第4話 焼却炉の中の真実
妻エレノアの証言。
「前夜、劇場の支配人から書状が届きました。“急ぎ、屋上で話がある”と」
「書状は?」
「燃やされていました。封蝋だけが灰に残っていました」
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「焼却炉へ向かおう」
その一言で、アレクシスは顔を上げた。
焼却炉へ
劇場裏手。
古い煉瓦造りの焼却炉。
灰はまだ温かい。
ガルム警部補が立ち会う。
「書状を燃やすにはここが最適だな」
アレクシスは灰を崩す。
封蝋の欠片。
焦げた上質紙の繊維。
「これは支配人用の紙質ではない」
ミレイアが拾い上げる。
「女性用の私室便箋に近い……」
そのとき。
裏口から運び込まれる大きな木枠。
黒布がかかっている。
「廃棄指示です」
大道具係アレンが言う。
「映画の宣伝用の看板です。誰かイタズラで穴を開けてしまって、
本当に困りますよ」
焼却炉へ押し込まれようとする瞬間。
アレクシスが手をかける。
「待て、燃やすな!」
アレクシスは看板を持ち上げる。
「これはどこに設置されていた」
アレンが視線を逸らす。
「屋上の外壁です。宣伝装飾で―」
「誰の指示だ」
沈黙。
ガルム警部補が一歩前へ出る。
アレンの額に汗が浮く。
「頼まれただけです」
「誰に」
「……に」
「チャールズ監督です。」
アレンの目が上を向く。
嘘をつくときの目は上を向く。
ミレイアの瞳が揺れる。
アレンは続ける。
「話は変わりますが。レオナルドがヴィクトリアにしたことは、皆、知っていました」
「何をしたんですか?」
「強姦です」
空気が凍る。
ガルムが眉をひそめる。
「証拠はあるのか」
「医者に通っていました。妊娠していると」
アレンの声が震える。
「レオナルドは認知しないと言った。堕ろせと」
焼却炉の火が大きく揺れた。
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映画の宣伝用の看板を調べる。
アレクシスは看板の縁をなぞる。
ふと、指先が止まる。
「……重いな」
宣伝用にしては厚みがある。
ガルムが眉をひそめる。
「合板一枚にしてはな」
アレクシスは裏面を叩く。
鈍い音。
空洞ではない。
ナイフで縁を剥がすと、
釘が不自然に二重に打たれている。
板が外れる。
中から
もう一枚の絵が現れた。
ミレイアが息を呑む。
それは劇場の外の“後景”を描いたもの。
屋上から見た、劇場の裏手。
https://kakuyomu.jp/users/mushimatsu/news/822139846367521722
だが構図が奇妙だ。
実際の景色とは微妙にずれている。
窓の位置。
手すりの高さ。
隣のビルの距離。
わずかに誇張されている。
「二重構造……」
ガルム警部補が低く言う。
「どういう意味だ」
アレクシスは答えない。
二枚目は隠されていた。
つまり、
表の夜景だけが設置されていたのではない。
「これはいつ描かれた」
アレンは青ざめる。
「知りません……私は表の絵しか」
「裏に板があることも知らなかったと?」
アレンは口をつぐむ。
嘘か、本当か。
まだ判断できない。




