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亡き前妻だけを愛する王よ、わたくしはもう、あなたを必要としない~白雪姫の継母に転生したので、鏡と義娘と生きていきます!~  作者: 赤林檎


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23.簒奪者の支配を許すな!(2)

 調査の結果、その陰謀は、わたくしの想像をはるかに超える広がりを見せていた。


 王都から少し離れた人の寄り付かない谷では、金属を叩く鈍い音が響きわたっていたという。


 その隠された鍛冶場では、昼夜を問わず反乱のための武器が作られ続けていた。


 決して表には出られない仕事だ。


 そこで働く男たちは、誰もが寡黙であるらしい。



 地方から密かに集められた傭兵たちは、王都の北にある山間の砦にこもり、反乱軍として日夜訓練に励んでいた。粗野な兵士たちの掛け声は山を震わせ、やがて来る蜂起の日を連想させたという。



「女王陛下にお知らせいたします! 山間の砦を出た反乱軍が、いよいよ王都に侵入いたします!」


 伝令兵の報せが、わたくしの執務室に飛び込んできた。


 反乱軍は彼らの計画通りに、真夏の太陽が照りつける王都を襲おうとしていた。


 大聖堂の鐘が王都に鳴り響き、民たちに危険を知らせている。


 わたくしは反乱軍を迎え撃つ場所を、王都の中央広場と決めていた。


 この陰謀を企てた高位貴族と反乱軍が、中央広場で合流することになっているという情報を掴んだからだ。


 反乱軍が王都に到達する予定の日とその前後、余裕を持たせて五日の間、わたくしは中央広場への民の立ち入りを禁じていた。


『中央広場の石畳が傷んでいるので、敷き直す作業をする』という通達を出したのだ。


 わたくしは以前から何度も街道や橋の修理をしたいと口にしていた。中央広場の石畳についても、敷き直すことを提案したことがある。


 だから、反乱を企てた高位貴族たちは、この理由をあっさり信じた。


 立ち入り禁止と同時に、中央広場の近くに住んでいる民たちを、密かに城内に避難させた。


 本当は王都の民に外出禁止令を出したかったけれど、そこまでしては、反乱を企てた高位貴族たちに怪しまれてしまう。



 これでなんとか民が怪我をしたりしないでくれると良いのだけれど……。



 反乱軍は、傭兵たちの寄せ集めだ。


 山間の砦で訓練を積んできたとはいえ、しっかり統制のとれた軍隊などではない。


 傭兵ということは、金を求めて集まってきて、金のために戦う兵士だ。彼らが金を欲する理由は様々で、『一つの目標に向かって、みんなで力を合わせて戦う』といった考えはない。わたくしが腕の良い斥候に調べさせたからたしかだ。


 あの傭兵たちが、もしも『同じ部族の出身で連携が取れる』とかだったら、別の戦い方を考えなくてはならなかったわ。




 わたくしは深紅の乗馬服姿で王宮の北の尖塔に上り、熱風に吹かれながら、防壁に囲まれた王都の北を見た。


 反乱軍は王都の北門を突破し、大通りに入り込んでいる。


 剣や槍を掲げ、勇ましく突き進んでいるのだろう、反乱軍の兵士たち。


 反乱軍の中心よりやや後ろ、この国の国旗が掲げられいるあたりに、白馬に乗っているらしい『ルドルフの隠し子』の男がいるはずだ。



 男はあのまま、まっすぐ中央広場まで行くだろう。



 そこで王族の血を継ぐ者を名乗り、民衆の心を揺さぶろうとするつもりだ。


 わたくしは、すでに彼らの行動予定を全て把握していた。


「そろそろね……」


 わたくしはつぶやくと、北の尖塔を下り、王宮の正門に行った。


 そこではすでに騎士団長が待っていて、わたくしのために白馬が用意されていた。


 わたくしは白馬に乗り、騎士たちに守られながら王宮を出た。


「見よ、王都の民たちよ! 真なる王家の血統、ここにあり! 他国から嫁いできた簒奪者を、我らの玉座から引きずり下ろすのだ!」


『ルドルフの隠し子』の声が聞こえてきた。


 わたくしたちは南から大通りを通って、中央広場に向かっていた。


 わたくしは手綱を握る手に力を込めた。


 この国は、テレージアが必死で政務をこなして、ここまで盛り返したのよ。


 テレージアが政務に忙殺されている間、反乱を起こした高位貴族たちは、なにをしていたというの?


 わたくしの記憶にある限り、高位貴族たちはなんの助けにもなってくれていなかったわ。


 わたくしはテレージアが受けた王女教育の記憶を元に、ブランカに女王教育をしている。


 いずれブランカは、テレージアと同じくらい政務をこなせるようになるだろう。


 わたくしはこの国を、そんなブランカに託すと決めているのよ。


 この国の未来を、身勝手な者どもに踏みにじらせてなるものですか!

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