影が忍び寄る。




だが翌日


アルドリック邸が何者かによって放火。


焼け跡から発見されたのは、

アルドリック・グレイヴァー(68)

一酸化炭素中毒で部屋で死亡。


現場には炭化した契約書の断片。そして血で押された署名。


“ダミアン”血の拇印。血判状だった。


この不審死を調べる為に依頼人は村長

エドワード・ヘイル(50)


この調査に乗り出すのは私立探偵アレクシス・グレイヴンと

秘書ミレイア・ルーンベル。


村人は「血判」という言葉に怯える。


新設された浮遊軌道駅ブラッドフォージ中央の歓声や怒号の裏で、

ブラッドフォージ村の歴史に秘められた

死の呪縛の影が静かに忍び寄っていた。


霧探偵事務所による

ヴァル・ロンドリア探偵事件簿

『地の血判』事件の幕が上がった。





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