第8話:1000億へのカウントダウンと、甘い支配
世界を「売る」準備
2008年が目前に迫っていた。 世間はまだ「好景気の終わり」に気づいていない。北京オリンピックを控え、浮足立つ世界。だが、俺の頭の中にあるチャートは、ここから垂直落下する絶壁を映し出していた。
「蓮……本当にいいのね? 300億近い全資産を、ドル円のショートとCDS(信用違意スワップ)に突っ込むなんて」
冴子の声が震えていた。3億円だった資金は、この数年で300億という化け物じみた金額にまで膨れ上がっていた。これをすべて「世界の崩壊」に賭けるというのだ。
「いいんだ。冴子、お前は俺を信じろ。……嵐が過ぎ去った後、俺たちは今の10倍の力を持って立っている」
俺は震える冴子の肩を抱き寄せ、その耳たぶを甘く噛んだ。 「不安か? なら、今夜は俺がたっぷり安心させてやるよ」
ヒロインたちの「役割」
俺の野望は、もはや一人の手に負える規模ではなくなっていた。 7人のヒロインたちは、それぞれの分野で俺の「帝国」を支える柱となっていた。
美月と凛: 暴落で二進も三進もいかなくなった不動産や企業を買い叩くための「受け皿」を準備。
ちひろ: 高速取引(HFT)アルゴリズムを完成させ、コンマ一秒の差で利益をむしり取るシステムを構築。
サクラ: 世界が不安に包まれる中、人々の心を癒やす「平和の象徴」として世界ツアーを敢行(その裏で、蓮の資産移動の隠れ蓑となる)。
リナ: 持ち前の社交性で、没落する予定のセレブたちから情報を引き出す「諜報員」。
真理恵: 激化する神経戦で摩耗する俺の、精神と肉体の絶対的守護者。
「蓮、ココア淹れたよ。……あんまり無理しないでね?」
深夜、執務室に現れた結衣が、2026年には見られなかったような、慈愛に満ちた笑みを向ける。 「ああ。……結衣、世界がひっくり返ったら、一番大きな島をプレゼントするよ。そこで二人で、誰にも邪魔されずに暮らそう」
崩壊の始まり
2008年9月。 ついに「その日」がやってきた。米証券大手リーマン・ブラザーズの経営破綻。 世界中の株価が、紙屑のように値を下げていく。
「きたわ……。蓮、あなたの予言通り、市場がパニックに陥ってる!」
モニターの前に集まったヒロインたち。 赤い下落バーが、滝のように画面を埋め尽くしていく。 周囲が資産を失い、絶望の叫びを上げる中、俺の口座残高だけが、まるで見間違えのような速度で増えていった。
100億……300億……500億……。
「止まらない……! 蓮、これ、どこまで行くの!?」
リナが俺の腕にしがみつき、興奮で息を荒くする。 俺は落ち着いて、最後の注文ボタンをクリックした。
「1000億だ。……そこで一度、全てを利確する」
王の凱旋と、7人の夜
一週間後。 世界がまだ混乱の中にあった頃、俺たちはプライベートジェットで南国の隠れ家へと飛んでいた。 1000億円という、個人では使い切れないほどの富を手にした王の休暇だ。
広大なプールサイド。 「さて……。みんな、よくやってくれた。今日は、金の話は抜きだ」
俺の言葉を合図に、ヒロインたちがそれぞれの「想い」を持って俺に詰め寄る。
「蓮様、まずは私の投資戦略の報告を……いえ、まずはこのお酒を飲んでくださいまし」 「ずるいよ美月さん! 蓮、今日は私と一緒に泳ぐって約束したじゃん!」 「先生も……たまには、甘えてもいいかしら?」
7人の美女に囲まれ、彼女たちの柔らかな肌と、勝利の酒に酔いしれる。 2026年、俺をゴミのように扱った世界。 今、その世界は俺の足元で跪き、俺は愛する女たちを全てその翼の下に収めていた。
「(金も、女も、地位も……。もう、誰にも渡さない)」
俺は横たわるサクラの唇を奪いながら、次なる標的――「2010年代のビットコイン革命」へと、静かに狙いを定めた。




