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【推理〔文芸〕21位】霧都ヴァル・ロンドリア探偵事件簿ー怪物に戸籍のある街で  作者: 虫松
影の蒸発

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第9話 崩れ落ちる時計台と最後の駒

中央時計台。

半分が崩れ落ちている。

巨大な歯車がむき出しになり


石の塔が裂けている。


炎。

煙。

瓦礫。


街の象徴だった時計台が崩れ続けている。


広場には群衆が集まっていた。


市民。

警察。

消防隊。

記者。


皆が燃える時計台を見上げている。


遠くで消防魔導車が唸る。


オズワルドが呟く。


「エリザ・クレイド……」


ミレイア


「白亜党の幹部……」


ガルム警部補が低く言う。


「怪人整理計画の中心人物だ」


一拍。


「だが」


彼は崩壊する塔を見る。


ミレイアが震える。


「怪人名簿……」


オズワルド


「今までの被害者怪人たちとエリザの自殺」


ガルム


「全員亡くなった。」


沈黙。


「白亜党が作ったリストだ」


その時。


群衆の後ろ。


白衣の男が歩いている。


ドクター・ハロルド。


彼は人混みの中を静かに進む。


笑っている。


満足そうに。


その前方。


黒いコート。


アレクシス。


二人は群衆の中ですれ違う。


止まる。


背中合わせ。


崩壊する時計台の前で。


沈黙。


ラストシーン

https://kakuyomu.jp/users/mushimatsu/news/2912051595366143459


ハロルドが言う。


「素晴らしい」


一拍。


「実験は」


「大成功です」


アレクシスの拳が震える。


ハロルド


「音響兵器・光兵器・魔導機関車」


「都市構造」


「軍事応用」


彼は笑う。


「完璧なデータが取れました」


沈黙。


アレクシス


「これらの事件で大勢の人が死んだ」


ハロルド


「ええ」


一拍。


「怪人も人間も」


「思想家も政治家も」


「大勢」


彼は肩をすくめる。


「科学の進歩のため、仕方ない尊い犠牲です。」


アレクシスの声が震える。


怒り。


「あなたはエリザを裏切った」


ハロルド


「政治は愚かです」


一拍。


「利用されるだけ」


その時。


崩壊音。


ゴゴゴゴゴ……ゴゴゴゴゴ……


時計台の上部が


崩れ落ちる。


ドォォォォォン!!


群衆が悲鳴を上げる。

炎が夜空を染める。


その光の中。


ハロルドが言う。


「駒が減った」


沈黙。


「エリザ・クレイド」

「♕クイーンの退場」


一拍。


「白亜党の幹部たち」


「✚ビショップと♖ルークの退場」


アレクシス


「……」


ハロルド


「盤面が整理された」


彼は言う。


「残るは」


沈黙。


アレクシスが言う。


「♚キングのみ」


ハロルド


「そう」


一拍。


アレクシス


「白亜党」

「怪人名簿」

「軍事兵器」

「政治資金」

「魔女裁判」


一拍。


「すべての中心」


彼は言う。


「白亜党の党首、バルク議員」


ハロルドが笑う。


「さすがだ」


遠く。


群衆の中。巨大な男が立っている。


■ バルク議員

巨体。

赤い顔。

軍服のようなスーツ。


白亜党の急進派リーダー。

炎に照らされて

静かに崩壊を見ている。


アレクシスが言う。


「白亜党のキング」


ハロルド


「ええ」


一拍。


「最後の駒♚キング」


ハロルドは楽しそうに言う。


「だから」


彼は言う。


「♚キングを倒さないとゲームは終わらない」


アレクシス


「……」


ハロルド


「最後の局面です」


沈黙。


ハロルドが歩き出す。


群衆の中へ。白衣が霧に溶ける。

去りながら言う。


「名探偵アレクシス」


「♚キングを倒せるか」


一拍。


「楽しみにしています」


アレクシスは燃える時計台を見る。

そして遠くのバルク議員を見る。


巨体の政治家はゆっくりと車へ乗り込む。


霧の街ヴァル・ロンドリアでゲームは最終局面へと進んだ。



『影の蒸発』事件 終幕



つづく

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