第8話 走る列車で犯人の告白と大演説
魔導列車レム=エクスプレス。
深夜。
霧を切り裂きながら列車は走っている。
食堂車両。
長いテーブルの中央。
そこにチェス盤が置かれていた。
その前に立つ男。
アレクシス・グレイヴン。
周囲には全員が集められている。
① 鉄道会社社長
グラハム
② 魔導技師
イリーナ
③ 投資家
ダルゴ・マーシャル
④ 軍人
ヴォルフ少佐
⑤ アクションスター
ジャッキー・チョン
そして。
ガルム警部補。
秘書のミレイア・ルーンベル。
弟子のオズワルド・ハーゲン。
窓際。
白衣の男。
ドクター・ハロルド。
彼は腕を組み楽しそうに見ている。
食堂車は完全な沈黙に包まれていた。
やがて。
アレクシスが言う。
「この事件は」
「二人の人間によって引き起こされた」
ざわめき。
アレクシスはチェス盤のキングを指す。
♚キング
「被害者」
「魔導工学者」
「アルトゥール・レンブラント」
ミレイアが呟く。
「……どうして彼は殺されたのでしょうか?」
アレクシスは答える。
「理由は一つです」
一拍。
「レンブラントは」
「この計画を暴露しようとした」
ざわめき。
グラハム
「計画?」
アレクシスは盤を指す。
「この魔導列車」
「ただの鉄道ではない」
ヴォルフ少佐
「どういう意味だ」
アレクシス
「蒸気管」
「密閉車両」
「魔導石炭」
「気体拡散」
「観察環境」
彼は静かに言う。
「この列車は」
「巨大な軍事利用可能な実験装置です」
食堂車が騒然となる。
イリーナ
「そんな……」
アレクシス
「毒液を魔導石炭に付着」
「燃焼」
「蒸気化」
「蒸気管を通り」
「列車全体へ拡散」
ミレイア
「神経毒…」
アレクシス
「そうです」
「列車そのものが凶器」
ガルム
「つまり」
アレクシス
「毒ガス拡散装置」
沈黙。
アレクシスは続ける。
「レンブラントは」
「この計画に気づいた」
「そして」
「ある組織の関与を知った」
オズワルド
「組織?」
アレクシス
「白亜党 、怪人排除、人間至上主義の党だ。 」
その名前が出た瞬間。
空気が凍る。
グラハム
「まさか…」
アレクシス
「レンブラントは、白亜党の内部計画」
「この軍事列車を利用目的とした毒ガス実験」
「それを暴露しようとしていた」
ミレイア
「だから…」
アレクシス
「殺された」
彼はチェス盤のキングを倒す。
カツン。
「口封じです」
沈黙。
アレクシスは次の駒を指す。
♕クイーン
「資金」
「この計画の中心人物」
視線が一人に集まる。
アレクシスは言う。
「ダルゴ・マーシャル」
ざわめき。
ダルゴは笑う。
「証拠は?」
その瞬間。
ガルム警部補が前に出る。
「ある」
彼は机に小瓶を置く。
透明な液体。
ガルム
「あなたの鞄を調べた」
「鞄の底の粗目の二重縫い目の布の下から」
「この毒液の瓶が見つかった」
食堂車が騒然となる。
グラハム
「神経毒…!」
イリーナ
「そんな…」
ジャッキー
「犯人ジャン」
ダルゴが立ち上がる。
「ふざけるな!」
彼は怒鳴る。
「私はそんな物を鞄に隠して入れていない!」
「誰かが仕組んだんだ!」
ガルム
「言い訳は署で聞く」
ダルゴ
「陰謀だ!」
「嵌められた!」
彼の声が車両に響く。
しかし。
アレクシスは静かに言う。
「まだ一人いる」
沈黙。
アレクシスは
チェス盤の黒い駒を指す。
■黒幕のボーン
「設計者」
オズワルド
「誰なんです」
ガルム警部補
「その者の名前を言え!」
食堂車にいる全員の視線が
一斉にダルゴ・マーシャルへと向く。
ガルム警部補も
ミレイアもオズワルドも見ている。
窓際。
ドクター・ハロルドが静かに微笑んでいる。
アレクシス
「変更された設計者の名前を言ってください。」
「その人物の名前は・・・・」
ダルゴは、口を閉じた。
沈黙。
そして。
首を振る。
「黙秘します。」
全員が凍りつく。
ガルム警部補
「何?」
ダルゴ・マーシャル
「その人物は」
「ある政治家と密接に繋がっている」
「今ここで、その名を出せば」
「私は、この世の中から間違いなく抹消される。」
一拍。
「だが」
「この殺人で、私は無実だ。裁判の準備をする。」
「おい、この名刺にある弁護士へ、すぐ連絡をしてくれ。
弁護士以外とは私は、何もしゃべらない。黙秘権の権利を執行する。」
沈黙。
アレクシスは窓際を見る。
ドクター・ハロルド。
彼は、楽しそうに拍手していた。
パチ
パチ
「見事だ」
「名探偵アレクシス・グレイヴン」
「実に美しい推理だ」
「だが、あと一歩だったなぁ。惜しかった。残念だ。」
アレクシスは答えない。
魔導列車は走る。霧の中を。
ガルム警部補に補導され食堂車両を去っていく。
白亜党の幹部 ダルゴ・マーシャル
チェス盤。倒れたキング。
捕らえられたクイーン。
そして。
残された
■黒い黒幕のボーン
ドクター・ハロルド
列車の窓の外。
霧都の景色が流れていく。
ドクター・ハロルドは静かに笑った。
「名探偵さんゲームは、中盤の終わりだ。」
「残りの駒は2つ♚キングと♕クイーン」
「これから、いよいよ終盤戦だ。まだゲームは終わっていない」
魔導列車は霧都のヴァル・ロンドリア駅の
終着駅に向って闇の霧へと消えていった。
『魔導鉄道レム=エクスプレス殺人』事件 終幕
つづく




