23.簒奪者の支配を許すな!(4)
その後の調査の結果、『先王の隠し子』を名乗っていた男の仕事が、やっぱり狩人だったことが判明した。
王家の血筋どころか、王宮で働いたことのある家系ですらなかったわ……。
狩人……。
白雪姫の継母から、白雪姫の殺害を依頼された、あの狩人だよね……?
ここであの狩人の登場かあ……、って思ったよね。
たしかに関わり合いになりたくないタイプっぽかったけど、反乱軍を率いて出てくるとは思わなかったわ。
狩人……、なにやってるのよ……。
さらに調べてみたところ、どうやら高位貴族の一人が狩人に「先王の隠し子のふりをしたら、王宮で贅沢三昧させてやる」と持ちかけたようだった。
狩人は森の奥に住んでいて、家族も友人もいないらしい。『先王の隠し子』にするのに、いろいろ都合が良かったみたいね。
狩人は、森の中にある自宅で高位貴族と密談をした後、すぐに山間の砦へと旅立った。
高位貴族の方はというと、『自分は先王の隠し子役を調達した。この陰謀における最大の功労者だ!』なんて仲間内で大きな顔をしながら、ずっと館に閉じこもっていたらしい。
狩人に話を持ちかけた本人が、わたくしの目の前で、赦免を求めて泣きながら語ってくれたわ。
臆病で情けない高位貴族と、なかなか機動力に優れた狩人のせいで、狩人の素性がまったくわからなかったのね……。
こういう、いろいろなことが妙に噛みあっちゃうことってあるわよね……。
先王の血を騙り、偽りの王を玉座に座らせようとした高位貴族たちは、拷問道具をいろいろ見せてあげただけで、仲間の高位貴族から、傭兵の募集場所から、武器の手配まで、すべてを気持ちよく語ってくれた。
わたくしは想像していたよりもずっと楽に、この陰謀に加担した者たち全員を拘束できた。
高位貴族たちには、国王はあくまでも『自国の人間』で、国王がやってくれない仕事は『他国から嫁いできた王妃』にさせたい、という希望があったみたい。
高位貴族たちの計画では、反乱が成功して狩人が王位に就いたら、わたくしを狩人の妃に据えるつもりだったんですって。
そして、自分たちの気に入らない政策は、狩人に命じて国王の権限でやめさせるっていう……。
わたくしにだって感情があるんですもの、そんなに都合よくいくわけないじゃないの……。
わたくしは高位貴族たちの処分を筆頭公爵に任せることにした。
筆頭公爵は、このまま順調にいけば孫が王位に就く。
さらに、筆頭公爵家の子供は男子ばかりで、筆頭公爵夫妻はブランカに「お義父さま、お義母さま」と遠慮がちに呼ばれると、「かわいい!」と大騒ぎしている。
特に筆頭公爵夫人は、ブランカと一緒にお買い物に行きたいらしく、今回の件でブランカとのお買い物が、事態が落ち着くまで延期となったために激怒していた。
筆頭公爵は愛妻家で子煩悩。さらに、政務にも長けている。
筆頭公爵に任せておけば、高位貴族たちは二度と謀反などできないようにされるはずよ。
事件の終幕の数日後、ルドルフは先代宮に軟禁されたまま、その報せを耳にしたという。
「……愚かな。私の子供はブランカ一人だけだ。私にはウィルマだけだ。ウィルマの他に、愛した女などいない……」
ルドルフは医師団に向かって、ブレることなく語ったという。
まあ、ルドルフならそう言うわよね……。
隠し子なんて、絶対にいないと思ったもの。
ここまでくると、ルドルフは本当に病気なのか、ただ真実の愛に生きているのか、ちょっとわからなくなってくるわね。
わたくしは以前ボロボロのルドルフが訪ねてきた後、先代宮でのルドルフの暮らしが、先王に相応しいものになるよう正した。
ルドルフを虐げていた使用人は解雇し、わたくしに忠誠を誓ってくれている王宮の使用人たちの中から、何人かを先代宮に行かせたのよ。
ルドルフはまともな暮らしができるようになると、落ち着いてウィルマを想いながら過ごしているらしかった。
先代宮の使用人たちは、ルドルフが自分で選んで連れて行った者たちだったのだけど……。
あの使用人たちは、反乱を起こした高位貴族たちに買収されていたようなのよね。
高位貴族たちは、先代宮の使用人たちを使ってルドルフを虐げてみたり、あの手この手でルドルフを奮起させようとしたらしいわ。
それで、ルドルフはわたくしに泣きついたり、ブランカの婚約式に乱入したりしたようね。
だけど、高位貴族たちが期待した結果にはならなかった。
だから、高位貴族たちは次の手段として、反乱軍を仕立てたのですって。
わたくしを殺したら政務をしてくれる者がいなくなってしまうから、いろいろと余計な苦労をしたそうよ。
呆れてものも言えないわ……。




