第3話 容疑者プロファイリング
霧都ヴァル・ロンドリア。
霊術師アルバート・クロウリー密室死亡事件。
アレクシス・グレイヴンは新たな人物関係図を机上に描き直す。
ミ
レイア・ルーンベルは感情の残滓を拾い、
ガルム警部補は物理的可能性を検討する。
① 娘:リディア・クロウリー(人間)
立場:被害者の一人娘
関係:研究に強く反対していた
■ 動機
父の危険な霊術実験への反発
唯一の遺産相続人
研究中止を巡り激しい口論あり
■ アリバイ
午後九時、友人宅にいたと主張
友人も証言
ただし移動時間に約20分の空白
ミレイアが感じた感情
強い恐怖
そして“罪悪感”
ミレイア
「自分を責めています……でも、殺意とは少し違う」
アレクシスの所見
恐怖は“父そのもの”へのものか、“事件”へのものか未確定。
② 弟子:エヴァン(半霊体質)
立場:被害者の高弟
特性:半霊体質(霊気干渉能力が高い)
■ 動機
研究成果を横取りされた可能性
師に霊術の不正を疑われていた
協会発表目前で対立
■ アリバイ
事件時刻、地下霊室で修行と主張
結界記録は作動履歴あり
だが単独での修行のため目撃者なし
ミレイアが感じた感情
怒り
嫉妬
抑圧された焦燥
ミレイア 「……この人、ずっと否定されてきた」
アレクシス 「霊気を操れるなら、“演出”は可能だ」
※ただし物理的絞殺の力が十分かは未検証。
③ 競合霊媒師:マルコム・レイヴンウッド
立場:同業の著名霊媒師
関係:公然と対立
■ 動機
顧客争奪戦
協会内地位争い
過去に公開討論で敗北
■ アリバイ
当夜は貴族主催の舞踏会に出席
証言多数
9時前後も目撃されている
ミレイアが感じた感情
虚勢
強い焦燥
アレクシス
「焦ってはいるが、今夜の犯行機会は薄い」
※遠隔霊術の可能性は理論上あるが、密室内物理痕との整合性が弱い。
④ 使用人:老執事ハロルド
立場:三十年仕えた執事
関係:最近、解雇通告を受けた
■ 動機
長年の忠誠の否定
老後の不安
主人の人格変化への失望
■ アリバイ
午後九時、厨房にて食器整理
下働きが目撃証言
だが5分程度の不在時間あり
ミレイアが感じた感情
深い諦念
そして“守ろうとする意志”
ミレイア
「この人……誰かを庇っている感じがします」
アレクシス
「忠誠は時に、真実を歪める」
■ 現時点での整理
■ 物理条件
絞殺後に吊るされた可能性
二段階痕
足掻き痕なし
密室は内側から施錠
内部からの一時結界解除痕あり
■ 精神的要素
強い霊気は“増幅された可能性”
壁の“怨”は演出の疑い
遺書は筆圧変化あり
アレクシスの暫定分析
「犯人は」
彼は静かに言う。
「霊術を理解している」
「だが怪異に責任を押し付けたい人物だ」
そして付け加える。
「半霊体質というだけで犯人にはならない」
ガルム警部補が低く唸る。
「物理的殺害と霊的演出。両方が可能な人物か」
ミレイアは目を閉じる。
「この家には……まだ“本当の恐怖”が残っています」
犯人はまだ判明していない。
だが構図は整った。
次に崩れるのは、アリバイか。
感情か。
それとも密室そのものか。




