第7話 チェス盤にて推理
魔導列車の食堂車両
机の上にはチェス盤。
アレクシス・グレイヴンは
静かに駒を並べていた。
ミレイア・ルーンベル。
オズワルド・ハーゲン。
ガルム警部補。
そして窓際には。
白衣の男。
ドクター・ハロルド。
彼は楽しそうに眺めている。
アレクシスは言う。
「この列車は」
一つ駒を置く。
♚「キング」
「レンブラント」
ミレイア
「被害者…」
次の駒。
♕「クイーン」
「ダルゴ」
オズワルド
「資金提供者」
♞「ナイト」
「イリーナ」
ガルム警部補
「助手か」
♖「ルーク」
「軍人 ヴォルフ少佐 」
✚「ビショップ」
「ジャッキー・チョン」
オズワルド
「なんでこの人駒なんですか」
アレクシス
「宣伝の象徴」
「盤上の駒にすぎない」
ジャッキーはその場にいない。
だが駒は置かれた。
最後に小さな駒。
□「ポーン」
「乗客」
ミレイア
「みんな…」
アレクシスは言う。
「この列車は」
「巨大なチェス盤です」
「全員が駒」
「動かされている」
沈黙。
しかし。
アレクシスは言う。
「だが」
「駒はもう一つある」
彼は
ナイトの後ろに
黒い駒を置く。
■黒。 無印。
オズワルド
「誰?」
アレクシス
「設計者」
「不明」
ハロルドが笑う。
「なるほど」
アレクシスは駒を動かす。
♚キング
レンブラント。
「彼は気づいた」
ミレイア
「何に?」
アレクシス
「恐ろしい秘密」
彼はチェス盤を指す。
「この列車」
「ただの鉄道ではない」
オズワルド
「え?」
アレクシス
「巨大な実験装置」
ガルム
「実験?」
アレクシス
「蒸気管」
「密閉車両」
「気体拡散」
「観察環境」
駒を動かす。
「毒は蒸気」
「機関室」
「魔導石炭」
彼は石炭の駒を置く。
「石炭に毒液を付着」
「燃焼」
「蒸気化」
ミレイア
「神経ガス…」
アレクシス
「蒸気に乗り」
「列車全体へ拡散」
ガルム
「つまり」
「列車そのものが凶器、そして軍事利用可能。」
アレクシス
「そうです」
ハロルドが拍手する。
「素晴らしい」
「実に美しい論理だ」
アレクシスは続ける。
♚キングを倒す。
「レンブラントは」
「この計画に気づいた」
ミレイア
「だから」
アレクシス
「暴露する予定だった」
オズワルド
「だから殺された」
アレクシス
「口封じです」
次に
♕クイーンを動かす。
「資金源」
「ダルゴ」
ガルム
「列車の資金提供者」
アレクシス
「彼の目的」
一拍。
「社会的実験」
ミレイア
「怖い…」
アレクシス
「列車で」
「毒ガス拡散を実験」
「戦争」
「支配」
「秩序」
オズワルド
「狂ってる」
ハロルドが笑う。
「だが」
「まだ一人いる」
アレクシスは頷く。
「ええ」
彼は
黒い駒を見る。
「設計者」
「内部構造を理解」
「蒸気管」
「機関室」
「魔導石炭」
「全て知っている」
駒を一つ動かす。
「この計画を」
「実行できる人物」
ガルム警部補
「そんな奴」
アレクシス
「一人しかいない」
沈黙。
ミレイアが震える。
オズワルドが息を呑む。
ハロルドは
微笑んでいる。
アレクシスは最後の駒を動かす。
♚キングに迫る。
そして言う。
「この事件は」
「三人によって引きおこされた」
レンブラント。
ダルゴ。
そして
「設計者」
沈黙。
アレクシスはゆっくり言う。
「謎は解けた」
彼は駒を倒す。
カツン。
「チェックメイトだ」
「ガルム警部補、関係者たちを食堂車両へ集めていただけますか」
しかし。
部屋の空気は凍りついていた。
列車の窓の外。霧がゆっくり流れていた。




