第4話:1000万の使い道と、檻の中の小鳥
暴落の中で笑う者
ライブドアショックは日本経済を震撼させた。昨日までの「時代の寵児」が地に堕ち、阿鼻叫喚の渦に巻かれる投資家たち。 だが、その暴落の濁流こそが、俺にとっては黄金の川だった。
「ふぅ……」
放課後の誰もいない教室。俺はノートPCを閉じ、深く息を吐いた。 口座残高は1,200万円。 高校生の身分で手にしていい金額ではないが、これでもまだ、世界を買い叩くための「端金」に過ぎない。
「蓮様、お呼びでしょうか?」
背後から声をかけてきたのは美月だった。 以前の刺々しさは消え、その瞳には崇拝に近い熱が宿っている。彼女は自分の資産を守ってくれた俺に、完全に「心」を預けていた。
「美月、頼んでいた調査はどうなった?」 「ええ。あなたが言っていた『芸能事務所・ライジングスター』の件……かなり悪質な契約を結んでいるようです。特に、新人のサクラという子に関しては」
輝けないアイドルの卵
美月の案内で向かったのは、都心から少し外れた古びたダンススタジオだった。 そこには、クラスでは目立たない存在のサクラが、独りボロボロになるまでステップを踏んでいた。
彼女は、2026年の未来では「悲劇のヒロイン」として語り継がれるはずだった少女だ。 圧倒的な才能がありながら、悪徳事務所に縛られ、スキャンダルを捏造されて若くして引退する。
「サクラ」 「えっ……佐藤君? なんでここに……」
汗を拭い、驚きで目を丸くするサクラ。彼女の腕には、レッスンでついたものとは思えない、不自然な痣があった。
「その契約、俺が買い取ってやる。……お前は、もっと広いステージで歌うべきだ」 「何言ってるの……? 違約金だけで1,000万はかかるって言われたの。私、一生この事務所から逃げられない……っ」
サクラが絶望に瞳を濡らしたその時、俺はカバンから**「1,000万円の札束」**を無造作に取り出し、スタジオの床に置いた。
「これ、全部やる。……今日からお前のオーナーは、あの事務所じゃない。俺だ」
静まり返るスタジオ。サクラは震える手でその札束を見つめ、それから俺の顔を、まるで救世主を見るような目で見つめ返した。
ヒロインたちの火花
サクラを保護し、美月の手配したホテルへ送り届けたその夜。 俺の家の前では、不機嫌を隠そうともしない結衣が待ち構えていた。
「蓮! 今日も美月さんと一緒にいたでしょ! 浮気……じゃないけど、怪しいよ!」 「落ち着けよ結衣。仕事の話をしてただけだ」 「仕事って、高校生がするようなことじゃないでしょ!……あ、そのネックレス、リナっていう子が付けてるのと同じブランドじゃない?」
鋭い。女の勘というやつか。 そこへ追い打ちをかけるように、派手なエンジン音を響かせて一台のタクシーが止まった。降りてきたのは、ミニスカートをなびかせたリナだ。
「蓮くーん! ドル円、言った通り爆上げじゃん! アタシ、お礼に抱きつきに来ちゃった!」
「えっ、誰この派手な子!?」と驚愕する結衣。 「あら、蓮。こんなところで立ち話?」と、いつの間にか現れた美月。
2005年の星空の下、俺を巡って3人のヒロインが火花を散らす。 だが、俺は焦らない。懐には、彼女たち全員を一生養って余りある「未来の富」が控えているのだから。
「みんな、落ち着け。……まとめて俺が面倒見てやるから」
俺の「支配」という名の愛が、少しずつ、確実に彼女たちを浸食し始めていた。




