第6話 メデューサの寓話
霧都の屋上。
夜。
霧がゆっくり流れている。
古い建物の屋上。
そこに四人が立っていた。
アレクシス。ミレイア。
オズワルド。
そして。
白衣の男。
ドクター・ハロルド。
彼は柵にもたれ
楽しそうに霧都の街を見下ろしていた。
振り向く。
眼鏡の奥の瞳が光る。
「探偵アレクシス」
軽い声。
「やっと会えましたね」
アレクシスは静かに言う。
「ドクター・ハロルド」
「怪人殺人事件は」
「あなたですね」
ハロルドは肩をすくめる。
「殺人事件とは」
「犯罪者だ」
「私は科学者ですよ」
その時。
ミレイアが小さく震える。
彼女は一歩下がる。
「……この人」
「殺人を……」
「ゲームのように楽しんでる」
沈黙。
ハロルドが彼女を見る。
そして
ニヤリと笑う。
「おや」
「相変わらず優秀だ」
彼はゆっくり拍手する。
パチ…パチ…
「共感体質のお嬢さん」
「人の感情が読める」
「便利な能力だ」
ミレイアは顔をしかめる。
「あなたは人を殺してるのに」
ハロルドは笑う。
「殺してる?」
「いいえ」
一拍。
「実験です」
オズワルドが前に出る。
「絶対にお前を倒すかな。」
ハロルドは肩をすくめる。
「坊やが可愛いね」
オズワルドの眉が動く。
「……」
ハロルドは笑う。
「怒った?」
「若いね」
アレクシスが言う。
「用件は」
ハロルドは振り向く。
そして言う。
「この事件は神話です」
沈黙。
「探偵アレクシス」
「あなたは神話を読みますか?」
アレクシス
「時々」
ハロルド
「メデューサの話は?」
アレクシス
「石化の怪物メデューサを」
「ペルセウスが倒した」
ハロルドは言う。
「どうやって?」
沈黙。
ミレイアが呟く。
「鏡…」
アレクシス
「鏡の盾」
ハロルドが笑う。
「正解です」
彼は空を見上げる。
霧の空。
「メデューサは自分の力で倒された」
一拍。
「光は」
「反射する」
アレクシスの目が鋭くなる。
ハロルドは楽しそうに言う。
「いいヒントでしょう?」
オズワルド
「ヒント?」
ハロルド
「ええ」
彼は指を立てる。
「次の実験」
一拍。
「警察関係者です」
アレクシス
「誰だ」
ハロルド
「ガルム警部補」
沈黙。
ミレイアが息を呑む。
オズワルド
「ふざけるな」
ハロルドは笑う。
「怒るね」
ハロルドはアレクシスを見る。
「あなたが止められるなら」
「止めてみなさい」
アレクシス
「なぜ教える」
ハロルドは答える。
「簡単です」
一拍。
「ゲームだからです」
ミレイア
「ゲーム?」
ハロルド
「そう」
彼はアレクシスを指す。
「霧都最高の探偵」
「そして」
自分を指す。
「霧都最高の科学者が倒す。」
「面白いでしょう?」
オズワルド
「狂ってる」
ハロルドは笑う。
「褒め言葉ですね」
彼は背を向ける。
白衣が霧に溶ける。
去りながら言う。
「急いだ方がいい」
「裁きの光は」
一拍。
「もう準備されています」
ハロルドは霧の中へ消える。
屋上に沈黙が残る。
ミレイア
「アレクシス…」
アレクシスは呟く。
「鏡…」
オズワルド
「どういう意味です」
アレクシスは言う。
「メデューサ」
「鏡」
「反射」
一拍。
「光兵器の弱点だ」
彼は走り出す。
「急ぐぞ」
霧都の霧の向こうで
次の光が静かに準備されていた。




