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霧都ヴァル・ロンドリア探偵事件簿ー怪物に戸籍のある街で  作者: 虫松
首吊る部屋

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第6話 最終推理の大演説

霧都ヴァル・ロンドリア。

クロウリー邸・書斎。


容疑者全員が、書斎に集められていた。


重たい沈黙の中、霧が窓の外で揺れている。

円卓を囲む四人。


娘 リディア・クロウリー。

蒼白な顔で父の椅子を見つめている。


競合霊媒師 マルコム・レイヴンウッド。

杖を握り、余裕の笑みを崩さない。


老執事 ハロルド・ベインズ。

背筋を正し、主亡き部屋に立つ。


弟子 エヴァン・リード。

沈黙のまま、視線を伏せている。


壁の“怨”が薄く残る室内で、

アレクシス・グレイヴンは

ゆっくりと手袋を外した。


隣にミレイア・ルーンベル。

その背後に立つのはガルム警部補。


そして。

静かに前へ出る、アレクシス・グレイヴン。


霧都ヴァル・ロンドリア。

怪物に戸籍がある街で。

今宵、論理が怪異を裁く。


沈黙を切り裂くように、彼は言う。


「では密室を解体しよう」


「被害者はこの部屋で死んではいない」


ざわめき。


「殺害現場は地下霊室だ」


ガルム警部補が一歩前へ出る。


「床板の圧力歪み。約70kg。膝をついた痕。爪痕なし」


アレクシスが続ける。


「首吊りではなく、地面圧迫」


「二段階、絞殺痕の第一段階は地下で作られた」


視線が弟子へ向く。


「この縄」


アレクシスは掲げる。


「船乗り結び。左手主体の締め込み癖」


被害者は右利き。


「さらに、梁から霊気遮断布の繊維を採取した」


地下霊室にしか存在しない布。


「死体は運ばれた」


静まり返る空気。


「壁の“怨”」


「霊気増幅塗料。指で書いた」


指幅は細く、節が長い。


若い男の手。


「霊は塗料を使わない」

「霊はインクを補充しない」


地下霊室の引き出しから発見された

インク瓶。

遺書後半と一致。


「幽霊はアリバイを作らない」


アレクシスは最後の証拠を出す。

小さな銀製の霊力測定片。


「これは結界柱から採取した霊力残滓だ」


ガルム警部補が補足する。


「通常修行の三倍の干渉圧」


アレクシスは高弟を見据える。


「霊体と物体を同時に触媒化した痕跡」

「身体を半分ずらす感覚」

ミレイアが震える声で言う。


「地下から外へ抜ける力の痕です」


完全な実体では難しい。


だが。


半霊体質なら可能。


さらに。


「地下備品棚のロープ片」

「あなたの結び練習痕と完全一致」

「締め方向、力のかけ方、左手の癖」


逃げ場はない。


犯人は

霊術知識を持つ

密室構造を理解

被害者に近しい

9時前後に室内にいたように見せられる

物理的に絞殺可能な力を持つ

霊障を演出する意図がある

半霊体質ゆえ、霊気操作が可能

地下霊室を自由に使える

遺書に手を加えられる


アレクシスは一歩踏み出す。


「すべて一致するのは一人だけだ」


静寂。


そして。


「犯人はエヴァン、あなただ」


空気が凍る。


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